魔王さんは大変なようで。

五月七日 外

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魔王軍幹部も大変なようで。

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「シぃ~ノ~!!妾の話をちゃんと聞いておるのかー?」
「あはは……なんの話しだっけ?」
「だぁか~ら~!妾が頑張っとる話しじゃ~」

 俺はどこからどう見ても幼女となってしまったリアを膝に抱えながら、かれこれ一時間ほどリアの「頑張った話し」とやらを聞いていた。
 現状、幼女と楽しくお話をする男子高校生という若干危ない絵面だが、ここは異世界なので大丈夫だろう。
 リアから聞いて知ったのだが、リアはお酒に酔うと若返ってしまうらしく今日はかなり飲んでしまったせいで、こんな幼女にしか見えない姿まで若返ってしまったらしい。……なんと俺得の性質なのだろうか。次は是非とも中学生くらいのリアを見てみたい……。
 ただ、見た目は若くなっても力や魔力は変わらないらしいので、ある意味危険度がはね上がっている。どうりで、カロスやルンルンが逃げるわけだ……て、今の俺の状況かなりヤバくね?……
 と、俺がワガママ魔王と一緒にいることの危険さを認識したところで、ドンドン扉を叩く音がした。

「魔王さま!前線組からの連絡で、至急援助が欲しいとのことですが……」

 リアの返事を聞くや否や、慌てた様子で中に入ってきた小鬼の魔物はそこまで矢継ぎ早に言うと俺の膝の上に座っているリアを見たまま固まってしまった。
 まあ、その反応も無理もない。なんたって自分の上司が幼女になってるわ、見知らぬ人間の膝の上に座ってるわで、普通の人間……いや、魔物か。普通の魔物ならこの状況を理解出来るはずもない。
 俺は一応、小鬼に向かって初めましてと頭を下げておいた。

「妾は行かんぞ、カロスでも連れていけばよかろう」
「その……カロス様はライラ様のお使いで食料を買いに買いに行ったようでして……」
「買い出し?食料なら充分にあるはずじゃが?」
「それが、ポテチ?なるものを食べたくなったらしく……」
「なるほど……なら、仕方ないの」

 幼女化して弱冠頭が弱くなっているのか納得してしまうリア。
 恐らくだが、俺の持ってきたラノベでポテチを作る話があったので、その話を読んだライラが近場にいたカロスをパシったのだろう。
 というか、ライラのやつさっきルンルンに吹き飛ばされたあとなのに元気だな。それと、ポテチはこの世界に無いと思うよ?

「ふむ……それじゃあルンルンはどうじゃ?」
「それが……例の女勇者が相手の様でして」
「なるほど……ルンルンとは相性が悪いの」
「はい。ですので魔王さまに」
「イヤじゃ」
「へ?あの……ですから」
「イヤじゃ。妾はシノと話しておるから、行きたくないの!」

 流石はワガママ魔王モード。ここでまさかのワガママを発動してきた。個人的には自分と話したいから行きたくないと言っているので嬉しい気もするが、前線組なんて名前から察するにそこがやられるのは不味いだろう。
 俺は心を鬼にして、その場を立ち上がった。
 ……と、当然俺の上に座っていたリアは転げ落ちてしまう。

「リア!……俺は、リアの話しも好きだけどそれよりも格好良く勇者を倒すリアの姿が見たい!!」
「シノ……分かった!妾頑張る!!……じゃから」
「じゃから?」

 うるうる瞳に涙を貯めて俺のことを見つめてくる幼女もとい、リア。
 話の流れて的に、勇者を倒したらなになにがして欲しいみたいなおねだりを言うのだろう。
 俺は男らしくドンと構えていたのだが、そこでふと自分がさっきなんと言ったのか思い出してしまった。
 ……あれ?勇者を倒すリアの姿が見たいってことは……

「……じゃから、妾と一緒に来てくれる?」

 そんな風に健気に言うリアのおねだりを聞かない訳にもいかず。
 俺はその場で静かに、うんと首を縦に降った。

 
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