2 / 56
1.望まれぬ婚姻
2
「お待たせいたしました。珈琲をお持ちいたしました」
一人語り続けるアレクシスを止めたのは、健康的な肌色をした、短い琥珀色の髪を持つヴァインスと同じくらいの歳の娘だった。
おそらく、この喫茶店の看板娘なのだろう。彼女の笑顔は、この国の暖かな太陽のように眩しく、一目見ただけで気持ちが沈みそうになっていたレオナルドの心を込めを安心させた。
笑顔が眩しいのは彼女に限った話ではない。この国の人々には生き生きと笑う者が多いとレオナルドは感じていた。
「ああ、ありがとう」
頷いたアレクシスに微笑んで、娘は珈琲をそれぞれの前に配った。鼻先を掠めた珈琲の香りが心地よく、レオナルドは思わず頬を緩める。
「見たところレイノアール王国の方々のようですが、先程お話しされていたのは我がアカネース国の歌人ではありませんでしたか?」
珈琲を配り終えた娘はトレーを胸に抱えると、嬉しそうにそう尋ねた。
停戦条約が結ばれたといっても、両国間の怨恨は根深い。レオナルドたちは普通に街を歩いているが、自分たちへと向けられる視線には冷たいものが多かった。
彼らの腰に下げられた剣と護衛の視線がなかったら、襲い掛かった者もいただろう。
護衛たちは店の外で待たせているため、女の目にはレイノアールの商家の子息にでも見えたのだろう。特に臆する様子もなく、微笑を浮かべている。
「ええ。彼が唯一歌った悲恋はとても素晴らしかったです。結ばれないのなら一緒に死んでしまいたいというあの感覚は我が国にはないものです。アカネース国では普通なのですか?」
まさか、と娘は首を降る。
「普通ではありませんよ。さすがに、思いを秘めて諦めるというのが一般的でしょう。ですが、気持ちはわかります」
「そうなんですね。やはり、私にはわからない感覚です。ですが、あの悲痛な歌には心を惹かれました。芸術を素晴らしいと思う気持ちは国の違いなんて関係ありませんね」
アレクシスの言葉に耳を傾けながら、レオナルドは湯気を立てる珈琲にたっぷりのミルクを落とし、口元に運んだ。
一口含んだだけで、香ばしい香りと舌触りのいい苦味が一瞬で広がった。レイノアールにも珈琲はあるが、広がる風味も豊かな香りも全然違う。
レオナルドはアレクシスのように、芸術的な感性で二国間の繋がりを感じることは難しい。しかし、この珈琲が美味しいものであることはレオナルドにもわかる。
「……すごく、美味しいです」
ぽつりと溢れた言葉は、娘の耳にもはっきりと届いていた。彼女は照れた様子で微笑むと、申し訳なさそうに肩を竦めた。
「きっと、豆がいいからですね。マスターが今日は私に淹れさせてくれたのですが、マスターと同じ美味しさにはまだまだ届きません」
返事があったことに驚きつつも、レオナルドはそんなことはないと首を降る。
「マスターの珈琲は知りませんが少なくとも僕は、今まで飲んだ珈琲の中で一番美味しいと思います」
空の青さを美しいと思う心も、温かな珈琲を美味しいと思う心にも、きっと国境などはないのだろう。
レオナルドは再び王城に視線を向ける。
今、城内では両家の婚姻についての会議が行われていることだろう。
アカネース王家には現在、姫しかいない。必然的にレイノアール王家の王子達の誰かに白羽の矢が立つこととなる。
第一王子であるアレクシスにはすでに婚約者がいるため、犠牲となるのはヴァインスかレオナルドのどちらかになるだろう。
どちらになるのか、レオナルドにも予想が付かない。
正妃の子でありながら、王位から遠い自分となるか。
それとも、継承権第二位を持ちながらも妾の子であるヴァインスとなるか。
アカネースから迎える姫など、王位と遠い王子に押し付けたいのがレイノアール王国としての気持ちだろう。しかし、仮にアレクシスが王とならない未来が訪れた場合に、二人のどちらが王位を継ぐことになるのかははっきりとはわからなかった。
