時刻探偵事務所へようこそ!

椎名憂希

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人喰い桜

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 ハッと居住まいを正して、時政さんがいない今、この人を迎え入れるべきか否かをここで見極めようと向かい合う。


「はじめまして、かがりさん。僕は倉橋忠行といいま……ん? あれ? 今、名前……」

「もちろん知ってるよう。倉橋忠行クン──檜垣高校に通ううら若き一年生で、現在一人暮らしの苦学生。五月半ばから土御門時政が運営する私立探偵事務所にてアルバイトを始める。探偵業法により探偵業務そのものに未成年者が関わることは違法とされているので、んー……業務内容としては探偵補助や事務処理、その他雑用ってところかにゃ? もしかしてお料理が得意だったりする?」


 おいしそーだねェ、なんて僕作の簡素な花見弁当を指しケラケラ笑う男にヒエェッと震え上がる。なんてことだ。個人情報が遠慮容赦なく暴かれている。時政さんに初めて声を掛けられた時よりこわい。
 まったく、時政さんといいこの男といい、他人のプライベートをなんだと思っているのか。


「ねーねー、この玉子焼きもらっていーい?」

「えっ。あ、はい、どうぞ……」


 とっ散らかった話題のまま、求められるままにまだ封の切られていなかった割り箸と余りの紙皿を男──かがりさんへと献上する。気分としては、未知なる野生動物の観察だ。そして、未知の野生動物ことかがりさんは時政さんが座っていた空きスペースへと腰を下ろすと、近くにあった御神酒を手にして「あ~、ナルホド」だとか頷きながら軽く中身を揺らした。
 ──ハッ、しまった! 相席までがナチュラルすぎて、僕までうっかりこの状況を受け入れてしまっていた。


「ん、おいしい! ユキちゃんは料理上手さんなんだねえ」

「あ、ありがとうございます……いやユキちゃんってなんですか」

「タダユキだからユキちゃん! カワイーでしょ? ちなみに時政クンのことはマサくんね。……だめ?」

「や、別にダメではないですけど……マサくん……」


 なんともいえない心地で笑う。薄々気付いてはいたが、この不知火篝という男、距離の詰め方が独特すぎる。パーソナルスペースが存在しないのか、或いは極端に狭いのか。平然と身をにじり寄せてくるし、話題は突拍子もないし。
 だけど、どうしてだろう。不審だとは思うけれど、不思議と不快感はないのだ。少なくとも時政さんの知り合いであると身元判明しているからだろうか。


「ふんふん。ふーむ。なるほどねぇ」

「? かがりさん?」

「……うん、似てるっちゃー似てる? ──アッハ。嘘。ぜーんぜん、似てない」


 ふと、僕を見つめたかと思うと──誰かさんによく似て、その目は髪に隠されてちっとも見えないけれど──これまた誰かさんソックリな笑い方をしながらコテリと首を倒す男に呆気に取られる。今この瞬間に、一体僕の何を計られたのだろうか。ああもう、挙動の予測がつかない!


「なんだってマサくんはこんな、平々凡々、超平凡な子に目を掛けてるのかねえ」

「……平凡で悪かったですね。大体、声を掛けてきたのは時政さんですよ」


 かがりさんの、悪意はなくともあんまりな言いざまに思わずムッと小鼻を膨らませた。すると、一拍──かがりさんは金平ごぼうを箸先で摘んだ状態のまま器用に固まった。彼の大きく口を開いてこちらを凝視するさまは、まさにお手本のようなあんぐり顔だった。──え、なに? どういう反応なんだ、それは。


「きみがクライアントだったとか、土御門になにかしらのツテがあったとかではなく? もしくはのっぴきならない事情でマサくん預かりになったとか、自分で制御できないなんかヤバい力があるとか」

「まったく無いですね」

「……なんの縁もなく、唐突にマサくんの方からスカウトしてきたと?」

「あれってスカウトになるのかなぁ……。まぁ、はい、道すがらにうちでバイトしてみない? みたいなかんじで……」
 
「不審者じゃないか!!」

「どこからどう見ても不審者でしたね」


 思いのほか心地好くポンポンと進む会話に「おや?」と認識を改める。もしかしてこの人、見た目はこんなだけど実はすっごく取っ付きやすい人だったりする?


