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Historia Ⅳ
人狼(32)
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百地りりまたの名を千守呂美による狼人間殺人事件から三日が過ぎた。
大騒ぎしていた渋谷の街は何もないかのように普段の喧騒と賑やかさに包まれていた。
表参道も何の変哲もない普段と変わりなく多くの人が行き交い平穏なひと時を過ごしている。
この前まで百地が暴れて町中パニックになったのに今は嘘みたいに大騒ぎしたという面影は一切ない。渋谷と表参道は普段と変わりない日常を送っている。
新聞やテレビのニュースには狼人間が人を襲った事や暴れ回っていた事については一切取り上げておらず誰も魔法界の存在に気づいていない。
これも魔法省の闇祓いと忘却術士の手早い対応のおかげだ。しかし、その中でも忘却呪文をかけそびれた非魔法族はほんのわずかいてその人達はSNSで呟いたりしていがそれはただの噂に過ぎないという流れに。もちろん、事件当時の写真や動画もSNSにあげたりしていたがそれは画像生成やCG等で作った偽物だということで丸く治まった。
今回は多くの非魔法族を忘却呪文で狼人間の存在を忘れさせただの噂程度で終わったが、少しでも対応が遅かったらどうなっていた事か。
今回の出来事は、一人の恋愛詐欺師が同性していた一人の男を求め裏切られたことで発生した事件だ。彼女の彼への想いが強くなりやがて愛憎に変わり自ら狼人間になった愚かな出来事だった。
練馬銀座商店街はハロウィンのシーズンが終わって元の普通の商店街に戻っていた。
イベントが終わっても商店街の賑やかさは変わっていない。
レコードから流れるジャズ音楽が事務所の部屋を彩らせシンプルなカップから芳醇な湯気が揺らいでいる。
心が落ち着く大人なメロディがコーヒーの旨味を引き立たせ味わいを楽しませてくれる。
コートをソファの上に置いて香り豊かなコーヒーを楽しむ阿津瀬の姿が映る。
好青年っぽく清涼感ある髪型をしていてルックスが良いのでスーツ姿がよく似合っている。
「それじゃあ。オオカミ捜索は終了したんだ」
ユータはテーブルの上に置いてあったクッキーを加えて話していた。
オオカミ捜索とは、尾上と永嶺の首筋に検出されたDNAがオオカミのものだと分かり捜査をしていたがどこにもオオカミは出てこず手掛かりがなかった為、今回の一例はお蔵入りとなったのだ。
狼人間の仕業だなんて言っても誰も信じてはくれないしこれはこれでよかったと思っている。
ユータとシンは事務所のソファに寛ぎながら阿津瀬の話を耳に傾けていた。
「今回の事件はいろいろありましたね。遺体からオオカミのDNAが出て恋愛トラブル、相見さんの不法侵入、恋愛詐欺師に狼人間の暴走。こんなに波乱な展開を体験するのは三年ぶりです」
「相見さんといえば、彼女はどうなったの?」
尾上の自宅に二度目の不法侵入していたところを見つけ追い詰めて以来、相見の件は警察に任せていたのでその後の事についてシンは訊ねた。
「彼女なら住居侵入罪を含め窃盗罪、脅迫罪を犯したことで15年以下の懲役になりました。尾上さんのご自宅に侵入し合鍵や永嶺さんのプライベート用スマホを盗みそのうえ永嶺さんを脅したりしましたからね。ほんと、恋愛トラブルって怖いですよね」
「恋愛は人間が持つ欲望の一つに過ぎないからな。愛してやまないぐらいの愛情が強ければ逆に強い憎しみを持ってしまう。永嶺さんは尾上葵という婚約者がいたから相見さんも百地も愛が憎しみに変わってしまった。彼を手に入れたいという欲心が今回の複雑な事件が起きたんだろう」
確かに今回の事件はとても複雑で迷宮入り確実な事件だった。
