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3.ただ一つの祝福を
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天井近くに設置された硝子窓から差し込む太陽光が明るく包み込む壇上で、扉に背を向けるようにしてその人は立っていた。
蜂蜜を固めた菓子のようにきらきらと光が弾ける琥珀色の髪を結い上げて、彼女の代名詞でもある白薔薇の髪飾りで纏めている。身を包むドレスも汚れを知らぬ純白で、余計な飾りを意識して排除しているようであった。
肌の露出が一切ない長袖のドレスに、指先までを隠す薄手の手袋。真珠の首飾りが控えめながらも輝きを放ち彼女の首元を彩っている。
緊張を悟られぬように小さく息を吐き出して、レオナルドは彼女の隣へと足を進めた。今回の式を取り仕切る司祭と目が合い、思わずレオナルドは彼を睨み返していた。
豊かな白髪を蓄えたその男は、つい先程までアカネースの王女へと侮蔑の籠った眼差しを向けていたのだ。
つい先日まで戦争を繰り広げていた相手国だ。恨むのも、怒るのも、構わないとレオナルドは思う。
しかし、これからは平和のためにと身一つで嫁ぐ相手を、軽んじていい理由は一つもない。
彼女の隣に立ち、レオナルドは体を正面に向けたまま横目で相手を盗み見た。しかし、盗み見ようにも彼女の方が僅かに背が高くベールから覗く薄紅色の口元しか窺うことが出来なかった。
緩く弧を描いた口元。瞳にも同じ笑みが浮かんでいればいいのだけれど、とレオナルドは思う。
司祭が述べる祝福の言葉も、多くがレオナルドの耳を右から左へと通り抜けていく。司祭の声よりも自分自身の心臓の音の方が煩いくらいだ。
ようやく、二人は向かい合う。薄いベールの奥で、彼女は伏せ目がちにレオナルドの手でベールが持ち上げられる時を待っていた。
緊張に震える指先で、レオナルドは彼女のベールの端に触れた。僅かに踵が浮かび、レオナルドの耳元には静かな嘲笑が届いた。
恐らく、レオナルドに向けられているものではない。
花婿よりも背の高い、成長期の少年の前に立つ成長しきった娘に対しての、行き遅れを嘲笑う声だ。
嗜めるように低い咳払いが広々とした空間に響く。レオナルドは確認することはしなかったが、咳払いの主は国王だろう。
レオナルドは手を止めた。
アカネース国の者はこの場にはいない。両国で開催する式は後日盛大に行われる予定となっており、今日はあくまでもレイノアール国が形式的に行っているだけに過ぎない。
このまま彼女を嗤う者達がいる中で、唯一彼女を外界から守っているこの薄い布を外してしまっても良いものか。
迷っているレオナルドに気付いたのか、彼女は困ったように頬を緩めるとベールに触れたレオナルドの手に自身の手を重ねた。
「ベールが邪魔をして、貴方のお顔がよく見えないのです。どうぞ、外してくださいませ」
彼女の手は太陽のように温かく、そしてレオナルドと同じように微かに震えていた。彼女もまた恐怖がないわけではない。それがわかってしまったから、胸に秘めた覚悟の深さが見えたような気がした。
レオナルドは頷いて、花嫁を隠すベールを上げる。
周囲からの視線が二人に集中する。そして、レオナルドはそこに微笑む花嫁をただじっと見上げていた。
特別美しいわけでもなければ、醜いわけでもない。街にいたら少しばかりは目を引かれそうだが、社交界ではより華やかな女性は多いだろう。ただ、楚々とした微笑みはレオナルドの好みでもあった。
彼女が誰の目にも明らかな美人であれば、これ以上周囲の人間が騒ぐことはなかっただろう。圧倒的な美貌の前では、人々は言葉を失う。
