ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる

林和差(はやしかずさ)

文字の大きさ
1 / 20
第一章

第一話

しおりを挟む
「隣の通りに、噂の帽子屋がいるらしいわよ!」



賑わう街角に、そんな声が聞こえた。







うだるように暑い日だった。



私は、公園のベンチに座って、英単語を覚えていたとき、ふと隣を見ると、そこには黒いシルクハットが置いてあった。


私は、忘れ物だと気づき、急いで周りを見渡してみると、それらしき立派なスーツを着た、若い男を発見した。




「あの…!」




私は走ってその人物を追いかけたが、人物は優雅に歩いているだけなのに、なぜか全然追いつけない。




「足はや!!足の長さの違いなの!???」




私は自分で言っていて、ちょっと悲しくなった。


それでもなんとか追いかけて走っていると、見慣れない通りにやってきてしまった。




(学校の近くも、まだまだ知らないところがあるのね)




そんなことを考えていると、その人物が何かの前で立ち止まっているのが見えた。




「遊園地だ!!!」




なんと路地裏に大きな西洋風の遊園地があった。


私は新たな発見に、うれしくて思わず飛び跳ねた。


そんなことをしている間に、帽子の持ち主らしき男性は遊園地の中に入っていってしまった。




「あわわ!!」




私は入口の前まで追いかけてみた。


入場料を払えるほど手持ちはないと思うのだが…



そして、入り口前に行ったときに、券売機らしき機械を見てみた。




「あれ?券売機ちゃう」




お金を入れるところがあるのだが、そこには『両替機』とだけ文字が書いてあった。




「両替機?」




私は試しに100円をいれてみた。


すると、大きい銅貨と小さい銅貨が出てきた。




「????」




異国のお金見たいのが出てきた。


もしかしたら、よくある、パーク内で使えるお金なのかもしれない。


私は楽しくなって、手持ちのお金を全部パーク内の通貨?に変えてしまった。



そして、入り口らしき、木の柵でできた手押しドアを開けると、あっさり中に入れてしまった。





「あれ?お金…乗り物ごとにお金とられるシステムかな?」




そう思って、顔を上げると、目の前にあのスーツの男性が立っていて、目が合った。



金色の瞳をしていた。




「あ!!!あの、この帽子…」




「それは今日から君のものさ」




そう言ってその男性は身をひるがえして建物の中へと消えていった。




私はその姿を呆然と見ていることしかできなかった。


なぜか、不思議な魔法で姿を消したようにも思えて、私は追いつけるとは思えなかったのだ。





「なんだったんだろう…」



私は結局、帽子を持ったままうろうろするしかできなくなってしまった。


試しにかぶったことは内緒だが。




「乗り物乗って帰ろっと」




くれるといわれたので、きっといらないのだろうと思いなおし、私は遊園地を満喫することにした。



「乗り物どこかな~」



パーク内は見事な西洋風の家々だった。


お花屋さんもあるし、パン屋さんもある。


ちょっと地味な色味の洋服に身を包み、まるで本当にこのセットの中の住人みたいだった。



しかし、メリーゴーランドやジェットコースターのような乗り物はついに見つからなかった。




「…あれ…?私迷ってない…?」




同じような街並みのため、私はすっかり迷ってしまった。


なんとか先ほどの入り口を見つけようとしたけど、辺りはすっかり暗くなってしまった。



パーク内の地図を見たかったが、それもどこにも見つからず、仕方なく人に聞いてみることにした。




「すみません…」




店じまいを始めていた、同じくらいの年齢のお花屋さんの女の子に声をかけてみた。




「…ごめんなさい、もうお店閉めるの…」




少女は困ったような顔をしていたので、私は少し躊躇したけど、勇気を出して聞いてみた。




「あの、出入り口、どこですか…!?」




人見知りの私にはそれだけ聞くことしかできなかった。




「出入口?…ああ、町の入り口ね。迷ったの?」




少女に聞き返され、私はブンブン頭を縦に振って肯定した。




「じゃあ、一緒に行ってあげるよ。案内する!」




その少女は、家の人たちに事情を説明し、私とともに夜の闇の中へと歩き出した。




「名前は?私、レイニー」




「レイニーさん!私、紫杏(しあん)って言います」




「シアンちゃん?敬語じゃなくていいよ~」




そう言ってレイニーちゃんは笑った。




レイニーちゃんは、私の一個年下の16歳で、お花屋さんとして、もう6年も働いているらしい。




(すごいなぁ…私はバイト一つやったことないのに…)




そんなことを考えながら歩いていると、15分くらいで、町の入り口に着いた。




「え…」




私は町の入り口を見て、愕然とした。



そこには、立派な門があり、その外にはレンガの道が続いている。そして、周りは一面何もない原っぱだったのだ。




「え?ここじゃないの?」




「う、うん。もっと、木の柵があって…」




なんとか説明しようとするけど、レイニーちゃんには全く覚えがないらしかった。




「シアンちゃんは、どこから来たの?」




レイニーちゃんはね、きっと何の気なしに聞いた言葉だったと思う。でも、私にとって、絶望的な響きのある言葉であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ひみつの姫君  ~男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!~

らな
恋愛
男爵令嬢のリアはアルノー王国の貴族の子女が通う王立学院の1年生だ。 高位貴族しか入れない生徒会に、なぜかくじ引きで役員になることになってしまい、慌てふためいた。今年の生徒会にはアルノーの第2王子クリスだけではなく、大国リンドブルムの第2王子ジークフェルドまで在籍しているのだ。 冷徹な公爵令息のルーファスと、リアと同じくくじ引きで選ばれた優しい子爵令息のヘンドリックの5人の生徒会メンバーで繰り広げる学園ラブコメ開演! リアには本人の知らない大きな秘密があります。 リアを取り巻く男性陣のやり取りや友情も楽しんでいただけたら嬉しいです。

処理中です...