オオカミ絡みで事件を捜査していたら相見が不法侵入を犯しそのうえ永嶺を脅迫して無理矢理に婚約させ百地が恋愛詐欺師の千守呂美で「W.E.T.P」という強化された狼人間に変身できる薬を飲んで尾上と永嶺を殺害し表参道や渋谷を混乱させた。
百地の暴動で被害を受けた死傷者は出たが忘却呪文で記憶が改ざんしてハロウィンイベントで起きた事故として処理された。
「それにしても。あの大爆発からよく無事でいられましたね。自分、てっきりやられたのかとヒヤヒヤしましたよ」
阿津瀬が話したのは三日前、都内広場で起きた百地の大爆発のことだ。
自爆といってもいい大規模な爆発で広場一帯が爆風と爆煙と炎が広まって大変だったのだ。空気と地面が揺れてトビンソンが張ったサークルが破壊されてあまりの強力な勢いに死ぬんじゃないかと思うぐらい恐ろしい大爆発だった。
幸い阿津瀬とトビンソンは爆風と爆煙に飲まれるも無事だったはいいが、百地の近くにいたシンとユータの方が大惨事でまさか死んだのではと肝を冷やした。
あの大爆発の後、闇祓いの藤原日和と同行していた他の局員が駆けつけてくれたがシンとユータが爆発に巻き込まれてしまったことで二人は死んでしまったと誰もが思っていた。
ショックと悲しみが一気に押し寄せ百地の自爆で命を落としてしまった二人を哀れんでいた時、爆発で生じた黒煙から二人が現れた。
二人の無事を知った阿津瀬達は大変喜びほっとした。
シンが防御魔法を使って自分とユータの身を守り何とか無事に生きていたのだ。
吹き飛ばされはしたが大した怪我がなかったので
「あの時はマジで死ぬかと思った。こいつがミスしたせいでとんだえらい目に」
脱狼薬を投げた時、口ではなく百地の鼻先に当たって失敗したことで危ない目に遭ったことをシンのせいにする。
「お前だって自分の魔法を自分で受けて動けなくなったくせに。おかげで僕まで巻き添えを食らったんだぞ」
「お前がグレイシアスを使えって言ったからじゃん」
「使えとは言ったがマキシマまで使えなんて一言も言ってないだろ!あれほど攻撃系強化魔法は使うなって言ってるのに。お前が使うとこっちまで巻き込まれるんだから!」
「しょうがないじゃん。普通のグレイシアスじゃあんま効かなかったから強化魔法を使うしか方法がなかったんだもん」
「だからって。自分達の足場まで凍らせるか?」
喧嘩腰で言い争う二人はお互い人のせいにし合って自分が被害者みたいに喧嘩口調になる。
しかめ面で見合う二人に阿津瀬は間を割って別の話をする。
「そうえいば。トビンソンさんの容体はいかがですか?」
阿津瀬を庇って自ら百地の鉤爪に引っかかれ負傷したトビンソンが今どうしているのか気になっていた。
「出血は酷かったけど幸い致命傷は避けていたから命に別状はないって。今は意識が回復してしばらく入院するつもりだ」
トビンソンが入院している病院は魔法界に関連する施設で長野県と群馬県の県境にある山奥にある。そこでは、病気や負傷者がたくさん入院している。
もちろん。非魔法族に気づかれないよう結界が張られている。
トビンソンの容体は好調だとシンが教えてくれたので阿津瀬は安心した。
「それにてもさ。まさか、百地さんが自爆するなんて予想外だったよな」
百地がまさか自ら命を落とす行動を取るとは意外だったとコーヒーを口にしながら語るユータ。
あの赤黒い姿になった途端、彼女の身体が急に点滅したのだ。
百地は身体を点滅させながらシンとユータに襲いかかった。
「まるで、俺らを道連れにして自爆覚悟で襲ってきたみたいな感じだったな?あれじゃまるで、非魔法族で言う特攻兵器だ」
そうだ。彼女の意思なのかは知らないが百地は自ら自分の手で命を絶つ際に二人を道連れにして死のうと突撃しそして自爆した。
まるで、人間界で起きた太平洋戦争末期に実行されたという特効作戦だ。
言いくるめると百地は自ら特攻隊員となって自ら玉砕したということになる。
しかし、シンは意識が無く自我を失った本人が自らの意思で特攻を望んだとは思えない。