戦争がない日々が続いてほしい。もう、両国の間で戦争など起きてほしくない。北に構える帝国の脅威に屈することのない国を築きたい。
それは全てレオナルドの本心であったが、今回の婚姻に対しての生け贄という印象は拭いきれなかった。
アレクシスは喫茶店の娘を気に入ったらしく、珈琲が冷めるのも構わずに彼女にアカネース王国で人気のある物語や彼女の好きな絵画の話で盛り上がっていた。
本来なら彼女も仕事に戻らなければならないのだろうが、幸いにも喫茶店にはアレクシス達以外の客はいない。それはおそらく、入り口の前に立つ護衛のせいなのだろうが。
「……兄様、珈琲が冷めてしまいますよ」
さすがにいつまでも拘束してしまうのは悪い。そう思ったレオナルドはアレクシスへと角砂糖の入った小瓶を差し出した。
瓶の蓋には薔薇が絡まっているような彫刻が施されている。今にも花を咲かせそうな生き生きとした造りは、それなりの値がするのだろうと推測される。
「ありがとう、レオン……と、これはずいぶんと素敵だね」
小瓶を受けとり、落とさぬように両手で包むと、アレクシスは興味深そうに小瓶を掲げて様々な角度から見回し始めた。完全に自分から興味が逸れたと判断した娘は、微笑と共に軽い会釈をしテーブルを離れようとした。
しかし、今度はヴァインスが彼女の退席を許さない。彼は娘の手首を掴むと、膝下までの黒いスカートから除く健康的な足と、きっちりと首元まで閉まったシャツの上からでも大きさのわかる胸に目をやり、にやりと笑った。
「なあ、あんたうちの国にはいないタイプの女だな。今夜、暇か? よかったら俺の相手をしないか?」
それはヴァインスの悪い癖だった。
少しでも気になる女がいれば、それが誰であっても簡単に手を出す。
一人語り続けるアレクシスを止めたのは、健康的な肌色をした、短い琥珀色の髪を持つヴァインスと同じくらいの歳の娘だった。
おそらく、この喫茶店の看板娘なのだろう。彼女の笑顔は、この国の暖かな太陽のように眩しく、一目見ただけで気持ちが沈みそうになっていたレオナルドの心を込めを安心させた。
笑顔が眩しいのは彼女に限った話ではない。この国の人々には生き生きと笑う者が多いとレオナルドは感じていた。
「ああ、ありがとう」
頷いたアレクシスに微笑んで、娘は珈琲をそれぞれの前に配った。鼻先を掠めた珈琲の香りが心地よく、レオナルドは思わず頬を緩める。
「見たところレイノアール王国の方々のようですが、先程お話しされていたのは我がアカネース国の歌人ではありませんでしたか?」
珈琲を配り終えた娘はトレーを胸に抱えると、嬉しそうにそう尋ねた。
停戦条約が結ばれたといっても、両国間の怨恨は根深い。レオナルドたちは普通に街を歩いているが、自分たちへと向けられる視線には冷たいものが多かった。
彼らの腰に下げられた剣と護衛の視線がなかったら、襲い掛かった者もいただろう。
護衛たちは店の外で待たせているため、女の目にはレイノアールの商家の子息にでも見えたのだろう。特に臆する様子もなく、微笑を浮かべている。
「ええ。彼が唯一歌った悲恋はとても素晴らしかったです。結ばれないのなら一緒に死んでしまいたいというあの感覚は我が国にはないものです。アカネース国では普通なのですか?」
まさか、と娘は首を降る。
「普通ではありませんよ。さすがに、思いを秘めて諦めるというのが一般的でしょう。ですが、気持ちはわかります」
「そうなんですね。やはり、私にはわからない感覚です。ですが、あの悲痛な歌には心を惹かれました。芸術を素晴らしいと思う気持ちは国の違いなんて関係ありませんね」
