22 / 39
手を打つ必要がある
しおりを挟む
「あああああ。しまったなぁ」
どうやら体の要の部分にまで傷を負っていたらしく、その影響で力の源である秘宝が飛び出してしまったようだ。
すぐに処置をすれば飛び散ることはなかったのだが、久々の事でうっかりしていたのは否めない
あれらがなければ、凄く困る。
あれは生命エネルギーだ。
ラルは使命どころか、日常生活をすることさえ出来なくなった。
「どうしよう。回収しに行くのもこの姿では……」
自身の手を見つめる。大きく骨ぼったいごつごつした皺皺の手だ。
「王ーーー!! ご無事ですかーー!!」
途方にくれていると、青年が息を切らせてやってきた。
ゆったりしたローブを盛大にはためかせ、金色に輝く剣を持ち、全速力で駆け寄ってくる。
目が細いが精悍な顔つきが焦りと不安に染まっていた。
側近であり自らの片腕である青年が、今、追い付いた。
神の守護として群を抜いた才能を持つ彼の力であっても、幻獣を抑え込むことが出来なかった。
本当に、11番目の力になっていたかもしれない。とラルは思う。
でもすぐ否定する。
奇跡が起こればというレベルだからだ。
駆け寄ってきた青年に呼びかけるラル。
「グラン。不味い事になった」
「王! 光が流れましたが、何か起こりま…………そのお姿は!?」
グランはこれ以上ないほど口を大きくあけてラルを凝視した。
立派な衣服はボロボロで、胸に穴が空いているばかりか、幼い少年だったラルの姿は70歳くらいの老人になっていた。
グランはショックで顔を青ざめ、その場にへなへなと崩れ落ちる。
「私が、護る役目を、担っていた。のに……まもれて、ない。なんたる失態を……」
しわしわの爺になった当の本人よりもダメージが大きいようなので、ラルは慌てて弁解をした。
「いや、実はね。獣を封印できたんだけど、ちょっとミスって秘宝が世界中に飛び散っちゃったみたいなんだ」
「なななな! なんと!? それでお身体は…………あなが! 胸に、穴が!! 傷が!! 主様、ラル様の肌に傷がっていうか貫通してるううううう!!!?」
グランは慌てて駆け寄り、ラルの穴があいた部分に手を添えた。穴は肉体を深々と傷つけているばかりか、ラルの最も重要な、要の部分に傷を負ったと気づいた。
顔面蒼白になるグランに対して、ラルは軽い口調で
「生存に問題はないけどね」
しれっと答えるが、グランはガタガタガタと震え始める。
「自分の不始末です!!!!」
グランは半狂乱のように叫び、二メートル強という大柄の体で、か細くなった老人を抱きしめ泣き叫ぶ。
「おいたわしやーーっ! ラルさまあああああああ!!!」
「グラン、苦しい。やめて。傷広がる」
「も、申し訳御座いません!!」
慌てて離れると、グランは直ぐにラルに深々と頭を下げる。
ラルはやれやれと苦笑いを浮かべた。
「グランの言うとおり、このままだとちょっと困るから、僕はこれから秘宝を捜しに人間世界に行こうと思う」
「なりません! 王は人間界を全く知らないでしょう! 不安です! 心配です! 私が回収しに向かいますから。どうか、安静にしてください。ご自分の体を労わって下さい」
涙目で訴えられたが、ラルは困ったようにため息を吐いた。
「けどねぇ、僕の今の力じゃ、何にも役に立たないし。グランには別のことを頼みたいんだ。凄く、重要な事」
「な、なんでございましょう!」
「僕の留守中に10の力の均衡を保っていて欲しい。これは僕の次に位の高い、グランにしか頼めないんだ。やって、くれるかな? 世界の……僕のために」
「王のために」
「そう」
「私にしか、できない。王の勅命」
青年はじ~んと感動し、感嘆の息を吐く。
「そ、そこまで私を信用してくださるとは。わかりました!」
グランはドンと胸を張って高々に答える。
「このグラン、そのお役目を心してやらせて頂きます! 命に代えましても、必ずややり遂げます!!!」
深々と敬礼をしつつラルに頭を下げる。