「多分、彼女が飲んだ『W.E.T.P』の副作用だろう。一度飲んでしまえば二度と元の姿が戻れず意識と自我を失って最後は特攻兵器としてドカン。まだ詳しくは分からないが兄貴達が見たというデス・イーターと一年半追いかけている密輸団と何らかの関係があるかもしれない」
シンはそう考えていたがまだ気になることもある。
悪魔アラストルの召喚方法を教えた『J・D=Smith』という謎の存在。
今回の事件もJ・D=Smithが一枚噛んでいた可能性もあるかもしれない。
「百地・・・いや千守呂美が働いていたWinstonの方はどうなりました?」
「忘却呪文をかけといたよ。彼らはもう百地りりという存在を忘れている」
シンとユータは事件後、紳士服専門店Winstonの店員達に忘却呪文をかけ百地りりとの記憶を消した。
「その方がいいかもしれませんね」
美味しそうにクッキーを食べながら阿津瀬は言った。
三人が探偵事務所のリビングで話を進めているとノック音が聞こえた。
シンはソファから立って玄関へ向かいドアを開くといきなりお腹から強い衝撃を受けた。
倒れた音がユータと阿津瀬の耳に届き玄関へ向かうとユータのお腹の上に乗った幸の姿が見えた。
「シン!なんでハロウィン参加しなかったの?!ハロウィンのお菓子楽しみにしてたのに!」
お菓子かよとツッコミたいところだが今の幸は怒っている。
今ここで余計なことを言えば更に怒り出すから言わないでおく。
風船のように頬を膨らませしかめ面をしていても子供らしい可愛い顔をしているので全然怖くない。膨らんでいる頬を突いたらトランポリンみたいに跳ねるだろう。
小さな拳でポカポカと殴るもシンには全く効いていない。
「ごめんごめん。今年は仕事で参加できなかったんだ」
全然痛くない可愛らしいポカポカ殴りを腕でガードしながらハロウィン当日、一緒に参加できなかったことを謝った。
この子はお転婆で本当に困る。シンはそう思っていた。
「悪いなユキちゃん。どうしてもハロウィンに参加する余裕はなかったんだ」
様子を見に来たユータも一緒にハロウィン参加できなかったのとお菓子を作れなかった事を幸に謝った。
「それだったら家賃払えー!」
なぜそうなる?
「家賃はちょっと・・・。そうだ。今、美味しいクッキーがあるんだ。よかったら食べる?」
それを聞いて幸はパァっと表情が明るくなって「たべるーー!」と両手を上げシンのお腹の上を降りてリビングへ駆けて行った。
やれやれとシンは起き上がり「子供の相手をするのは本当に大変だ」と呟きながら溜息をついた。
大騒ぎしていた渋谷の街は何もないかのように普段の喧騒と賑やかさに包まれていた。
表参道も何の変哲もない普段と変わりなく多くの人が行き交い平穏なひと時を過ごしている。
この前まで百地が暴れて町中パニックになったのに今は嘘みたいに大騒ぎしたという面影は一切ない。渋谷と表参道は普段と変わりない日常を送っている。
新聞やテレビのニュースには狼人間が人を襲った事や暴れ回っていた事については一切取り上げておらず誰も魔法界の存在に気づいていない。
これも魔法省の闇祓いと忘却術士の手早い対応のおかげだ。しかし、その中でも忘却呪文をかけそびれた非魔法族はほんのわずかいてその人達はSNSで呟いたりしていがそれはただの噂に過ぎないという流れに。もちろん、事件当時の写真や動画もSNSにあげたりしていたがそれは画像生成やCG等で作った偽物だということで丸く治まった。
今回は多くの非魔法族を忘却呪文で狼人間の存在を忘れさせただの噂程度で終わったが、少しでも対応が遅かったらどうなっていた事か。
今回の出来事は、一人の恋愛詐欺師が同性していた一人の男を求め裏切られたことで発生した事件だ。彼女の彼への想いが強くなりやがて愛憎に変わり自ら狼人間になった愚かな出来事だった。
練馬銀座商店街はハロウィンのシーズンが終わって元の普通の商店街に戻っていた。
