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危機一髪
しおりを挟む光が交差する洞窟の入り口で、本来の姿に戻ったセルジオとマークは、困り果てた顔でお互いを見合っていた。
「マーク。王はどこへ行ったのだ?」
「私も散々お尋ねしたのだが、すぐ戻ると行ったきりだ」
「ここで待っているように言われたが、いったいどこへ」
二人は同時にため息をはく。
「私はグラン様に早く報告をしたいのだけど」
「それは私とて同じ事。一体王は何処へ?」
「ううむ。このままここへ立っていていいものか。グラン様が気づくのでは?」
セルジオの意見にマークは顔を真っ青に変えた。
「ううう。その通りだ。どこか場所を移動するべきか……」
「しかし、王にはここで待っているように指示が」
「しかし、グラン様に気づかれて。もし王が一緒でない事を知ると、どれだけのお怒りを受けるか」
「……」
二人は真っ青な顔になって口をつぐんだ。
今は王が単独行動中である。これがばれたらどうなるのかと、身震いしているときだ。
「聞こえたぞお前達」
後から陰険な声がかかった。声だけで誰か解る。
二人は顔面蒼白で飛びあがり、バッと後ろを振り返りながら上司の名を呼んだ。
「「グ、グラン様!!」」
縮み上がりつつも、二人はグランに跪く。
「王はどこだ。説明してもらおうか?」
彼は怒りの影を背負いながら周囲に雷を鳴らした。
「お前たちが戻ってきているという事は、王もお戻りになったということだろう? 王はどこだ?」
「そ、それが……」
「王は」
マークとセルジオが顔をあげて説明しようとして、ヒュッと息を飲んだ。
「王は、どこだ?」
グランの目がマジだ。
全く余裕がなく、下手に答えようものなら、電撃で骨の髄まで焦がされる。
旅を終えた早々死にたくないと思うが、どう説明していいのか分からない。だって王が何の目的で単独行動を起こしたのか、理由が思い浮かばないのだ。
「おおお、お、王は、1人で、い、いま、席を外し……」
「私達、は、ここで待つように、指示をうけ……」
ガタガタと震えながらマークとセルジオは声を震わせる。
睨みつけつつ二人を見下ろしながら、グランは「はぁ」とため息をついて髪を掻き上げた。
「「お許しください!!!」」
マークとセルジオが土下座を行うと、グランの目に潜む怒りが激しく燃え上がり、ピカピカピカと雷が落ち始める。
「この無能めが。俺の怒りをくらうがいい」
グランが無慈悲に怒りを部下にぶつけようとしたときだ。
「ごめんごめん。ただ今戻りました~~」
のほほんとした声が洞窟の奥からやってきて、ご機嫌なラルが姿を見せる。
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