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どこかのせかい

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「ん・・・?」


突然の明るさに眩しさを感じながら瞳を開く。

「え!?」

そこは森。どこまでいっても木々が生い茂り文明の「ぶ」の字もないような大自然。

(なにこれ?夢?)

そう思いながら後ろを振り返ると、あかりがさっきまでの自分と同じように、倒れていた。

「あかり!?起きて!大丈夫!?」
体を揺すりながら声をかけると、

「ん~・・・?のどか?」
と、目を覚ました。辺りを見渡すと、

「・・・えっ!?なにこれ・・・夢?」

先程ののどかと同じ反応である。


夢にしては妙にリアルで、肌で感じる不安感。なんだか、変。とにかく変なのだ。



「これ夢・・・?にしては妙にリアルでなんか変?」

「そうね。いま多分同じこと感じてたわ。」



(やっぱりあかりも同じこと感じてたんだ・・・!
一体なんなの?)


服装はそのまま。カバンもスマホも、今日ゲーセンで取ったぬいぐるみも持ってる。

なのに感じる絶対的な不安。

なにより、さっきまで夜だったのに、昼間のような明るさなのだ。

数秒だっただろうか、数分だっただろうか-----


呆然とした2人の耳に、突如届いた音。

「キィーーーーーッ!」


「えっなになになに!?」
「なんの音!?」

耳をつんざくような高くてキツイ音。しかもだんだん大きくなってくる・・・


(近づいてる!?)


音のする方角へ顔を向けたそのとき。

顔が大きいコウモリのような見た目の生き物がものすごいスピードで近づいてきた。

(ぶつかる!?)

2人とも決死の思いで顔を伏せた。すると-----


キィン!


金属のぶつかる音が響いた。


「大丈夫?」


低く心地のいい声で顔をあげた。
そこには、この世の人とは思えない美しさの男性が立っていた。

まるで漫画かアニメから飛び出してきたような見た目だ。すらりと伸びた長身に、王子様の正装のような服装。腰には先程の音の元だろうか、豪華な剣が装着されている。
金髪に青い目、白い肌。なにより美形。
私たちとはまるで違う。


「えっと・・・はい」
あかりは、そう答えるので精一杯。
のどかは、声も出せない。
(なになに?コスプレ?)

すると、王子様(?)が
「こんな危険な場所で女性2人で一体なにをしているんだ?」
と、少し怒った顔で言った。


「えっ?えっ?えっとぉ・・・」
あかりは必死に考えた。

(そもそもこれは夢なの?っていうか私たち公園のブランコに座っただけだし、ってかいま昼間!?さっきまで夜だったのに絶対おかしいよ・・・なにこれ・・・でもとにかく私たちがしてたのはオタクな話なわけだけれどもこの素敵な王子様にオタバレなんてしたくないし・・・!よし!)

「女子トーク?みたいな・・・」

隣にいるあかりが(は!?)という目で見る。(必死に考えてそれ!?)っていう目で。

「は・・・?」
王子様の目が点。そりゃそうだ。


(ぎゃ~やっちゃった~。)
そう思いながら数秒気まずい時間が流れる。



すると王子様(?)が、

「とにかく安全なところへ。近くにアラテスマの小屋がある。そこに仲間の騎士もいるから、休むといい」

と言った。
(はへ?あらてすま??騎士?)
脳内は「?」でいっぱい。

表情を見るにあかりも同じ気持ちのようだ。

王子様が歩き始めたので、慌てて私たちも追いかける。

(なんだろう、さっきから感じる不安感といい、現実離れした出来事に王子様・・・まさか異世界?いやいや現実でそんなわけ・・・)


「そういえばまだ名を聞いていなかったな。私はアラテスマ王室所属第三帰隊長、ディーンだ。」

(名前まで王子様!)
(アニメの世界に迷い込んじゃったのかしら、それにしても幸せだわ~)
なんてのん気なことを考える。

「貴方たちの名は?」

(はっ・・・もし仮に本当に異世界に来ちゃったんだとして、本当のことを言っていいのか・・・?)

数秒考えたあと、
「私は加倉い「わたしは!サクーラ・ノーカと申します!」

-----被った。(あかり~察して!本名言わない方がいい気がするの!異世界だったら真名とか言わないの定番じゃん!?)

「私はカーク・アーティといいます」

(よかった!伝わった!さすがわたしの親友オタ友~!)


「そうか。ノーカにアーティだな。何故2人はアンティスの森に?」

(やばい!どうしよう)
のどか改めノーカが考えていると、

「私たち、気づいたらここにいたんです。ここがどこだかもよく分かっていなくて・・・。先程はどうもありがとうございました。」

あかり改めアーティが上手く言ってくれた。

「気づいたら?・・・」

ディーンが難しい顔をして何やら考え込んでいる。

(やばい、まずかったかな?)

そう思いながら黙っていると、


「何はともあれ小屋で詳しく聞こう。そこには先程話した仲間の騎士、ハルスもいるからな。」



(もしかして・・・ここは本当に異世界なのかもしれない。)


そう信じ始めた2人だった。
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