「そんな話によくもまぁホイホイと……きみ、防犯意識しっかり持ってる? オニーサンが詐欺について特別講習開こうか?」

「いや、不審者丸出しのかがりさんが言えたことではないと思うんですけど」

「あっ、意外と生意気。いーねェ、うんうん。これも若さってやつよネ」


 だとか。どことなく気の抜ける会話を交わす間にもかがりさんの手には当然のように時政さんのお猪口が取られていて、その人は自由気ままに御神酒で晩酌を始めている。うーん、やっぱり変な人だ。だけど、きっと悪い人ではない。そんな気がする。
 だって、かがりさんは時政さんと同じく〝彼女〟の為にここまで『花見』をしにきたのだから。怪異を識る人──だから、大丈夫。


「食のツマミはこれで百点満点として──なら次は話のツマミがほしいところなんだけど、そこんとこどーお? ユキちゃん」

「……え、と?」

「つーまーり、ユキちゃんとマサくんのドキドキわくわく馴れ初め話がオニーサンはもっと聞きたいんだけどなァ?」


 ふわん。近付いてきた野性味のある顔から酒香がかおる。なるほど、厄介な酔っ払いだ。こうなっては時政さんが帰ってくるまで適当にあしらうしかないと、まだほんの数ヶ月前なのに随分と昔の出来事な気がする佐竹失踪事件について掻い摘んだ説明をする。と。


「……………………うっそぉ……」


 あんぐり顔、パートツーを寄越された。どうにも、かがりさんの知る時政さんと僕の知る時政さんは印象が違うらしかった。


「待って待って、整理させて。つまり、事務所でバイト募集をしてた訳でもないのにある日突然通りがかりにマサくんが金欠に喘ぐきみへとアルバイトを持ち掛けてきて、その縁からお友達探しを手伝ってもらって、しかも報酬は受け取らずって──ねえそれほんとにマサくんの話? ぼくみたいに見た目ソックリさんなだけの同姓同名だったりしない?」

「仮にそうだとして、かがりさんソックリな不審者ルックかつ名前が土御門時政とかいう厳つさで、若くして私立探偵事務所を経営してる人間がこの世にもう一人いるって事実の方がこわくないですか?」

「……こわいね」

「でしょ」


 真面目な顔で沁々頷くかがりさんに小さく吹き出す。ここまで会話してみてわかったことだが、どうやらかがりさんは自分が不審に見られる見た目である自覚がしっかりバッチリあるらしい。それならなんだってそんな格好を……いやそれをいうなら時政さんも同じか。ということは、かがりさんにもなにかしらの事情があるのだろうか。


「でも信じらんないよォ~誰ソレ~……ぼくの知ってるマサくんならまず必要のない他人に自分から話し掛けるわけがないし、施しに対して対価をもらわない事がどれほどまずいかくらいわかってるはずなのに……聞けば聞くほどうちのマサくんじゃないんだけど」

「かがりさんの前での時政さんって、そういうかんじなんですか?」

「ぼくの前っていうか………………あー……この子の前での時政が特別なんだろうな、これ」


 ぽそりと低く呟かれた言葉はどうやら独り言だったらしく、最後辺り聞き取れなかった僕に、しかしかがりさんは気にするなとジェスチャーするとそのままレジャーシートいっぱいに寝転んだ。と、いうか脱力して倒れ込んだ。そして、目の前で舞う桜の花弁をウザったそうに片手で払うと、ゔーんと鼻を鳴らすようにして唸った。


