ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる

林和差(はやしかずさ)

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第一章

第十話

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「シアンさん、ぜひ貴族街にお店を開いてください」





帽子を出した後、ラドクリフ様に言われたが、私は断固として拒否した。



最初は、断っていいのかわからなかったけど、どうやら私の気持ちを優先してくれるようだったので、固くお断りした。




「…私は、この街で生きていく自信がありません」



本当、その一言に尽きる。



私のような一般市民が能天気に生きていける街ではないと思ったのだ。




「ですが、ここのほうがずっと治安はいいですよ。あなたが強盗に襲われる可能性だってあります」



その点を非常に心配してくださっていた。



「貴女がいなくなったら、その唯一無二の魔法も消えてしまう。それだけは断固阻止せなばなりません」




そう言って、彼は私に一人の護衛をつけてくれた。






「…ということなのです…」



洗いざらいセカに説明すると、セカは安心したようにうなずいた。



「魔法庁の方に、味方がいたのはよかったな。俺も任務に集中できるし、あとはユラ殿に任せよう」



ユラさんは、セカに敬礼らしきポーズを取った。



このユラさんが私の新しい護衛である。



私と同じくらいの年齢だろうか、大きな緑の瞳に黒髪。



「あの、ユラ、様?」



「様付けはおやめください。私はあなたの護衛兼助手です」



「でも、身分というやつが、私のが下なんですよね。それって…」



「かまいません。これも仕事ですので」



熱のない目で私に言った。


あ~嫌なんだろうなぁ。




「じゃあ、ユラさんとお呼びしますね。私のことは呼び捨て…だとちょっとダメなのか。さん付けでお願いします」



「わかりました。お心遣いありがとうございます」




固いな…。



セカと大違いだ。



ちょっと息が詰まりそうだ。



「じゃあ、セカ!!金眼の情報待ってますね!私も調べられることは調べます!」



「わかった。がんばれ」



そう言って、私に背中を向けた。



え?それだけ?


私はちょっとさびしくなった。



でもさ、仕方ないよね。セカも仕事で私の世話してくれてたわけだし。




「ばいばい…」



私は見えないように背中に向かって手を振った。



すると、急にセカは立ち止まり、こちらに歩いてきた。



そして、私と目線を合わせるようにかがみ、



「…一人では、無理しないように。」



とだけ言って、頭をポンとされた。



暖かい感触が頭に広がって、顔まで熱くなった。









「…失礼承知でお聞きしますが」



セカが去った後、ユラさんが聞いてきた。



「セカ様とはどのようなご関係なのですか?」



「え?ご関係?」




唐突な言葉に、私は首を捻った。




「私は、友達になれたと思いたいけどなー」



としか言えなかった。



向こうはお仕事で世話してくれてただけだもんなァ。




「なぜ?」



私は逆に聞き返す。



「…とても。仲がよさそうにみえたので。失礼しました」



「いえいえ。なんかすみません…」



うーん。わからないんだけどさ。セカって、ユラさんよりも身分が高い感じなのかな。そして、…身分違いの友情ってあんまりない感じなのかも。


それで聞いたのかな?と思いました。





そして次の日。



私はユラさんのノックの音で目を覚ました。




「シアンさん?…もう8時を回っておりますが」



「はーーい、ただいま…」



「寝坊ですか?」



「いえ、いつもより早い時間に起きました…」



「え…」



ユラさんには家の鍵を渡して、自由に入ってもらっている。



そして、ユラさん、10時出勤じゃないんだなぁ…



油断した…と思いつつ、パジャマからは着替えて部屋から出た。





「あ、ユラさん。朝ごはんは食べましたか?」



「ええ、まあ。はい…」



「はーい」



「???」



「了解でーす」




まだ寝ぼけている私は、妙なテンションで返事をしつつ、再び何もついてないパンをかじった。




「それだけでは、栄養偏りませんか…あ、失礼しました。余計なことを」



「ああ、お昼に一度に摂取するから大丈夫です」



そして、昼は四番通りのハンバーガーを食べるのだ。そういう習慣なのだ。ちなみに夜は食べない。


米をしばらく食べてないのだが、この世界には、あるのかねぇ。




だらしない生活もろ出しでした。



丁寧な生活ってなに?おいしいの?





「ちゃんと、体調管理をするのも私の仕事なので。もし台所を借りれるなら、家から料理長を呼びますが」



「えええ…一回ならいいけど、毎日は嫌だなぁ」



「せめて夜もしっかり食べてください」




このままじゃ、家に他人が来る!毎日!!



「りょ、料理、します…」



もしかして、ユラさんは、セカ以上に世話焼きなのか?



「あと、もう一時間早起きしましょう」



「えー…」



「しましょう。」



圧がすごい。



「助手って…そういう、助手なの…?」









ユラさんが帰った後、私はドッと疲れた。



形から入るのが好きな私は、たしかにお料理道具は一式そろえてある。



でもさ!レシピとかないじゃない!どうしよう。



そして、ユラさんは8時にくるから7時半に起きよう。


そう思って、ぐっすりと眠りについた。





コンコンコン




ノックの音がして、私は飛び起きた。寝すぎたーー!!と思って時計を見ると、7時20分。



ユラさん……。




「寝てたでしょ」



「起きてます!!!」



嘘だけど。



急いで準備をすると、8時半には準備が終わった。




「あ、ユラさん。私スーパーに行きたいです」



「スーパー??とは?」




おっと、この世界にはないのか。スーパーマーケッツ。



「えっと、ごはん作るのに、食料を買いたいです」



「ああ、市場ですね。わかりました。私はすぐにも出られますよ」




こうして二人で買い物に出かけた。







「あ!!シアン!」



「レイニーちゃん!!と…もしかして、パニーさんですか?」



「そうだよー。よろしくシアンちゃん」



たしか、パニーさんはパン屋さんのせがれさんですよね。茶髪にそばかすが素敵です。



偶然の再会に喜び合っていると、レイニーちゃんはこっそり私に耳打ちしてきた。



「もしかして、デート中?」



「デートではないですー。残念。そういうレイニーちゃんはデートでしょ」



同じこそこそ声で聞き返すと、レイニーちゃんはなんだかおもしろくなってきたのか、笑いながら、



「そうだよー」



と言った。すごくお似合いだった。



「てっきり彼氏さんだと思っちゃった」



と言われる。いや、どう見ても私とユラさんじゃ釣り合わないと思うのだが。



「彼氏ではありませんが、近い将来婚姻する関係です」



笑い飛ばそうとした瞬間、周りが固まるような発言をするユラさん。



「え?…おもしろい冗談です…よね?」



「冗談ではありません。事実です」



事実…事実…婚姻??



「えええええ!!!やだ、シアン照れて隠してたでしょ!!言ってよーおめでとー!!」



レイニーちゃんがいろいろ言っていたが、私の頭の中には全く入ってこなかった。
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