俺の推しは人気がない

ルルオカ

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今日のパンツは何色ですか?

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「はーい、どうも、今日もはじまりましたあ!りっくんのお部屋へようこそ!

ピチピチフレッシュティーンモデル、りっくんが、日々の仕事や家事でお疲れのお姉さま方を癒してあげたい!ラジオ番組です!

具体的な内容は・・・・あ、ちょうど、そういった質問のメールがきているんですね!じゃあ、早速、読ませていただきまあす!えーと・・・」

マイクから口をはずして一呼吸し、その合間に向かいで腕を組む仏頂面をぎろり。お返しに顎をしゃくられて、マイクに入らないよう舌打ちしつつ、台本の隣に置かれた紙に目を走らせる。

「変態で変態は変態だから変態です。さんから頂きましたあ!『今日のパンツは何色ですか?気になって夜は眠れてもお昼寝できません』・・・・」

目を瞑り、メールの紙を手でぐしゃり。喉が焼けるような熱がこみ上げるのに奥歯を噛みしめながら、思考を巡らせ、でも、結局、頭の中を爆発させて「ああ!?」と態度を豹変。

「お昼寝って、お前は幼稚園児か!パンツだあ!?ああ、そうね!今日のパンツはウ(ピー)を漏らしたカレー色だよ!よかったな!ざまあみろ!」

エコーがかかって「ざまあみろ、ざまあみろ」と聞こえなくなってからジングル。「ラジオ『りっくんのお部屋へようこそ』は男性下着ブランド『ジャングル』の提供でお送りします」と流れ、すこしして「はーい、本編入るまで、休憩、はいりまーす」とブースからの呼びかけ。とたんにテーブルに拳を叩きつけ「知ってる!?」と向かいの仏頂面に吠えた。

「俺、未成年なんだよ!?あと二年で成人とはいえ、背が低いから、たまに中学生にまちがえられるしな!

そんな見た目、中学生の俺に毎週毎週、変質者のご意見を読ませるなあ!セクハラ通り越して犯罪よ!?メールの送り主はもちろん、俺を変質者のおもちゃにさせてる、あんたら大人も檻の中だよ!?」

「そーかもな。だが、誰も通報していないし、スタジオに警察が駆けつけたり、外で待機してたこともないだろ。ってことは、お前が変質者の餌食になるのをリスナーが望んでいるってことだ。残念だったな、リスナーに良識のあるヤツがいなくて。

まあ、今回の返しは、よかったよ。前のエスな対応して、あしらったのも悪くなかったが、鼻についたし、スベってたからな。前は二十点、今回は五十点ってところか」

「未成年に変質者の相手させといて、評価や採点するなんて、この鬼い!いや、鬼も真っ青な鬼ー!」

ヒステリックにクレームしつつも「どうして、こうなった・・・」と内心、途方に暮れたもので。

ラジオのはじめに自己紹介したとおり、俺は十八のモデル。モデルの割に身長百六十しかないのを、むしろ生かして「低身長な男の着こなし」を雑誌やネットでお披露目。「低身長の男の救世主!」と多くの同性から支持され「こんな弟ほしいー!」と年上女性から猫可愛がり的人気を獲得。

男ファンより、女ファンのほうがアグレッシブに応援や課金をしてくれるので、そちらに合わせ、健気な弟的キャラで売り出し中。のはすが、今はラジオで毎回毎回、変質者リスナーのお便り「今日のパンツは何色ですか」を読まされて。

いや、はじめは、冒頭で紹介したようなテーマの番組にするはずだったのが、向かいの仏頂面、鬼も泣かせるような鬼構成作家の「つまらん」の一言で一新。常連変質者のお便りコーナー(?)にはじまり、下ネタ満載男の悪ノリ満点のラジオ番組に。

いや、たしかに、男ウケする構成のほうが、俺の肌には合っていたが。もともと、お姉さま方に「いい子、いい子」と頭を撫でられて、ひたすら尻尾をふるような性分ではないし。それに、低身長以外の男人気が得られ、男下着ブランドがスポンサーになってくれるなど、わるいことばかりでないし。

それにしても、ラジオがはじまってから一年間ずっと、変質者の自分あての質問を読まされてきた俺のメンタルよ。「俺は女じゃないし」とか関係なく、読むたび、身も心も汚されているようで、割りきれるものでなし。