イベントが終わっても商店街の賑やかさは変わっていない。
レコードから流れるジャズ音楽が事務所の部屋を彩らせシンプルなカップから芳醇な湯気が揺らいでいる。
心が落ち着く大人なメロディがコーヒーの旨味を引き立たせ味わいを楽しませてくれる。
コートをソファの上に置いて香り豊かなコーヒーを楽しむ阿津瀬の姿が映る。
好青年っぽく清涼感ある髪型をしていてルックスが良いのでスーツ姿がよく似合っている。
「それじゃあ。オオカミ捜索は終了したんだ」
ユータはテーブルの上に置いてあったクッキーを加えて話していた。
オオカミ捜索とは、尾上と永嶺の首筋に検出されたDNAがオオカミのものだと分かり捜査をしていたがどこにもオオカミは出てこず手掛かりがなかった為、今回の一例はお蔵入りとなったのだ。
狼人間の仕業だなんて言っても誰も信じてはくれないしこれはこれでよかったと思っている。
ユータとシンは事務所のソファに寛ぎながら阿津瀬の話を耳に傾けていた。
「今回の事件はいろいろありましたね。遺体からオオカミのDNAが出て恋愛トラブル、相見さんの不法侵入、恋愛詐欺師に狼人間の暴走。こんなに波乱な展開を体験するのは三年ぶりです」
「相見さんといえば、彼女はどうなったの?」
尾上の自宅に二度目の不法侵入していたところを見つけ追い詰めて以来、相見の件は警察に任せていたのでその後の事についてシンは訊ねた。
「彼女なら住居侵入罪を含め窃盗罪、脅迫罪を犯したことで15年以下の懲役になりました。尾上さんのご自宅に侵入し合鍵や永嶺さんのプライベート用スマホを盗みそのうえ永嶺さんを脅したりしましたからね。ほんと、恋愛トラブルって怖いですよね」
「恋愛は人間が持つ欲望の一つに過ぎないからな。愛してやまないぐらいの愛情が強ければ逆に強い憎しみを持ってしまう。永嶺さんは尾上葵という婚約者がいたから相見さんも百地も愛が憎しみに変わってしまった。彼を手に入れたいという欲心が今回の複雑な事件が起きたんだろう」
確かに今回の事件はとても複雑で迷宮入り確実な事件だった。
オオカミ絡みで事件を捜査していたら相見が不法侵入を犯しそのうえ永嶺を脅迫して無理矢理に婚約させ百地が恋愛詐欺師の千守呂美で「W.E.T.P」という強化された狼人間に変身できる薬を飲んで尾上と永嶺を殺害し表参道や渋谷を混乱させた。
百地の暴動で被害を受けた死傷者は出たが忘却呪文で記憶が改ざんしてハロウィンイベントで起きた事故として処理された。
「それにしても。あの大爆発からよく無事でいられましたね。自分、てっきりやられたのかとヒヤヒヤしましたよ」
阿津瀬が話したのは三日前、都内広場で起きた百地の大爆発のことだ。
自爆といってもいい大規模な爆発で広場一帯が爆風と爆煙と炎が広まって大変だったのだ。空気と地面が揺れてトビンソンが張ったサークルが破壊されてあまりの強力な勢いに死ぬんじゃないかと思うぐらい恐ろしい大爆発だった。
幸い阿津瀬とトビンソンは爆風と爆煙に飲まれるも無事だったはいいが、百地の近くにいたシンとユータの方が大惨事でまさか死んだのではと肝を冷やした。
あの大爆発の後、闇祓いの藤原日和と同行していた他の局員が駆けつけてくれたがシンとユータが爆発に巻き込まれてしまったことで二人は死んでしまったと誰もが思っていた。
ショックと悲しみが一気に押し寄せ百地の自爆で命を落としてしまった二人を哀れんでいた時、爆発で生じた黒煙から二人が現れた。
二人の無事を知った阿津瀬達は大変喜びほっとした。
シンが防御魔法を使って自分とユータの身を守り何とか無事に生きていたのだ。
吹き飛ばされはしたが大した怪我がなかったので
「あの時はマジで死ぬかと思った。こいつがミスしたせいでとんだえらい目に」
脱狼薬を投げた時、口ではなく百地の鼻先に当たって失敗したことで危ない目に遭ったことをシンのせいにする。
