先生、教えて。

オトバタケ

文字の大きさ
6 / 66

しおりを挟む
 直人が寝室として使っている部屋は、夫人と並んで寝ていたというキングサイズのベッドが置いてあるだけのシンプルな部屋だった。

「お風呂を入れてくるから、本を見て待っててくれな」
「はいっ!」

 へッドボードに何冊か本が置いてあったのでそう告げると、直人はベッドに腰掛けて絵本を読み始めた。
 浴室には部屋から直接行けるような作りになっていたので、脱衣所でタオルやドライヤーの位置などを確認し、見付けた掃除道具を持って浴室に入る。
 一階の浴室よりも広めのそこは、デカい男が二人で入っても狭さは感じなさそうだ。
 百九十センチ近い直人でも足を伸ばして悠々と浸かれるだろう広さの浴槽を洗い、湯を溜めていく。

 一旦部屋に戻り、夢中で絵本を読んでいる直人に微笑みつつ、直人の服が入っていると聞いた一番右のクローゼットを開けて、何が入っているのかざっと確認した後パジャマを取り出す。
 肌触りのよい光沢のある黒色の生地で出来たパジャマを手に取り、そろそろ湯が溜まっているだろう浴室に戻ろうとするが、下着を取り出すのを忘れていたことに気付いて探す。
 綺麗に折り畳まれて並んでいる黒いボクサーパンツを、変な妄想を始めてしまわないうちに素早く掴み、浴室に戻る。
 丁度いいくらいに溜まった湯を止めて白い入浴剤を入れ、ロンTを肘の辺りまで捲り上げる。
 さっきシャワーを浴びた時に寝間着用の服に着替えたので、下は膝丈のジャージだから濡れはしないだろう。

「ナオくん、風呂の準備が出来たからこっちに来な」
「はいっ!」

 寝室に続く扉を開けて直人と呼ぶと、すぐに絵本から顔を上げて近付いてきた。

「じゃあ、服を脱ぐ練習をしてみようか」
「はみがきは?」
「え……あぁ、そうだな。いつもはどうしてるんだ?」
「お母さまのおひざに寝て、やってもらうの」

 幼児式の歯磨きをしているのか、と洗面台に置かれた直人のものだろう青い歯ブラシを見る。
 虫歯になったら困るので仕上げ磨きは必要だろうが、出来るところまでやらせるべきだな。

「よし、今日は先生も一緒に磨くから一人でやってみよう」
「うん、がんばるっ!」

 急いで寝室に戻り、鞄から歯ブラシを取り出して直人の元に戻る。

「こうやってやるんだぞ」

 見本を見せてやると、真剣な目付きでそれを見ていた直人が、恐る恐る歯ブラシを口に入れた。
 これでいい?と問うように首を傾げるので、いいぞと告げるように頷く。
 直人の様子を見ながら手早く磨いて口を濯ぎ、床に正座して直人に膝に頭を乗せるように言う。
 いつも母親にやってもらっているので躊躇うことなく頭を乗せてきた直人に、鼓動が早くなってしまう。
 これは虫歯を作らない為の大切な医療行為なんだ、と騒ぐ心臓に言い聞かせ、直人の口内を覗く。
 口内には、綺麗な白い歯が並んでいる。
 夫人が丁寧に磨いていたという証拠だ。
 母親として惜しみない愛を注いでいるという証を見せつけられ、胸の奥底に追いやった傷がズキリと痛んだ。

「よし、上手に磨けてる、合格だ。最後に先生がナオくんがやつけたバイ菌を追い出してやるな」

 初めての歯磨きは大丈夫だったのかと不安そうに俺を見上げている直人に微笑みかけ、仕上げ磨きをしていく。

「よし、綺麗になったぞ。さぁ口を濯ごう」

 起き上がった直人が口を濯ぐのを見守り、今日はどこまで自分でやらせるべきか考える。
 歯磨きをやらせたし、服を脱ぐ練習だけにしておこうか。

「歯磨きも自分で出来たし、今日は服を脱ぐ練習もしてみような」
「はいっ!」

 歯磨きのことを褒められたのが相当嬉しいのか、元気な返事と共にシャツを脱ごうと裾を持ちあげた直人。
 現れた、綺麗に筋肉の付いた引き締まった腹に目を奪われて固まってしまったが、ボタンも開けずに無理矢理シャツを脱ごうと足掻いている直人にはっとなり、慌てて手を離すように言う。

「まずはボタンを外さないといけないんだ」

 折角脱ごうとしたのに止められて不服そうな直人の白いシャツのボタンを、上から順に外していく。
 そっと目線を上げると、俺の手元をじっと見つめている直人の男らしい喉仏が目に入って、慌てて視線を逸らす。

「やってごらん」

 残した下の二つのボタンを指差すと、長い指を絡ませてモタモタしながらも外すことが出来た。

「うん、上手だ。シャツは脱げるか?」
「こう?」

 体をくねらせながらも、なんとか自分だけの力でシャツを脱いだ直人。
 現れた、ギリシャ彫刻のような逞しくて美しい体に、ゴクリと喉が鳴ってしまう。

「先生、ぬげたよっ!」

 嬉しそうに破顔する直人を見て、暴れ出しそうだった熱がすぅっと冷えていく。

「あぁ、凄く上手だ。ズボンのボタンも外せるか?」
「できるっ!」

 ぎこちない手つきで時間を掛けながらも、自分の力だけでボタンを外した直人は、そのままファスナーを下ろしにかかる。
 なかなか下げることが出来ずにガチャガチャやっていたので、そろそろ声を掛けるべく口を開こうとすると、シャーと勢いよく下がった。

「ぬぐのもやれるよ」

 ちゃんと見てて、と言うように俺の目を見つめ、下着と一緒にズボンを下げた直人。
 下までは上手く下ろせたが、足首に絡まってなかなか取れず、地団駄を踏むように脱ごうとしている。
 俺を惑わす直人の立派な男の象徴が、その動きに合わせてユラユラと揺れている。
 ソレから目を逸らして踞り、足首に絡まったズボンを持ってやる。

「先生が押さえてるから、こっちの足から抜いてみな」

 右足をツンツンと指すと、スルッと足は抜け、同じように左足も抜けた。

「先生、できたっ!」
「うん、上出来だ。明日からも頑張って練習しような」

 色気が漂う男らしい体を見ないように、無垢な天使の笑顔を見つめて褒める。
 脱いだ服を洗濯カゴに入れ、視線を上の方に保ちながら直人を引き連れて浴室に入っていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

処理中です...