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第1章
その25 犬たちの乱入事件で、クラスメイトと親しくなる
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25
従兄弟で悪友の沢口充が、ルナという少女に遭遇し、文字通り、舐められたりしていることは、つゆ知らず。
その頃、おれ、山本雅人は、学院内に設けられた医務室の前で、診察の順番を待っていた。
巨大な犬が学内に乱入し、一人の男子生徒(充である)が襲われて、噛みついたりはされなかったが、押さえつけられてベロベロと舐められ、よだれまみれになった事件は、目撃した生徒たちに衝撃をもたらしたのだ。
迅速に事件の対応がなされた。
犬たちは捕獲、家に送り返されるらしい。
(でも、香織さんと一緒に、搬送される充のストレッチャーを追いかけて走って行ったところを、おれは見たんだけどな)
白衣の医師団が登場、全校生徒を診断すると知らせがあった。
まず、身体的には全く異常がないことを、きれいな看護師のお姉さんやお兄さんたちに診てもらった。
ものはついでと、身長、体重、血圧、心電図、胸部レントゲン、視聴覚検査、尿検査、血液まで調べられ、健康診断を今のうちにやってしまうような勢いだった。
驚いたのは血液検査の結果が出るまで、ものの三十分ほどだという。
普通の病院でも数日かかるところもあるよな?
「それにしてもすごいな、この施設」
おれは感嘆する。
周囲の、同じクラスごとに集められた男子も同意見だ。
「きっとものすごいお金持ちだよ、この学校」
おれに同意したのは、華奢なメガネ男子、名越森太郎くん。
「だよな。私立なのに授業料がすげえ安いし。うちは兄弟が多いし、ありがたいけど」
いかにも足が速そうな背の高い理知的男子、竹内司。細身なのに筋肉ありそうなボクサータイプだ。
「太っ腹だ」
こう言ったのは、充を助け出すのを手伝ってくれた、頼もしいアニキ系の、宮倉宗一である。
「あとは問診か……」
どうも、問診のときに精神状態への影響も診るんじゃないかな。
「ねえどうだった、健康診断」
診察室の順番を廊下に並んで待っている、おれに。
ぽんと肩を叩いて声を掛けてきた女生徒がいた。
もちろん、おれは振り向かないでも声でわかった。
伊藤杏子さんだ。
彼女と同じクラスになれたのは、すっごいラッキーだった。
充も一目惚れした並河香織さんと同じクラスになれて喜んでいた。
まあ、充を襲って押し倒したのも、香織さんの飼っている犬だったわけだが。
「健康診断は大丈夫だったよ。おれは精神的なほうも平気だけど」
「よかったわ。驚いたでしょ?」
「うん、驚いたけどね。犬は好きだし! ……充は、どうしてるかなぁ」
「特別個室で、香織が付き添ってるって。だから大丈夫よ」
にかっと笑う。
見た目よりもスポーツ系だな。
すごい健康的な美少女であるとわかった。
たぶん心も体も。強いのだろう。
「女子は、これからレントゲンだから。じゃあ、また後でね!」
爽やかな笑顔を振りまいて、杏子さんは女子達のグループに戻っていった。
「山本くん、伊藤さんと親しいんだね。いいなあ」
名越森太郎が、羨ましそうに呟いた。
「あ、ああ。いいだろ!」
おれは胸をはった。
「入学式の時に出会って、会場の場所を聞かれてさ」
「教えてあげたのが縁?」
「……いや、おれもわからなくて。後で来た、並河さんに教えてもらったんだよ」
ちょっと恥ずかしい。
だが、森太郎くんは、それさえ羨ましいと言う。
「それって、伊藤さんと並河さんと、二人とも、顔を覚えてもらってるってことだよ! いいな~!」
「そういう考え方もありか~。おまえポジティブだな、名越」
「森太郎でいいよ!」
メガネ少年は、嬉しそうに笑った。
あ、なんかいいかも。
クラスメイトたちと、早く慣れるかもしれないな。
