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1話 両親が死んだ
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今日、両親が死んだ。交通事故だったらしい。私は学校に行っていた。健全な高校生は、平日の日中は学校に行くものだから、当然だ。普段、平日は仕事の2人だったが、結婚記念日ということもあり、休みを取り、出かけていたのだ。
都内で横断歩道を渡っているところに、暴走車が突っ込んできたらしい。詳しくは聞いていないが、飲酒運転だったとか。そんな屑のせいで、私の人生が、お父さんとお母さんの人生が狂わされた。何も不満がなかった訳じゃないけど、私は幸せだったんだと、今になって思う。
門限にうるさい父も、好きな人はいないのかとやたらと恋バナをしたがる母も、もういなくなってしまった。涙は出なかった。辛いはずなのに。悲しいはずなのに。実感がまだ湧いていないからなのか。もう何もかもが嫌になる。
いっそのこと、私も一緒だったら良かったのに、と心底思う。お通夜や葬式は親戚が進めてくれていたので、気付いたら終わっていた。私を誰が預かるのか、という話で多少揉めていたようだが、気付けば、その場には来ていない祖母が私を預かる、という話で落ち着いていた。
田舎に住む父方の祖母は足が悪く、今回は参列できなかった。私も小学校のころに、夏休みでおばあちゃんの家に行ってから、会っていない。しかし、とてつもなく田舎だったことは覚えている。最寄りの駅は無人駅で、電車も一日に2回ほどしか止まらない。
でも、まだ高校生な私に選択権がある訳もなく、数日後には、荷物をまとめ、おばあちゃんの家に来ていた。転校することもできたが、私は高校を辞めた。
「カナや。よう来たのう」
「そんな無理に笑わなくていいよ。私、部屋にいるね」
優しい笑顔で迎えいれてくれたおばあちゃんだが、今はその顔は見たくない。その優しい目はお父さんにそっくりで、お父さんのことを思い出してしまう。いなくなってしまったんだということを改めて、認識するのは、まだつらい。
「カナや。夕飯は6時でいいかあ?」
「あー今日は疲れたし、寝るから夕飯はいらないや」
「そうかあ? でも、何も食べんのはいかんよう」
「一日くらい食べなくても、大丈夫だよ」
私はおばあちゃんに背を向けて、自分の部屋に戻った。とはいえ、まだ夕方過ぎ。流石に眠くない。空気の入れ替えの為に窓を開けられたその部屋は初夏とは思えないくらい涼しかった。
夕日に染められた空気は、東京の夕方とは少し違った匂いがする気がした。
2階の窓から見える景色は、きれいな水田の景色が奥まで広がっていて、夕日を反射していた。
都内で横断歩道を渡っているところに、暴走車が突っ込んできたらしい。詳しくは聞いていないが、飲酒運転だったとか。そんな屑のせいで、私の人生が、お父さんとお母さんの人生が狂わされた。何も不満がなかった訳じゃないけど、私は幸せだったんだと、今になって思う。
門限にうるさい父も、好きな人はいないのかとやたらと恋バナをしたがる母も、もういなくなってしまった。涙は出なかった。辛いはずなのに。悲しいはずなのに。実感がまだ湧いていないからなのか。もう何もかもが嫌になる。
いっそのこと、私も一緒だったら良かったのに、と心底思う。お通夜や葬式は親戚が進めてくれていたので、気付いたら終わっていた。私を誰が預かるのか、という話で多少揉めていたようだが、気付けば、その場には来ていない祖母が私を預かる、という話で落ち着いていた。
田舎に住む父方の祖母は足が悪く、今回は参列できなかった。私も小学校のころに、夏休みでおばあちゃんの家に行ってから、会っていない。しかし、とてつもなく田舎だったことは覚えている。最寄りの駅は無人駅で、電車も一日に2回ほどしか止まらない。
でも、まだ高校生な私に選択権がある訳もなく、数日後には、荷物をまとめ、おばあちゃんの家に来ていた。転校することもできたが、私は高校を辞めた。
「カナや。よう来たのう」
「そんな無理に笑わなくていいよ。私、部屋にいるね」
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「カナや。夕飯は6時でいいかあ?」
「あー今日は疲れたし、寝るから夕飯はいらないや」
「そうかあ? でも、何も食べんのはいかんよう」
「一日くらい食べなくても、大丈夫だよ」
私はおばあちゃんに背を向けて、自分の部屋に戻った。とはいえ、まだ夕方過ぎ。流石に眠くない。空気の入れ替えの為に窓を開けられたその部屋は初夏とは思えないくらい涼しかった。
夕日に染められた空気は、東京の夕方とは少し違った匂いがする気がした。
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