「なるほどねぇ……。──おかしいのはマサくんの方だったわけか」


 ──よく、わからない。この人と時政さんは一体どんな関係にあるのだろう。
 かがりさんが語る時政さんの像はなんだか妙に幼い気がするし、だけど僕が見てきた時政さんだって嘘なわけではないし。


「あの……聞いてもいいですか? かがりさんと時政さんってどういう──」

「あ? なんでテメェがいんだよ。かがり」


 そこに、噂をすれば影だ。話題の人がコンビニ袋を提げながら木と木の合間からひょっこり顔を覗かせていた。途端、空気が緩む。とてつもない安堵感に包まれる。思わず腰だって中途半端に浮き上がってしまう。


「おかえりなさい、時政さん!」

「もーぅ、マサくんったら、こんなところにこんな子ひとり残してどこ行ってたのさぁ」


 カラカラ笑うかがりさんは相変わらず大きな敷物と化していたが、そんな彼にも時政さんはまったく気に留めず──ああいや、わざとかがりさんの顔へと戦利品の詰まった袋を落として一息ついた。


「大丈夫だろ。気に入られてたし」

「そーね、気に入られすぎてツマミ食いされかけてたよン。この〝女〟の強欲さをナメちゃだめだって」


 袋を退けて。かがりさんが上半身を起こすことでどうにかもう一人分のスペースを作るが、なにぶん成人男性二人に高校生一人だ。お弁当もすっかり広げられている為にレジャーシートの上は随分と賑やかになっていた。
 なにより、かがりさんの常時酔っているみたいなフラフラした声色がより宴会らしさを演出していた。


「わ、見てみてユキちゃん。リンゴジュースにオレンジジュースにサイダー……あ、ミルクティーもあるよ~。好きなの取り放題だねえ。ユキちゃんはどれが好き? ぼくはねー……」

「それは子供用だ。ガキから横取りすんなバカ。お前はおとなしく酒でも飲んでろ」


 お弁当の横にカラフルな缶ジュースを並べ出すかがりさんへと時政さんの呆れた声が降って落ちる。それにかがりさんもべろべろに伸びたパーカーの袖で応戦している。ぺちんぺちん。実に間抜けな音だ。
 いい歳してじゃれつく二つのもっさり頭を、近くにあったオレンジジュースを舐めながら眺めていると、なんともいえない、妙に腹から笑い飛ばしたい気持ちになった。可笑しな光景だ。時政さんの素顔はともかく、姿形だけはソックリな二人なのだから。
 それから──そうだ。対等、てかんじがする。
 僕を相手にしている時の時政さんからは年上としての雰囲気が先立つけれど、かがりさんと話してる時政さんはやっぱりどことなく幼く見える気がするのである。新鮮だ。


「……あん? んだよ」

「どーしたの、ユキちゃん」


 ふと、笑いを堪える僕へときょとりと同じ顔が同じタイミングで向く。ので。


「ンッ、くふふっ……いーえ、なんでも。酔っ払いが二人いるなぁ、て思っただけです」

「コイツはともかく俺はまだ酔ってねぇよ」

「ぼくだって酔ってないでーす!」

「酔っ払いはみんなそう言うんですよ」


 主張まで同じ双子みたいな二人にとうとう声を上げて笑った。そんな僕に時政さんは肩を竦め、かがりさんはグレープジュースを取って一人で乾杯の音頭を取っている。存外、穏やかな時間だった。
 この雰囲気なら聞けるかもしれない。一度は機を逃してしまったけれど、やっぱり気になるものは気になる。──僕の知らないあなただって、これから知っていきたいんだ。


「時政さんとかがりさんって、どういう関係なんですか?」


 割り箸を二膳しか用意しなかった為に、かがりさんと共有で使用していた時政さんが小料理を摘む手を止めて、ほんの少し沈黙する。そんな時政さんの様子に、もしかして言いたくないことだったのかな……そう心が一瞬ヒヤリとするが、やがて時政さんは気まずそうに躊躇しながらも答えてくれた。


「──ただの腐れ縁だ。ガキの頃からの」

「そうそう。こう見えてマサくんのお目付け役なのよ、ぼく。ま、歳の近いオニーチャンみたいなモンよね」

「誰が兄だ、誰が」


 お目付け役。現代日本の日常生活において、まず聞くことのない単語だ。
 時政さんはもう大人なのに、そんな時政さんにお目付け役って? どうにも想像がつかなくて頭を捻らせる。


「あとは、先輩後輩? あ、もちろんぼくが先輩ね。ぼくたち中学校からずーっと一緒の仲良し小好しなのよ~」

「気持ちわりーこと言うな。腐れ縁だ、つってんだろ」

「とか言いながらあれやこれやとぼくのコトいいように使うくせにィ。あーあ、昔はあんなに素直でかわいかったのになあ。……いやウソ、マサくんがかわいかったことなんか一度もねーや」

「俺だってテメェなんぞに可愛がられた覚えはねーよ。寒い冗談でせっかくのメシをまずくすんな」


 一見は辛辣なやり取りだ。だがしかし二人の口調は軽やかで、表情もまた気の置けない者同士だからこそといった信頼が上がった口角から滲み出ていた。ようは、彼等はここまで言い合っても喧嘩しない程の仲なのだ。もしかすると、僕にとっての佐竹に近いだろうか。
 これは見せ付けられちゃったな、と含んで笑いながら双子じみた二人への質疑応答を続ける。


「えーと、それで……結局、見た目のソレは敢えてのお揃いなんですか? てことはかがりさんも変装だったり?」

「いや、こいつのはただの怠慢だ。俺がかがりをモデルにしてることは確かだが」

「マサくん、ほんとは髪もストレートだからね。あ、ぼくのはホンモノよ~。天パ、触ってみる?」


 言いざま、ぐらっと頭を僕の胸元まで倒してきたかがりさんにワァッと大袈裟に驚いてみせる。横で、お前それ……新手のセクハラだぞ……なんて無駄に常識人ぶっている時政さんに意味もなく窺いの眼差しを向けてから、遠慮なく目の前のもじゃっとした黒髪へと指を差し入れた。あっ、意外とサラサラだ。そして普通に清潔だ。なんだろう、この謎の敗北感。


「わひゃひゃっ、ユキちゃんはマサくんとちがって素直なイイコだねえ」


 ついでとばかりにかがりさんの髪に絡まっていた何枚かの桜の花弁を取り除くと、やっぱり変な調子の礼の言葉と共に今度はかがりさんに頭を撫でられた。この歳にもなって、時政さん以外に僕をそんなふうにして甘やかす大人は僕の周りにはいなかったので、なんだか心がくすぐったくなる。あ、僕の頭からも桜が落ちてきた。つられて、真上を見上げる。
 こうして落ち着いてみれば、かの狂い咲き桜をじっくり眺める度胸も時政さんの帰還と共に僕の元へと戻ってきたようだ。もう怖くない。時政さんと、そしてかがりさんが傍にいてくれるのなら。
 再び彼女が白い手を僕へと差し出してきたとしても、きっと僕は。その手を。


「……きれいですね、桜」


 時政さんが口を付けた物なのだか、かがりさんの物なのだか、最早所有者も不明になっているお猪口のその中、清酒にふわりと浮かぶ桜色の薫りにほうと息をつく。
 ──楽しんでくれているだろうか。花見の出席者はたった三人だけれど。それでもきっと、二人きりの宴会よりはマシだ。
 優雅なあなたは、自分の膝の上で酒を飲み交わす男達に満足してくれただろうか。
 気付けば、花弁は弁当の中にも所々に彩りを添えていて、愛らしい主張に指で摘んでは風の中へと色を戻していく。

 ああ、ほら、視える────────彼女の手が。
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