私たちは勇者じゃない!でもどうやって異世界に来たんだ!?

Thaiman

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パン!パン!パン!」
「誰か、隠してあった弾薬を取ってきてくれ!」
秘密捜査官の男女の叫び声が、セーフハウスの前の広い広場に響き渡った。
数十人の謎の黒装束の人物たちが包囲網を突破しようと必死に動き、銃を撃ち合いながら、遮蔽物の後ろに隠れた警察官たちと激しく応戦していた。
「私たちが守っているこの物品は一体何なんだ! なぜあいつらはあそこまで全力で奪いに来るんだ。小さな戦争みたいじゃないか!」
ホクトは二番目の家の横に身を隠して立っていた。彼女は、自分が国に持ち帰る責任を負った物品を奪いに来る敵の様子を、息を潜めて観察していた。
黒い服装の敵たちは暗闇に完全に溶け込んでおり、彼女は目を凝らして集中しなければならなかった。空気はかなり冷えていたはずなのに、汗が額に浮かび上がる。
銃声が途切れなく連続し、三棟の宿舎の窓ガラスがすべて粉々に砕け、ドアと壁に無数の穴が開いた。
彼女は、黒装束の男の一人が弾幕をものともせず突進してくるのを見た。何人かの隊員が撃ち止めようとしたが、男は驚くほど軽やかにすべての弾丸をかわした。
「何だあれ!」
ホクトはこの男に特に注目した。あたかも相手の動きを先読みしているかのように、攻撃を完璧に予測して回避する。男は空中で拳を振り、気圧の波を放ち、隊員たちを四方八方に吹き飛ばした。
「気を使えるのか……! 警察官が十数人も相手にならないなんて!」
黒装束の男──どうやらグループのリーダーらしいその能力は、部下たちに道を切り開き、徐々に包囲を狭めていた。秘密捜査官たちは完全に劣勢に陥り、三棟の宿舎にほぼ追い詰められようとしていた。
ホクトの顔は汗だくだった。劣勢を悟り、彼女は迷わず刀を鞘から抜き、黒装束の男が自分の隠れ位置に近づいた瞬間、横合いから全力で斬りかかった。しかし、わずかに外れた。男は先に気づいてかわしていた。
「そんなにかわせるのか!」
黒装束の男の目が大きく見開かれた。ホクトの速度に本気で驚いた様子だった。不意打ちにほぼやられそうになり、慌てて拳を空中で振り、力の波を放ってきた。ホクトは刀を構えて受け止め、数歩後ろに滑った。
「私にもできるわ!」
ホクトは毒づきながら体を回転させ、空中で刀を一閃。風の刃が男に向かって飛んだ。男は再び優雅にかわしたが、風の刃は後ろの巨大な木を二人がかりでも抱えきれない太い幹を真っ二つに切り裂き、倒した。
黒装束の男はホクトを睨みつけ、目を離さない。覆面の下から覗く目は激しい怒りに燃え、まるで血肉を食らいつくさんばかりだった。地面を強く蹴り、周辺を一切無視してホクトに突進した。
ホクトは刀をまっすぐに突き出した。しかし相手はタイミングを完璧に読み、わずかに左へ体をずらしてかわした。そして180度回転し、右腕の後ろ側で全力の裏拳を──目標は後ろ首の付け根。
黒装束の男の目がさらに見開かれた。ホクトが左手に持っていた刀の鞘を後ろ首に当てて、自分の全力の裏拳を防いだとは思わなかったのだ。両者はそれぞれ反対側に飛び退き、再び向き合った。そして互いに全力を込めて突進した。
「あれは本部の事務室で働いている子じゃないか、警部!」
「そうだ! 剣の技が恐ろしく冴えている。盗賊の頭目と互角に渡り合っているぞ!」
松田警部ともう一人の警察官は、二人の死闘を息を飲んで見守っていた。拳と刀が激しくぶつかり合い、速度も技量も完全に互角だった。
ホクトが黒装束のリーダーと互角に戦えるようになると、彼女の側が態勢を立て直し、敵の部下たちは動揺し始めた。状況が一気に逆転した。
男も状況を理解したようだった。黒装束の男は拳を地面に叩きつけ、土煙を舞い上がらせた。ホクトは刀を船のプロペラのように高速回転させ、飛んでくる石片をすべて弾き返した。
口笛のような鋭い音が響いた。煙が晴れたとき、黒装束の男とその部下たちの姿は完全に消えていた。
「逃げたのか……!」
ホクトは空になった広場を呆然と見つめ、荒い息を整えながら刀を鞘に収めた。
「おお、最高だ! まさかお前があそこまで強いなんて思わなかったぞ、ホクト!」
松田警部が笑顔で駆け寄ってきたが、ホクトは喜びの色を見せなかった。彼女は周囲の制服外の警察官たちを見た──痛みにうめく者、銃で撃たれた者、刃物で斬られた者……。
隊員たちが現場を確保し、負傷者を運び出した。作戦責任者がホクトに深く頭を下げて感謝を述べた。
彼女はようやく理解した。なぜ急いで物品を移動させなかったのか。ここはミャンマーの領土内。助けを呼べない。しかも敵の技量は想像以上だった。移動中に待ち伏せされたら、確実に全滅だっただろう。
「これからどうしますか、警部?」
「すでに次の計画がある。明日朝に伝える」
灼熱の正午、森の中を国境へ向かう長い線路が伸びていた。作戦責任者は計画を変更し、物品を鉄道で運ぶことにした。機関車の重い音が響き、目標の駅に向かって列車はゆっくりと動き出した。
