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ホラーゲームに転生なんて聞いていない
しおりを挟む風邪を引いた祖母の代わりに墓参りに行ったとき。山の急斜面に据えられた、石の階段を下りようとして足を滑らせた。
角度が四十度くらいある階段を建物二階分ほどころげ落ち、最後に手すりに頭をぶつけて失神。
すこし間をおいて、意識をもどしたら、そこは夜の住宅街。
俺は電柱に身を潜め、顔を半分覗かせていた。
その片目に写ったのは、腰まである長髪にマスク、ロングスカートをはいた女性。
彼女がゆらゆらと徘徊するのを目の当たりにして「どうして神様!」と嘆いたもので。
俺が転生したのは、まさかのホラーゲーム。
謎解きメインの完全ステルス系で、殺しにかかってくる相手をすこし足止めできても、殴打、刃物で切りつける、銃で撃つ、お札で除霊するなど、反撃、抹殺は一切、できない。
俺は転生前と変わらず、高校生ながら本当の主人公は非力な小学生の女の子だし。
で、謎解きを邪魔して、隙あらば殺そうとする敵は、口裂け女。
彼女に妨害されながら、彼女の呪いを解くため謎解きをするというのが、おおまかなゲームの内容。
昼間に情報集めをし、夜に探索、期限は一週間。
震えあがって涙して絶叫しつつ、ホラーゲームを心ゆくまで愉しむタイプの俺は愛好家だが、このゲームは開始十分でおしっこを漏らしそうになったほど、おぞましかった。
強心臓の友人にプレイしてもらい、かたわらで眺めていても、すこしチビってしまって。
指が震えるあまり、自分でプレイできなかったホラーゲームに転生なんて、俺はそんなに生前、徳を積まなかったのだろうか。
いざ、口裂け女がうろつく夜の住宅街に、生身の人間として降り立ったなら、おしっこを漏らすなんて序の口、心臓発作で死にそう。
とはいえ、転生して、すぐに死にたくなく、一週間後の呪い発動も避けたく、昼の情報集め、夜の探索をパンツを濡らしっぱなしに泣く泣く遂行。
ゲームは、はじめて間もなく投げだしたとはいえ、もとより爽快アクション系より、じっくり謎解き系、じれったいステルス系のほうが得意。
転生して三日は、口裂け女に遭遇、追いかけまわされることなく、順調にヒントを見つけ、謎を解いていった。
もちろん命がけの口裂け女との隠れんぼ、鬼ごっこは、いっそ死にたいと思うほど辛かったが、ただ、案外、困ったのは、命に関わらないこと。
俺以外、登場人物が異性しかいないことだ。
ゲームプレイを見ているときは気づかなかったものを、口裂け女が敵の主役とあり、その関連でか、この世界は女の人と女の子だらけ。
いや、べつに異性にアレルギーやトラウマはなく、とくに思うところもないとはいえ、ただ、耐性がない。
生前は男だらけの家庭、学校で過ごしていたから。家ではキャリアウーマンの母は不在がちで、父が専業主夫、兄と弟が一人ずつ。
男子校に通って、野球部漬け。
からの異性だけに囲まれての生活を送るようになっては、ほっと一息つく間もなく緊張しっぱなし。
接するのが不慣れで、変に肩の力が入るのもそうだが、俺しか男がいないという異様な状況も、変にプレッシャーだったし。
夜は探索に行かないといけないというに、学校から帰宅するとばったり。
HPゼロ、精神力も底を尽きて、なかなか、起き上がれなかったもので。
不慣れな生活に疲弊しての夜の探索の足どりは重い。
おまけに、謎を解くにつれ、口裂け女の出現率をはじめ、力や能力も高まっていき、やり過ごすのが難しくなってくるという。
転生して四日目の夜。
キーポイントになるだろう石碑のもとに行きたいのが、あたりを口裂け女がうろうろ、ほぼ石碑に張りついて遠のかないので正面突破は無理そう。
「どうやって石碑から放れてもらおう」と木の幹に隠れて考えていたら、肩をぽんと。
人肌の温もり皆無の手の冷たさに「しまった!」とふり向けば、案の定、口裂け・・・・・お、男?
髪やファッション、マスクは口裂け女スタイルなれど、俺より頭一つ背が高く、ゴリラのような肩の盛り上がりに、豊満な胸板。
マスクを取って「俺、きれい?」と一人称にしろ、声の低さも、いかつい顔つきも男らしい。
いや、見とれている場合ではない。
前方にも口裂け女がいるし、足止めして早く、この場を放れないと。
と思ったはずが、気がつけば、口裂け男に抱きついていた。
「やっと、男に会えたああああああ!」
どこを向いても異性しか目につかない生活で、思った以上に、同性に飢えていたらしい。
生死を分ける緊急事態だろうとかまわらず「そうそう!この、骨ばってごつごつした体つきなあ!」とべたべたとお触り。
生前は男同士、スキンシップやプロレスをして、四六時中触れあっていたものだから、つい。
まあ、口裂け男が「俺、きれい?」と聞いたきり、口をつぐみ身動きしなかったせいもあるけど。
すっかり恐怖を念頭から失くし、彼がどんな心境でいるのかもかまわないで、お触りに没頭していたら、突然、腕をつかまれた。
「おおう、この力強さが男よ!」と嬉々としたと同時に、さすがに命の危機を覚えたものの、ゲームのように彼は、裂けた口を開いて俺の頭をぱくりとすることなく、引っぱって疾走。「
「へ?」と拍子抜けしたのもつかの間「キシャアアアアア!」と背後で口裂け女の絶叫。
俺を見つけて、遮二無二に口裂け女が追いかけるのを、口裂け男に腕を引かれて逃げるという。
「どういう状況?」と呆けているうちに、山道をぐるぐる走って、石碑のところにもどってくると、背後に口裂け女はいなく。
どうやら、巻いたらしい。
「口裂け男が助けてくれた?」と半信半疑に見上げると、腕を放して、顔をそらす彼。
恥じらっているように見えるに「あ、ありがとう・・・」と思わず、感謝すれば、すうっと闇に溶けて消えた。
で、その夜は死なないで、石碑の謎を解き明かして、また一歩前進し一件落着。
と思いきや、翌日の夜、家からでたら門のところで口裂け男が待機。
やはり、昨日のように襲ってこず、探索についてきて口裂け女の所在を知らせてくれたり、避けるルートを教えてくれたり、攻略法のヒントをくれたり。
ゲームには口裂け女だけではなく、その姉妹もご登場する。
とはいえ、遭遇すれば殺されるのに変わりはなく、助けっ人に「口裂け男」が出現すると聞いたこともない。
「隠しキャラなのかなあ」と思いつつ、黒い長髪で顔を隠しながら、猫背でついてくるのが見慣れてくると、愛らしい大型犬のよう。
初遭遇したときに、俺が恐がらずに、全面的に好意を示したのに絆され、懐いたのかもしれない。
なにはともあれ、あと二日。
口裂け男の助力で、口裂け女の呪いによる死を避けられるのかどうやら。
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いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
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一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
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