どうやら体の要の部分にまで傷を負っていたらしく、その影響で力の源である秘宝が飛び出してしまったようだ。
すぐに処置をすれば飛び散ることはなかったのだが、久々の事でうっかりしていたのは否めない
あれらがなければ、凄く困る。
あれは生命エネルギーだ。
ラルは使命どころか、日常生活をすることさえ出来なくなった。
「どうしよう。回収しに行くのもこの姿では……」
自身の手を見つめる。大きく骨ぼったいごつごつした皺皺の手だ。
「王ーーー!! ご無事ですかーー!!」
途方にくれていると、青年が息を切らせてやってきた。
ゆったりしたローブを盛大にはためかせ、金色に輝く剣を持ち、全速力で駆け寄ってくる。
目が細いが精悍な顔つきが焦りと不安に染まっていた。
側近であり自らの片腕である青年が、今、追い付いた。
神の守護として群を抜いた才能を持つ彼の力であっても、幻獣を抑え込むことが出来なかった。
本当に、11番目の力になっていたかもしれない。とラルは思う。
でもすぐ否定する。
奇跡が起こればというレベルだからだ。
駆け寄ってきた青年に呼びかけるラル。
「グラン。不味い事になった」
「王! 光が流れましたが、何か起こりま…………そのお姿は!?」
グランはこれ以上ないほど口を大きくあけてラルを凝視した。
立派な衣服はボロボロで、胸に穴が空いているばかりか、幼い少年だったラルの姿は70歳くらいの老人になっていた。
グランはショックで顔を青ざめ、その場にへなへなと崩れ落ちる。
「私が、護る役目を、担っていた。のに……まもれて、ない。なんたる失態を……」
しわしわの爺になった当の本人よりもダメージが大きいようなので、ラルは慌てて弁解をした。
「いや、実はね。獣を封印できたんだけど、ちょっとミスって秘宝が世界中に飛び散っちゃったみたいなんだ」
「なななな! なんと!? それでお身体は…………あなが! 胸に、穴が!! 傷が!! 主様、ラル様の肌に傷がっていうか貫通してるううううう!!!?」
グランは慌てて駆け寄り、ラルの穴があいた部分に手を添えた。穴は肉体を深々と傷つけているばかりか、ラルの最も重要な、要の部分に傷を負ったと気づいた。
顔面蒼白になるグランに対して、ラルは軽い口調で
「生存に問題はないけどね」
しれっと答えるが、グランはガタガタガタと震え始める。
「自分の不始末です!!!!」
グランは半狂乱のように叫び、二メートル強という大柄の体で、か細くなった老人を抱きしめ泣き叫ぶ。
「おいたわしやーーっ! ラルさまあああああああ!!!」
「グラン、苦しい。やめて。傷広がる」
「も、申し訳御座いません!!」
慌てて離れると、グランは直ぐにラルに深々と頭を下げる。
ラルはやれやれと苦笑いを浮かべた。
「グランの言うとおり、このままだとちょっと困るから、僕はこれから秘宝を捜しに人間世界に行こうと思う」
「なりません! 王は人間界を全く知らないでしょう! 不安です! 心配です! 私が回収しに向かいますから。どうか、安静にしてください。ご自分の体を労わって下さい」
涙目で訴えられたが、ラルは困ったようにため息を吐いた。
「けどねぇ、僕の今の力じゃ、何にも役に立たないし。グランには別のことを頼みたいんだ。凄く、重要な事」
「な、なんでございましょう!」
「僕の留守中に10の力の均衡を保っていて欲しい。これは僕の次に位の高い、グランにしか頼めないんだ。やって、くれるかな? 世界の……僕のために」
「王のために」
「そう」
「私にしか、できない。王の勅命」
青年はじ~んと感動し、感嘆の息を吐く。
「そ、そこまで私を信用してくださるとは。わかりました!」
グランはドンと胸を張って高々に答える。
「このグラン、そのお役目を心してやらせて頂きます! 命に代えましても、必ずややり遂げます!!!」
深々と敬礼をしつつラルに頭を下げる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる