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第1章:オワリノハジマリ — チュートリアル開始
第7話「通信断絶と深まる混乱」
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その日は、ビル地下の電気が急に落ちた。完全に真っ暗というわけではなく、非常灯がほのかに点灯しているが、だいぶ心細い明るさだ。
「ついに、このビルもメイン電源が落ちたか……」
俺は天井を仰ぐ。昨日までは辛うじて照明が機能していたが、それも止まった。おそらく電力を供給していた関連施設が中ボス級モンスターに破壊されたのだろう。
「ヒロキ、スマホは?」
「完全に圏外だ。Wi-Fiもないし、キャリアの電波も入らない。充電もそろそろ切れる」
「ラジオは?」
「ノイズばっかり。たまに断片的に人の声っぽいのが入るけど、何を言ってるか分からない」
もはや外の状況を知る手段がほとんどない。ビルの上階に行けば周囲を見渡せるが、遠くまで見えるわけでもないし、何よりモンスターに襲われるリスクがある。
地下にこもっている俺たちには、閉塞感が漂うばかりだ。
「こういうときこそ、同じようにビルを拠点にしているグループがあれば、連携すべきじゃないか?」
橘が提案する。確かに、個人や小人数で生き残るのは限界がある。物資の融通や、モンスター討伐の協力などをすれば、相乗効果が得られるはずだ。
ただ、それには人間同士の信頼関係が欠かせない。裏切りや強盗を警戒しないといけないから、そう簡単に連携できないのが実情だ。
「でも、このまま孤立してても先がないよ。街全体が停電したら、夜はモンスターの天下だ。俺たちだけで防衛できるか分からない。仲間が増えたほうが守りやすいし、交代で見張りもできる」
浅海さんがうつむきながら言う。確かにそれは一理ある。
「よし、じゃあ明日、周辺のビルを重点的に回ってみるか。似たように拠点を作ってる人がいるかもしれない。もし安全そうなら交流して情報交換だ」
俺は仲間たちを見回した。ヒロキやリナも同意の表情だ。柿沼や橘も不安はあるが頷いてくれている。
話し合いの末、翌日は**“近隣探索デー”**にしようと決まった。日中のうちにビル周辺を歩いて回り、生存者と接触する。モンスターが出れば討伐して経験値を稼ぐ。拠点に戻るのは日没前。夜間の移動は自殺行為だから絶対避ける。
これが俺たちなりの戦略だった。
しかし、その夜。地上の方から大きな爆発音めいた衝撃が伝わってきた。まるで花火が破裂するような轟音に、皆は飛び起きる。真っ暗な地下に響く振動。何事かと身構えたが、すぐにモンスターの唸り声が近づいてきて、ビルの入り口をガリガリとひっかくような音がした。
「来たか……!」
俺やヒロキは武器を取り、入口付近を警戒する。トラップとして金属パイプやバリケードを組んでいたが、どこまで持つか分からない。リナや橘、浅海さんも慌てて身構え、柿沼は血の気が引いた顔で震えている。
しかし、どれだけ待っても入口から突入してくる気配はなかった。どうやらモンスターも大きな爆発音に驚き、ただ暴れて通り過ぎていっただけなのかもしれない。
外を覗きに行くのはあまりに危険なので、俺たちはそのまま朝まで息をひそめた。
翌朝、地上を確認すると、建物の角が焦げたようになっていた。どうやらどこかでガス漏れか何かが爆発したのかもしれない。車両のタンクが爆発した可能性もある。火事こそ広がっていないが、ここ数日で周囲の建物が激しく荒れているのを感じる。
「まるで戦場跡みたいだな……」
ヒロキが呟く。昨日まで普通に立っていた看板が倒れ、街灯が折れ、人影はまばら。今さら警察や消防が動いているとも思えない。
こうして、通信が断絶した状態で迎えた朝。俺たちは予定通り、近隣のビルを探索してみることにする。もし他の生存者グループと出会えればいいが……。
「ついに、このビルもメイン電源が落ちたか……」
俺は天井を仰ぐ。昨日までは辛うじて照明が機能していたが、それも止まった。おそらく電力を供給していた関連施設が中ボス級モンスターに破壊されたのだろう。
「ヒロキ、スマホは?」
「完全に圏外だ。Wi-Fiもないし、キャリアの電波も入らない。充電もそろそろ切れる」
「ラジオは?」
「ノイズばっかり。たまに断片的に人の声っぽいのが入るけど、何を言ってるか分からない」
もはや外の状況を知る手段がほとんどない。ビルの上階に行けば周囲を見渡せるが、遠くまで見えるわけでもないし、何よりモンスターに襲われるリスクがある。
地下にこもっている俺たちには、閉塞感が漂うばかりだ。
「こういうときこそ、同じようにビルを拠点にしているグループがあれば、連携すべきじゃないか?」
橘が提案する。確かに、個人や小人数で生き残るのは限界がある。物資の融通や、モンスター討伐の協力などをすれば、相乗効果が得られるはずだ。
ただ、それには人間同士の信頼関係が欠かせない。裏切りや強盗を警戒しないといけないから、そう簡単に連携できないのが実情だ。
「でも、このまま孤立してても先がないよ。街全体が停電したら、夜はモンスターの天下だ。俺たちだけで防衛できるか分からない。仲間が増えたほうが守りやすいし、交代で見張りもできる」
浅海さんがうつむきながら言う。確かにそれは一理ある。
「よし、じゃあ明日、周辺のビルを重点的に回ってみるか。似たように拠点を作ってる人がいるかもしれない。もし安全そうなら交流して情報交換だ」
俺は仲間たちを見回した。ヒロキやリナも同意の表情だ。柿沼や橘も不安はあるが頷いてくれている。
話し合いの末、翌日は**“近隣探索デー”**にしようと決まった。日中のうちにビル周辺を歩いて回り、生存者と接触する。モンスターが出れば討伐して経験値を稼ぐ。拠点に戻るのは日没前。夜間の移動は自殺行為だから絶対避ける。
これが俺たちなりの戦略だった。
しかし、その夜。地上の方から大きな爆発音めいた衝撃が伝わってきた。まるで花火が破裂するような轟音に、皆は飛び起きる。真っ暗な地下に響く振動。何事かと身構えたが、すぐにモンスターの唸り声が近づいてきて、ビルの入り口をガリガリとひっかくような音がした。
「来たか……!」
俺やヒロキは武器を取り、入口付近を警戒する。トラップとして金属パイプやバリケードを組んでいたが、どこまで持つか分からない。リナや橘、浅海さんも慌てて身構え、柿沼は血の気が引いた顔で震えている。
しかし、どれだけ待っても入口から突入してくる気配はなかった。どうやらモンスターも大きな爆発音に驚き、ただ暴れて通り過ぎていっただけなのかもしれない。
外を覗きに行くのはあまりに危険なので、俺たちはそのまま朝まで息をひそめた。
翌朝、地上を確認すると、建物の角が焦げたようになっていた。どうやらどこかでガス漏れか何かが爆発したのかもしれない。車両のタンクが爆発した可能性もある。火事こそ広がっていないが、ここ数日で周囲の建物が激しく荒れているのを感じる。
「まるで戦場跡みたいだな……」
ヒロキが呟く。昨日まで普通に立っていた看板が倒れ、街灯が折れ、人影はまばら。今さら警察や消防が動いているとも思えない。
こうして、通信が断絶した状態で迎えた朝。俺たちは予定通り、近隣のビルを探索してみることにする。もし他の生存者グループと出会えればいいが……。
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