少年が田舎に来て丸くなる話。

物沖リタ

文字の大きさ
1 / 1

小学五年生、春

しおりを挟む
春になるといつも少し憂鬱になる。
きっと誰だってそうだろう。春なんてクソくらえなんて思ってた。少なくとも俺はそうだったし、今も少しはそう思ってたりもする。でも、今年からはちょっと違う春がくる。その春がとても楽しみなんだ。そう思いながら、桜並木を歩いていた。

キンコンカンコーン。
予鈴の音だ。俺は今年からこの美旗小学校の生徒だ。辺り一面を山に囲まれたこの小学校、全校児童約350人のこの名張市で二番目に大きな学校だ。校区は(おそらく)一番多く、遠い人は徒歩一時間かかる。そんなそこそこ田舎の学校に何故入ったか。それはただの親の転勤だった。ただ、親の単身赴任についてきただけなのだが、前の小学校にはいい思い出がないのでこうしてはるばる一時間半かけて大阪から名張市にやってきた。
今日が初めての学校なのだが、ここ、4月でも寒い。盆地だからなのかものすごく寒い。そうやって元々寒さに弱い俺は制服の半ズボンに少しイライラしながら初めて教室に入った。
五年生の教室は二階の一番奥。俺は二組なので最奥の教室だ。教室の目の前にはトイレがあって、廊下は少し寂れている。
「はじめまして、安藤楓です。よろしくお願いします。」
一息でそう言い音が裂けそうなくらいの拍手を浴びて自分の席に座った。こういう時はシンプルイズベスト。
席に座ると、後ろに座っていた上村春樹と浦陽太が話しかけてきた。何と言うか普通にそこいら辺にいるような野球坊主が浦で、上村は少し穏やかな印象を受けた。
隣には神嶋桜良。
クラスのマドンナ的な存在で神嶋に惚れているやつは多いらしい。誰に聞いたって?浦が言ってた。多分浦もその一人なんだろう。
取り敢えず、先生の話を聞きながらペン回しの練習でもしようと思う。どうせ今日は何も決めずに帰るから。
「えーっと、担任の五十嵐だ。よろしく。取り敢えず今日は教科書とノートだけ配って、終わろうと思う。
あと、明日の事だが明日は運動会の係などを決めようと思うので、考えておくように……」

「上村。ここって運動会が春にあるのか?」
「そうだよ。毎年運動会は春にあるね。でも、春だとね藤棚のところに毛虫が大量発生するんだよね。近寄らないように気をつけてね。」
「おう…まじか」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...