その日の放課後は、こうして、お祭りみたいな気分で終わった。
それにしても充はどうしたかな……帰ってこない。
従兄弟で悪友の沢口充が、ルナという少女に遭遇し、文字通り、舐められたりしていることは、つゆ知らず。
その頃、おれ、山本雅人は、学院内に設けられた医務室の前で、診察の順番を待っていた。
巨大な犬が学内に乱入し、一人の男子生徒(充である)が襲われて、噛みついたりはされなかったが、押さえつけられてベロベロと舐められ、よだれまみれになった事件は、目撃した生徒たちに衝撃をもたらしたのだ。
迅速に事件の対応がなされた。
犬たちは捕獲、家に送り返されるらしい。
(でも、香織さんと一緒に、搬送される充のストレッチャーを追いかけて走って行ったところを、おれは見たんだけどな)
白衣の医師団が登場、全校生徒を診断すると知らせがあった。
まず、身体的には全く異常がないことを、きれいな看護師のお姉さんやお兄さんたちに診てもらった。
ものはついでと、身長、体重、血圧、心電図、胸部レントゲン、視聴覚検査、尿検査、血液まで調べられ、健康診断を今のうちにやってしまうような勢いだった。
驚いたのは血液検査の結果が出るまで、ものの三十分ほどだという。
普通の病院でも数日かかるところもあるよな?
「それにしてもすごいな、この施設」
おれは感嘆する。
周囲の、同じクラスごとに集められた男子も同意見だ。
「きっとものすごいお金持ちだよ、この学校」
おれに同意したのは、華奢なメガネ男子、名越森太郎くん。
「だよな。私立なのに授業料がすげえ安いし。うちは兄弟が多いし、ありがたいけど」
いかにも足が速そうな背の高い理知的男子、竹内司。細身なのに筋肉ありそうなボクサータイプだ。
「太っ腹だ」
こう言ったのは、充を助け出すのを手伝ってくれた、頼もしいアニキ系の、宮倉宗一である。
「あとは問診か……」
どうも、問診のときに精神状態への影響も診るんじゃないかな。
「ねえどうだった、健康診断」
診察室の順番を廊下に並んで待っている、おれに。
ぽんと肩を叩いて声を掛けてきた女生徒がいた。
もちろん、おれは振り向かないでも声でわかった。
伊藤杏子さんだ。
彼女と同じクラスになれたのは、すっごいラッキーだった。
充も一目惚れした並河香織さんと同じクラスになれて喜んでいた。
まあ、充を襲って押し倒したのも、香織さんの飼っている犬だったわけだが。
「健康診断は大丈夫だったよ。おれは精神的なほうも平気だけど」
「よかったわ。驚いたでしょ?」
「うん、驚いたけどね。犬は好きだし! ……充は、どうしてるかなぁ」
「特別個室で、香織が付き添ってるって。だから大丈夫よ」
にかっと笑う。
見た目よりもスポーツ系だな。
すごい健康的な美少女であるとわかった。
たぶん心も体も。強いのだろう。
「女子は、これからレントゲンだから。じゃあ、また後でね!」
爽やかな笑顔を振りまいて、杏子さんは女子達のグループに戻っていった。
「山本くん、伊藤さんと親しいんだね。いいなあ」
名越森太郎が、羨ましそうに呟いた。
「あ、ああ。いいだろ!」
おれは胸をはった。
「入学式の時に出会って、会場の場所を聞かれてさ」
「教えてあげたのが縁?」
「……いや、おれもわからなくて。後で来た、並河さんに教えてもらったんだよ」
ちょっと恥ずかしい。
だが、森太郎くんは、それさえ羨ましいと言う。
「それって、伊藤さんと並河さんと、二人とも、顔を覚えてもらってるってことだよ! いいな~!」
「そういう考え方もありか~。おまえポジティブだな、名越」
「森太郎でいいよ!」
メガネ少年は、嬉しそうに笑った。
あ、なんかいいかも。
クラスメイトたちと、早く慣れるかもしれないな。
その日の放課後は、こうして、お祭りみたいな気分で終わった。
それにしても充はどうしたかな……帰ってこない。
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