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『裏路地に現れる狼男を退治してほしい』
第1話
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『裏路地に現れる狼男を退治してほしい』
馴染みの便利屋ギルドにあった依頼書を見て、私は固まった。
「あ~その依頼ね。怖いよね街に狼男なんて」
後ろから飛んできた友人の声に私は肩を震わせる。そんなことお構い無しと声は続けた。
「天下の帝都で魔獣騒ぎなんて世も末だよ全く」
「そっそうだね」
未だバクバクと鳴り響く心臓に静まれって念を送りながら振り向いて返事を返す。
「とっときゅに人狼は入り込むと厄介だもんね」
噛んだ
「ぷっアハハハ!ルルカってばびっくりし過ぎ!!」
そんな私の様子を見た、金髪のソードマンは吹き出した。
「今からそんなんじゃ心臓もたないよ!」
「いっ今からって」
友人の爆笑に私は聞き返した。
「今日何かあったっけ?」
「ん?その依頼受けるんじゃないの?」
少女は不思議そうな顔で、私が見ていた依頼書を指差す。
「てっきり内容確認してたんだと思ったんだけど」
「あぁ、いや……」
依頼書の前で固まってたら確かにそう見えても仕方なかったかもしれない。と思い立って体を半身にして彼女の前からどかす。
「私はいいや、セナに譲るよ」
「あ、いいの?じゃありがたく」
そう言ってセナは張り出された依頼書を破り取った。
「……あとで山分けとか言わないでね?」
「そんなこと言ったらマスターにしばき回されるよ」
アホほど失礼な友人に思わず叫んだ。
「参加してもいない依頼の取り分を貰おうなんて考えるか!」
「いやぁルルカのことだからさ」
「どう見てんの私のこと!!」
追撃を放ってくる友人の頭をはたこうとすれば手甲のついた腕に阻まれる。そのまま流れでがっぷりと両手をそれぞれ組み合い押し合う。
ふと、何やってんだというように、どっちともなく笑い出した。
「明日は満月か・・・」
周囲を警戒しながら、上り始めた月を見上げて独り言ちる。
あのあと、薬草採集の依頼を受けた私は、一人で森の中にいた。
数日かけて必要数の薬草を集め終えて、今は帰り道の途中。
この場所は帝都から少し離れていて、歩いていくと半日はかかる。
つまり朝から歩いていても、帰るころには夕方。
私としてはあまり良くない時間帯だ。
・・・月が降り始めるころに出れば、昼前には門に着くかな。
「そうと決まれば!」
意識的に声に出し、気合を入れて横になる。
月が降り始めるまで、少し仮眠を取ろう。
夜中に起きるなら、私なら危険はすぐに気付くだろうし。
マズルの中を通る土の匂いを感じながら、私は意識を落としていった
馴染みの便利屋ギルドにあった依頼書を見て、私は固まった。
「あ~その依頼ね。怖いよね街に狼男なんて」
後ろから飛んできた友人の声に私は肩を震わせる。そんなことお構い無しと声は続けた。
「天下の帝都で魔獣騒ぎなんて世も末だよ全く」
「そっそうだね」
未だバクバクと鳴り響く心臓に静まれって念を送りながら振り向いて返事を返す。
「とっときゅに人狼は入り込むと厄介だもんね」
噛んだ
「ぷっアハハハ!ルルカってばびっくりし過ぎ!!」
そんな私の様子を見た、金髪のソードマンは吹き出した。
「今からそんなんじゃ心臓もたないよ!」
「いっ今からって」
友人の爆笑に私は聞き返した。
「今日何かあったっけ?」
「ん?その依頼受けるんじゃないの?」
少女は不思議そうな顔で、私が見ていた依頼書を指差す。
「てっきり内容確認してたんだと思ったんだけど」
「あぁ、いや……」
依頼書の前で固まってたら確かにそう見えても仕方なかったかもしれない。と思い立って体を半身にして彼女の前からどかす。
「私はいいや、セナに譲るよ」
「あ、いいの?じゃありがたく」
そう言ってセナは張り出された依頼書を破り取った。
「……あとで山分けとか言わないでね?」
「そんなこと言ったらマスターにしばき回されるよ」
アホほど失礼な友人に思わず叫んだ。
「参加してもいない依頼の取り分を貰おうなんて考えるか!」
「いやぁルルカのことだからさ」
「どう見てんの私のこと!!」
追撃を放ってくる友人の頭をはたこうとすれば手甲のついた腕に阻まれる。そのまま流れでがっぷりと両手をそれぞれ組み合い押し合う。
ふと、何やってんだというように、どっちともなく笑い出した。
「明日は満月か・・・」
周囲を警戒しながら、上り始めた月を見上げて独り言ちる。
あのあと、薬草採集の依頼を受けた私は、一人で森の中にいた。
数日かけて必要数の薬草を集め終えて、今は帰り道の途中。
この場所は帝都から少し離れていて、歩いていくと半日はかかる。
つまり朝から歩いていても、帰るころには夕方。
私としてはあまり良くない時間帯だ。
・・・月が降り始めるころに出れば、昼前には門に着くかな。
「そうと決まれば!」
意識的に声に出し、気合を入れて横になる。
月が降り始めるまで、少し仮眠を取ろう。
夜中に起きるなら、私なら危険はすぐに気付くだろうし。
マズルの中を通る土の匂いを感じながら、私は意識を落としていった
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