アレクシスの言葉に耳を傾けながら、レオナルドは湯気を立てる珈琲にたっぷりのミルクを落とし、口元に運んだ。
一口含んだだけで、香ばしい香りと舌触りのいい苦味が一瞬で広がった。レイノアールにも珈琲はあるが、広がる風味も豊かな香りも全然違う。
レオナルドはアレクシスのように、芸術的な感性で二国間の繋がりを感じることは難しい。しかし、この珈琲が美味しいものであることはレオナルドにもわかる。
「……すごく、美味しいです」
ぽつりと溢れた言葉は、娘の耳にもはっきりと届いていた。彼女は照れた様子で微笑むと、申し訳なさそうに肩を竦めた。
「きっと、豆がいいからですね。マスターが今日は私に淹れさせてくれたのですが、マスターと同じ美味しさにはまだまだ届きません」
返事があったことに驚きつつも、レオナルドはそんなことはないと首を降る。
「マスターの珈琲は知りませんが少なくとも僕は、今まで飲んだ珈琲の中で一番美味しいと思います」
空の青さを美しいと思う心も、温かな珈琲を美味しいと思う心にも、きっと国境などはないのだろう。
レオナルドは再び王城に視線を向ける。
今、城内では両家の婚姻についての会議が行われていることだろう。
アカネース王家には現在、姫しかいない。必然的にレイノアール王家の王子達の誰かに白羽の矢が立つこととなる。
第一王子であるアレクシスにはすでに婚約者がいるため、犠牲となるのはヴァインスかレオナルドのどちらかになるだろう。
どちらになるのか、レオナルドにも予想が付かない。
正妃の子でありながら、王位から遠い自分となるか。
それとも、継承権第二位を持ちながらも妾の子であるヴァインスとなるか。
アカネースから迎える姫など、王位と遠い王子に押し付けたいのがレイノアール王国としての気持ちだろう。しかし、仮にアレクシスが王とならない未来が訪れた場合に、二人のどちらが王位を継ぐことになるのかははっきりとはわからなかった。
戦争がない日々が続いてほしい。もう、両国の間で戦争など起きてほしくない。北に構える帝国の脅威に屈することのない国を築きたい。
それは全てレオナルドの本心であったが、今回の婚姻に対しての生け贄という印象は拭いきれなかった。
アレクシスは喫茶店の娘を気に入ったらしく、珈琲が冷めるのも構わずに彼女にアカネース王国で人気のある物語や彼女の好きな絵画の話で盛り上がっていた。
本来なら彼女も仕事に戻らなければならないのだろうが、幸いにも喫茶店にはアレクシス達以外の客はいない。それはおそらく、入り口の前に立つ護衛のせいなのだろうが。
「……兄様、珈琲が冷めてしまいますよ」
さすがにいつまでも拘束してしまうのは悪い。そう思ったレオナルドはアレクシスへと角砂糖の入った小瓶を差し出した。
瓶の蓋には薔薇が絡まっているような彫刻が施されている。今にも花を咲かせそうな生き生きとした造りは、それなりの値がするのだろうと推測される。
「ありがとう、レオン……と、これはずいぶんと素敵だね」
小瓶を受けとり、落とさぬように両手で包むと、アレクシスは興味深そうに小瓶を掲げて様々な角度から見回し始めた。完全に自分から興味が逸れたと判断した娘は、微笑と共に軽い会釈をしテーブルを離れようとした。
しかし、今度はヴァインスが彼女の退席を許さない。彼は娘の手首を掴むと、膝下までの黒いスカートから除く健康的な足と、きっちりと首元まで閉まったシャツの上からでも大きさのわかる胸に目をやり、にやりと笑った。
「なあ、あんたうちの国にはいないタイプの女だな。今夜、暇か? よかったら俺の相手をしないか?」
それはヴァインスの悪い癖だった。
少しでも気になる女がいれば、それが誰であっても簡単に手を出す。
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく