ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる

林和差(はやしかずさ)

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第一章

第三話

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「え?ヨークさんが来てる?」








帽子を渡してから数日後。





私は町を歩き回って、あの私の世界への入り口を探し回っていた。




しかし、まったく見つからず、疲れて広場の噴水の前に座っていると、レイニーちゃんに声をかけられた。






「うん、ヨークさんが、奥さんと来てるよ。

なんか、帽子のお礼が改めてしたいんだって」




「そんなぁ…いいのに」





私は少し困ってしまった。




帽子、どこで手に入れたか聞かれたら…と思うと。




そして、十中八九「この帽子は、どこで手に入れたのかね?」と開口一番ヨークさんに聞かれた。




「あ、えっと…はい…」





ひきつった笑いでごまかそうとするも、ヨークさんと奥さんは、私の答えをひたすら待っていた。



でも、ここで答えないと、へんな疑いをもたれてしまうかもしれない…と心配になった。




例えば、盗んだもの…とか。




それだけは嫌だ。





ここを追い出されたら、本当に行くところがなくなっちゃう。





「…私が…作りました」




と、言うしかなかった。




「えーー!すごい!!シアン!!」





レイニーちゃんはキラキラとした目をこちらに向ける。ごめんなさいごめんなさい。





「そうだったのね、すごいわ…」





ヨークさんの奥さんのミアティさんは、緑の装飾の帽子を取り出して、私と見比べて感心している。





「もう、本当に!!これは私の理想なの!!すごいわ、若いのに!!!」





それから皆から大絶賛され、私は生きた心地がしなかった。





「じゃあさ、今度私にも帽子作ってくれる?」





キラキラとした目のまま、レイニーちゃんは私の顔を覗き込んできた。





「え…」





答えに一瞬困ったものの、そんな目の少女の問いにNOとは言えず、うなずくしかなかった。





つらい…





こうして、私はいつの間にか帽子職人と認識されることになった。









はぁぁ~~~





ヨーク夫妻が帰った後、私は盛大にため息をついた。




できもしないことを言ってしまった罪悪感と、今後頼まれたらどうしたらいいかという不安。




私は部屋で、一人机に突っ伏した。





「あ!あの帽子…!」





そう、もとはといえば、あのシルクハットに謎の帽子が入っていたことが原因なのだ。





私はシルクハットを手に取ってみた。





あの不審な重みはない。




あんなことがあった後なので、シルクハットからなんか変なオーラがあふれてくる気がした。





「…おーい、シアン!いる~?」





扉を叩く音に、私は急いでシルクハットをベッドの下に隠し、身づくろいした。





「なんでしょう、レイニーちゃん」





慌てた声になってしまったが、なんとか返事ができた。




その声を聴いて、レイニーちゃんは嬉々として入ってきた。





「ねえ、シアン!お願いがあるの!」





あ~嫌な予感がするぅぅぅぅ





「なんでしょう」





「今度ね、パン屋のパニーと初デートがあって…」





「は、初デート!!!???」





なんとレイニーちゃん!!彼氏持ちだったのか!!





「その時に…!!かぶる帽子が…欲しいの!あの、あの…ヨークさんみたいにいっぱいお金渡せないけど…」





と言って、レイニーちゃんは先ほどからガチャガチャ音を立てていた正体、貯金箱を目の前に突き出した。





「え、そんな…」





受け取れない上、作れないよ…





言いたいけど言い出せず、言葉を飲み込んでいると、レイニーちゃんは、私にスケッチブックを渡してきた。





「こういう帽子!!」





そこに描かれていたのは、ひまわりの装飾がついた茶色のかわいい麦わら帽子だった。





「わー上手。レイニーちゃんに似合いそうだねぇ」





思わずそんな感想が漏れる。





「えへへ…ありがとう。難しかったー」





そう言って頭をかくレイニーちゃん。





なんとかできるものなら、なんとかしたいけども…




私には作れないし…




頭を悩ませていると、ふとあの気配を感じた。



あの気配。金眼の男の気配だ。





私は思わず、シルクハットのあるベッドの下を見た。





「え?どうしたの?」





「あ、なんでもない…よ…」





そう言ってごまかした。




そしてスケッチブックだけを置いて、レイニーちゃんは部屋を出て行った。





私はしばらくその場に座ったまま、スケッチブックを眺めていた。





「もしも。もしも、シルクハット。アンタに帽子を作る能力があるのなら…作ってほしい」





ベッドの下に向かって、私は言った。




そして、手を伸ばす。






(重い…)





シルクハットは、また不思議な重みがあった。



そして、不思議なことに、少しだけ大きくなった気がする。




「なんか…ある…」




私は勇気を出して、シルクハットの中に手を入れた。




この感触…



麦わら帽子だ!!!




私は思いっきり引っ張り出すと、そこにはスケッチブックそっくりの麦わら帽子が現れた。





こっわ!!!!





「えええ!!もうできたの??すごくない?何週間もかかると思ったよ!」




その後、数日待ってレイニーちゃんに帽子を渡した。




「そしてそして!!!すっごい私の絵とそっくり!!!」




帽子を手に踊りだすレイニーちゃん。




「うん…あのさ、お金、返すよ…」




「や!!やだ!だめだよ!!お金は銀貨もらっちゃったし、本当にこれだけは受け取ってほしいのぉぉぉ!!」




「なんか、ばちがあたりそうで…」




「なんで??」




貯金箱を押し付けあったが、結局渡されてしまった。



今度なんかおごればいいか…
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