「お前だって自分の魔法を自分で受けて動けなくなったくせに。おかげで僕まで巻き添えを食らったんだぞ」
「お前がグレイシアスを使えって言ったからじゃん」
「使えとは言ったがマキシマまで使えなんて一言も言ってないだろ!あれほど攻撃系強化魔法は使うなって言ってるのに。お前が使うとこっちまで巻き込まれるんだから!」
「しょうがないじゃん。普通のグレイシアスじゃあんま効かなかったから強化魔法を使うしか方法がなかったんだもん」
「だからって。自分達の足場まで凍らせるか?」
喧嘩腰で言い争う二人はお互い人のせいにし合って自分が被害者みたいに喧嘩口調になる。
しかめ面で見合う二人に阿津瀬は間を割って別の話をする。
「そうえいば。トビンソンさんの容体はいかがですか?」
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「それにてもさ。まさか、百地さんが自爆するなんて予想外だったよな」
百地がまさか自ら命を落とす行動を取るとは意外だったとコーヒーを口にしながら語るユータ。
あの赤黒い姿になった途端、彼女の身体が急に点滅したのだ。
百地は身体を点滅させながらシンとユータに襲いかかった。
「まるで、俺らを道連れにして自爆覚悟で襲ってきたみたいな感じだったな?あれじゃまるで、非魔法族で言う特攻兵器だ」
そうだ。彼女の意思なのかは知らないが百地は自ら自分の手で命を絶つ際に二人を道連れにして死のうと突撃しそして自爆した。
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シンはそう考えていたがまだ気になることもある。
悪魔アラストルの召喚方法を教えた『J・D=Smith』という謎の存在。
今回の事件もJ・D=Smithが一枚噛んでいた可能性もあるかもしれない。
「百地・・・いや千守呂美が働いていたWinstonの方はどうなりました?」
「忘却呪文をかけといたよ。彼らはもう百地りりという存在を忘れている」
シンとユータは事件後、紳士服専門店Winstonの店員達に忘却呪文をかけ百地りりとの記憶を消した。
「その方がいいかもしれませんね」
美味しそうにクッキーを食べながら阿津瀬は言った。
三人が探偵事務所のリビングで話を進めているとノック音が聞こえた。
シンはソファから立って玄関へ向かいドアを開くといきなりお腹から強い衝撃を受けた。
倒れた音がユータと阿津瀬の耳に届き玄関へ向かうとユータのお腹の上に乗った幸の姿が見えた。
「シン!なんでハロウィン参加しなかったの?!ハロウィンのお菓子楽しみにしてたのに!」
お菓子かよとツッコミたいところだが今の幸は怒っている。
今ここで余計なことを言えば更に怒り出すから言わないでおく。
風船のように頬を膨らませしかめ面をしていても子供らしい可愛い顔をしているので全然怖くない。膨らんでいる頬を突いたらトランポリンみたいに跳ねるだろう。
小さな拳でポカポカと殴るもシンには全く効いていない。
「ごめんごめん。今年は仕事で参加できなかったんだ」
全然痛くない可愛らしいポカポカ殴りを腕でガードしながらハロウィン当日、一緒に参加できなかったことを謝った。
この子はお転婆で本当に困る。シンはそう思っていた。
「悪いなユキちゃん。どうしてもハロウィンに参加する余裕はなかったんだ」
様子を見に来たユータも一緒にハロウィン参加できなかったのとお菓子を作れなかった事を幸に謝った。
「それだったら家賃払えー!」
なぜそうなる?
「家賃はちょっと・・・。そうだ。今、美味しいクッキーがあるんだ。よかったら食べる?」
それを聞いて幸はパァっと表情が明るくなって「たべるーー!」と両手を上げシンのお腹の上を降りてリビングへ駆けて行った。
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