姉の彼氏はわるい男

ルルオカ

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配達員がかかった集荷の恋の罠

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「その会社に集荷にいくと、八十年代耽美系少女漫画風少年を拝める」

俺の配送会社ではもっぱらな噂だった。
が、こうも囁かれた。

「彼と目が合ったら最後、無一文どころか、借金地獄に陥り、チン毛も一本残らず抜かれんばかりに、とことん貢がされる」

実際、例の会社の担当者は、どんどん辞めていった。

噂では「借金を返せなくなって、内臓を売って死んだり、外国にとばされ奴隷労働されられている」とか。

「なんかもう、怪談みたいな存在だが、でも、一生に一回くらい、小悪魔な絶世の美少年風若き青年に人生を狂わされてみたいとか、ちょっと思うなあ。
あー、次の担当俺になんねえかなあ」

会社の同僚が喚くのを、白けて聞いていた俺が、まさか担当になるとは。

「その会社に絶世のイケメンがいたとして、担当が辞めていったのは偶然が重なってだろう」と噂を真に受けていなかったものを、耳に入れた以上「チン毛も一本残らず抜かれんばかりに」という、おぞましいイメージを拭えず。

緊張しつつ、ふだん通りに仕事をしようと努め「すんませーん、集荷にきましたー」と受付から呼びかけた。

「はあい」と猫なで声が返ってきて、パーテンションから覗かせたのは、プードルのような巻き毛に、西洋人形風な顔。

あらためて拝顔をして「八十年代少女漫画風って、俺、平成生まれだから、知らねーじゃん」と我の返る思いがしたり。

「そもそも、西洋人形ってキュートというより、ホラーっぽくね?」と首をひねったあたり、まあ、恋のキューピットの矢は場外ホームランになったわけだ。

となれば、内股で胸を寄せるように脇を閉め、くねくねするのにも、きつめのYシャツにサスペンダーを食いこませ、乳首を浮き彫りにさせるのにも、いちいち、しなを作って舌足らずに話すのにも、胸がむかむかしてきて「キモ」とつい、ど本音を漏らしてしまった。

次の瞬間「やべ」と口元に手をかざしたものの、胸糞独白はばっちりと聞こえたらしく、笑みをたたえたまま一時停止する、まさに西洋人形。

「ますますホラーだ」と思いつつ、忙しかったし、面倒臭かったので「じゃ、お荷物、預かりますねー」と見て見ぬふりをして、ダンボール箱を抱え、そそくさと会社を後にした。

「クレームくるか、担当、外されるかなあ」とそう心配もせず「担当をつづけられたとして、あさって、あいつ、どんな顔するかな」とむしろ愉しみにしたもので。

さて、二日後、例の会社に向かうと、扉を開けた時点で、西洋人形が待ちかまえていた。
これまたホラー的に、形よく口角を上げつつ、虚ろな目をして。

確認作業をする間は、にこにこと肯いていただけで「じゃあ、荷物お預かりしますね」と別れの挨拶的段階になって、やっと口を利いた。
「お願いします」と。

変哲ない文言だったが、耳を疑った。

だって、俺より野太く、熟年レスラーのような、しゃがれた声をしていたから。

八十年代耽美系少女漫画風少年的、麗しき青年が発言したとは、とても思えなかったものの、かといって、他に人がいるのではないかと、見回すことはなく。

笑みを絶やさない彼と、あらためて対峙して、生唾を飲みこみ後ずさったら、勢いよくターンをして、一心不乱にダッシュ。
荷物を抱えたまま、運転席に跳びこんで、息を切らしつつ、ダンボール箱を潰しそうに抱きしめた。

おととい、女子のようなトーンで、きゃぴきゃぴしていた同一人物と思えない。

双子か?それとも、いつもはヘリウムガスでも吸っているのか?
元が、あれほど低い錆びた声なら、ヘリウムガスを吸っても、不自然にならないのかもしれない・・・。

なんて目まぐるしく考えて、息を整えようとしたものを、湯気がでそうなほど、頭は沸騰するばかり。

ときめきか怯えか、境が曖昧とはいえ、心臓が激するのも、おさまらず。

これがギャップ萌えというのか。
なにか、ちがうように思うが、チン毛が燃えそうに、心身が滾ってしかたなかった。




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