ありがとうのお話

古式亜矢

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ありがとうのお話

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 ひなちゃんが指差したさきには、大きな桜の木がありました。
 ちらほらとつぼみが花をさかせて、ピンク色に色づいています。

 この桜の木は、みらいちゃんにとってだいじなものでした。

「あぁ、ずっと昔にみた桜の花…ひなちゃんとおなじ色だったんだね」
 みらいちゃんはひなちゃんをぎゅっとだきしめました。

「ひなちゃん、ほんとうに…ほんとうにありがとう」
「みらいちゃんがもう一度色が見えたなら、
きっとまた楽しい気持ちになれるって思っていたの。だから、よかったよ」
 ひなちゃんもみらいちゃんをぎゅっとだきしめました。



「ひなちゃん、”ありがとう”って…
おひさまとおなじあったかいオレンジ色なんだね…
心のなかが、オレンジ色してる」



 みらいちゃんはひなちゃんからそっとはなれて、むねに手をあてています。
 白黒だった世界が急にたくさんの色をもち、
 みらいちゃんの心をみたしていきます。

「みらいちゃん、これからたくさん色をみようね。
お外にも、お家にも、おしゃべりにも、いっぱいいっぱい色があるんだよ!」
 
 みらいちゃんは水色の涙をながしながら、
 ひなちゃんにうん、とやくそくをしました。





 それから、みらいちゃんはひなちゃんが毎日もってきてくれる
 お花や草の色を楽しみました。

 ときどきひなちゃんのおともだちや、
 森のどうぶつたちもみらいちゃんのお家にくるようになりました。

 おしゃべりしていると、たくさんの色がみえました。
 たまに赤や黄色になったりするけれど
 最後にはいつも、あったかいオレンジ色がみえました。




 
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