おまけに質問の返しを、鬼もチビる鬼構成作家に仏頂面で、分析、批評、採点、ダメだしされる始末。変質者のプレイにつき合わされた挙句「十点。話にならない」と鼻を鳴らされるなんて、理不尽極まりないが、なんだかんだ、売れっ子鬼ヒットメーカーの構成作家を、一回も笑わせたことがないのが悔しい。「もう、やってられるか!」と台本を投げつけず、悔しがって挑戦してしまうのが、また悔しい。

まあ、編集でカットしない制作スタッフ「うちの大事な子なんですよ!」と苦言せず、いけいけどんどんな事務所も、褒められたものでないとはいえ、俺が戦うべきは、鬼もひれ伏す鬼構成作家。「いつか、ぎゃふんと云わせてやる!」と奮起して、変質者に習っての「ブラジャーは何色ですか」「(ピー)毛は何色ですか」との変態リスナーの猛攻に耐えつつ、日々、精進していたのだが。

打ち合わせをするのに、小部屋に入ったら、いたのは鬼も金玉を縮める鬼構成作家だけ。テーブルに片手を置いて、うつらうつらと。

いつ何時でも寝首をかきたい天敵なれど、疲れて寝入るさまを見ると「新人無名の俺に時間を割かせるのが申し訳ない」と恐縮してしまう。「いつも閻魔みたいにふんぞり返っているのに、こうやって隙を見せるから、ずるいよなあ」とため息をつき、背後を通って、自分の席にいこうとしたとき。

スマホに指を置いたままなのに気づいた。つい目をやってしまい、次の瞬間、金縛りに。

メールを打つ画面。途中まで書かれた「今日のパンツは何色で」。

放心することしばし。今のままでは、起きた構成作家とまともに顔を合わせられないと判断し、一旦、退出。あてもなく廊下を歩きつつ「どういうこと?」と頭をひねりにひねったもので。

パーソナリティのこれまでの印象を一変させる、意外性を引きだすのが、鬼多忙な鬼構成作家の持ち味。その意図があって、自分が変質者に成りすまし、一策を講じたのか。

と考えかけて「いや」と首を振る。勘なれど、そんな策士的な高等テクニックではないように思え、試してみることに。

平常心をとりもどして打ち合わせし、ラジオ収録へと。いつも通り進行し、さて、きやがった。

「今日のパンツは何色ですか。お(ピー)にしないので教えてください」とすらすらと読み「そうだなあ・・・」と思わせぶりに、なかなか応じようとせず。やや目を揺らしてから、仏頂面の構成作家をちらり。

そのまま視線を落として、下を覗きこむようにし、再度、向かいをちらり。かーらーの「青のしましま・・・」とぶっきらぼうに告げ、目を伏せての恥じらうような仕草。

間を置かないで「ぶっ」と不穏な音がしたのに、顔を上げれば、構成作家が仏頂面のまま、鼻血をぼたぼた。分かりやす過ぎる反応に「鼻血ぶーって漫画か!」と声高にツッコみ、勢いよく立ち上がって魂の叫びを。

「単に、あんたが俺のパンツの色知りたかったんじゃねかああああ!仕事にかこつけて、いい年こいた大人が、いたいけな少年になにやらせてんじゃあ!ぼけええええええ!」

もう冗談でなく逮捕案件のはずが、鬼も吐き気を覚える鬼構成作家、ならぬ、変態の鑑は規格外として、周りの大人も、まともなヤツがいなくて。録音を丸々流した制作スタッフ。「いい加減、助けるか、通報しろ!」と訴えたのに、鏡越しで親指を立ててみせたマネージャー。

変態の鑑を「分かっていらっしゃる!」「我らの神よ!」ともてはやす変態子分リスナー。この一件がネットニュースで流れるも「未成年になんてことを!」と子供の人権擁護を求めず「俺もりっくんのパンツの色知りたい!」と変態を量産してしまった世間。

この世に俺の味方はいなく、自分の身は自分で死守しないといけないらしい。こうなったら遠慮なく「やってられっか!」と投げだしたいところなれど、悔しいかな。開き直った、いや前より図に乗った鬼変態構成作家の鼻血を噴かせはしても、まだ笑いを引きだせていない。

パーソナリティと同席するくせに、これまで口角さえ上げたことがないという鬼伝説のある構成作家を、はじめて笑わせるのは俺だ!その熱意でもって、俺のパンツを狙う変質者と対峙し、今日も今日とて流暢に読みあげてやった。

「今日のパンツは何色ですか?」



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