列車は前方の大きなカーブに差し掛かり、速度を落とした。重い貨物を積んだ貨車のため、速度を出しすぎると脱線の危険があった。
両側は鬱蒼とした木々が密集し、5両以上の車両に日本の警察庁捜査官たちが隠れて配置されていた。
その日、ホクトは白い長袖シャツの袖をまくり、青い長ジーンズ、動きやすい黒いスニーカーを履いていた。
「この物品は一体何なんだろう……」
ホクトは機関車に一番近い1両目の座席に一人で座り、窓の外をぼんやり見つめながら、小声で何度もつぶやいた。守っている物品が何なのか、任務の真実が何なのかを。
他の車両に配置された捜査官たちは全員、武器をフル装備し、いつ何が起きても対応できる態勢を整えていた。
列車がカーブに速度を落とした瞬間──突然、顔を完全に覆った布を被った30人ほどの男たちが、各車両に飛び乗ってきた。彼らは日本の警察官たちと激しく武器を奪い合い、銃声が森全体に響き渡った。
「敵だ! 敵襲!」
最後尾から叫び声が上がり、次々と前方の車両へと連鎖した。戦闘は一瞬で激化した。
ホクトの白いシャツは汗でびしょ濡れになっていた。彼女は9mmの拳銃を抜き、守るべき列車に侵入した敵に向かって走り出した。しかし三歩しか進まないうちに、一つの影が立ちはだかった。
「また会ったな、美人さん!」
昨夜彼女と激しくぶつかり合ったあの黒装束の男が、道を塞いで立っていた。またしてもこのグループが謎の物品を奪いに来たのだ。
女性捜査官は無言で拳銃を連射したが、男は森の猿のように素早く、すべて紙一重でかわした。弾倉が空になるまで撃ち続けると、男は素早くドアの縁に掴まり、体を回転させて屋根に上がった。
「この厄介な野郎……今度こそ決着をつけてやる!」
ホクトの怒りが爆発した。今回は追いかけず、ドアの縁を掴んで自分も屋根に飛び上がった。
「へえ、なかなかやるじゃないか。さあ、物品を渡してくれよ。そうすれば全部終わりにしてやる」
男は嘲るような笑みを浮かべ、まるで遊びのように言った。
二人は無言で対峙した。ホクトは空の拳銃を捨て、背中に背負っていた日本刀を抜いた。
即座に刀を振り下ろしたが、男は完璧にかわし、拳を反撃してきた。ホクトは刀の峰で拳を弾いた。
男が高速で接近し、至近距離で右足をホクトの脇腹に蹴り込んだ。しかし彼女は刀の鞘で防ぎきった。男は左足だけで体を浮かせ、右足を蹴ったまま胸の中心を強烈に蹴り飛ばした。
体が屋根から落ちかけた瞬間、ホクトは刀を屋根に深く突き刺し、それを支点に回転。反撃の蹴りを男に叩き込み、黒装束の男を仰向けに吹き飛ばした。
「ただで攻撃されるわけないわ!」
「この生意気な女め!」
男が素早く立ち上がるより早く、ホクトは刀を引き抜き、気を集中させて空中を一閃──気刃が男に向かって飛んだ。
男は後ろに跳んでかわしたが、気刃は屋根に長い斬撃の跡を残し、車両を貫通した。
ホクトは気刃を次々と放ち、男を追い詰めていく。男は驚異的な敏捷さで全てをかわし続け、ついに機関車まで後退した。
列車が走行中だったため、屋根の上での戦いは極めて不安定だった。
しかし武器を持つホクトが明らかに有利だった。彼女は男を機関車まで追い詰め、もう逃げ場を失わせた。
「追い詰めた。もう逃げられない。素直に捕まれ」
「捕まえられるものなら捕まえてみろよ!」
男はクスクスと笑い、両手を広げて挑戦的に構えた。
ホクトは激昂し、全身の力を集中させて全力突進──刀を突き出した。しかし男は信じられない速度で体をひねり、紙一重でかわした。
その勢いのまま、ホクトはバランスを崩し、機関車の前に落ちかけた。
だが彼女は一人で死ぬことを拒否した。最後の力を振り絞り、至近距離にいた男の襟を掴み、力いっぱい引きずり落とした。
二人の体が同時に宙を舞って落ちた。男の顔を覆っていた布が外れ──本当の姿が露わになった。
20歳くらいの、可愛らしい顔立ちの少女。大きな丸い瞳、短く整った髪。
ホクトの髪が風に乱れ、鷹のような鋭い目が恐怖に震えた。最後の瞬間への恐怖だった。
二人は同時に大声で叫んだ。その叫び声に、戦っていた部下たち全員が一瞬で動きを止め、そちらを振り返った。
二人の少女が線路に落ちる──その直後、列車が二人の体を通過した。
列車上の全員が急いで最後尾に駆け寄り、さっきの二人が轢かれたはずの恐ろしい光景を見ようとした。
しかし……そこには何もなかった。
血の一滴さえ、赤い染み一つさえ、線路にもプラットフォームにも残っていなかった。
運転士は緊急停止を決断した。侵入者たちは全員がリーダーの死を信じ、抵抗をやめて降伏した。
残った警察官たちは車両の周囲を必死に捜索したが、二人の少女の姿はどこにも見つからなかった。
全員が呆然とし、どうやって二人が消えたのか、ただただ困惑するばかりだった──。
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