しかし彼女はそうではない。レオナルドにとっては好ましい微笑みも、彼女を疎ましく思う者にとっては脆弱で愚かしい。
「お会いできる日を待ち望んでおりました。わたくしの名はリーゼロッテ・アカネリア。本日より貴方様の妻となるため、南の地より参上致しました」
レオナルドと司祭だけに聞こえる声で、リーゼロッテは自らの名を告げた。
控えめだがはっきりと聞こえる笑い声の中でも、悠然とした動作で膝を折りリーゼロッテはレオナルドへと頭を垂れた。
耳に届く声を遮断するようにリーゼロッテは頭を下げる。それは彼女の身を守るためには仕方のないことで、しかし自分ですらその視界から外されてしまうというのはレオナルドにしてみれば不満以外の何物でもない。
少なくとも、レオナルドは彼女に危害を加えるつもりなどない。
「お待ちしておりました、リーゼロッテ様」
リーゼロッテの瞳に自分の姿を映すため、レオナルドは未だに顔を上げない彼女の膝後ろに両腕を回すと、そのままリーゼロッテの体を持ち上げた。
短い悲鳴と共に、リーゼロッテは慌ててレオナルドの肩に両手を付いた。驚きに丸くなった瞳は切り取った空のように淀みがなく、レオナルドは悪戯が成功した子供のように口角を持ち上げた。
「レイノアール王国第三王子、レオナルド・インフォードの妻として貴方を心から歓迎いたします」
ふわりと宙に持ち上げられた花嫁。ドレスの裾は名残惜しそうに床から離れ、太陽の光を散らしながら舞い上がる。
女性とはいえ自分より背が高く、重いドレスに身を包んでいる相手を長時間抱き上げ続ける力はレオナルドにはなかった。レオナルドは持ち上げた勢いを利用してその場で一度だけ回って見せると、ゆっくりとリーゼロッテの両足を下へと下ろした。
まるで幸せな婚姻そのものな光景に、人々は余計な口を挟む隙を失った。
代わりに、割れるような拍手が広間を包み込む。
「おめでとう、レオン」
アレクシスの祝福に弾む声がレオナルドの耳に届いた。辺りを見渡せば、珍しく穏やかな瞳のヴァインスも手を叩いている。
リーゼロッテへと、不穏な眼差しを向けている者も少なくはなかった。それでも、信頼できる者達は必ずいる。それがわかっているだけで、レオナルドの心は軽くなった。
琥珀の髪と健康的な肌色をしたリーゼロッテの太陽に似た眼差しは、雪の色を纏うレオナルドを溶かすことなく見つめていた。隠しきれない驚きの滲んだリーゼロッテを見上げ、レオナルドは苦笑を浮かべてみせる。
「貴方が僕と同じように両国の平和を望むのであれば、僕は貴方を妻としてちゃんと扱うつもりですよ」
言い方はやや刺々しいものであったが、これはレオナルドの紛れもない本心である。
政略結婚の二人の間には恋心など存在はしないし、無理に相手を好きになる必要もない。ただ、お互いに自分の立場を理解し、両国の和平を願うというのならば、レオナルドはそこに情を生み出すことが出来ると信じている。
同じ目的と理想を持つもの同士であれば、恋などなくとも愛は生まれるのだと。
「えぇ。私はそのために、貴方の妻となるのです」
リーゼロッテは両手を胸に当て、はっきりと頷いた。
彼女がアカネース国にとっては密偵の役割を担っている可能性は決してゼロではない。この言葉が嘘であっても、何もおかしなことはない。
しかし、レオナルドは彼女の微笑みに嘘はないと信じたい。イヴァンの調査でもアカネース国に怪しい点はなかったのだから、リーゼロッテは本心から平和を望んでいるはずだろう。
彼女と共に二国間の平和を維持する。
それがレオナルドの第三王子としての義務であり、夫になる者としての決意であった。
蜂蜜を固めた菓子のようにきらきらと光が弾ける琥珀色の髪を結い上げて、彼女の代名詞でもある白薔薇の髪飾りで纏めている。身を包むドレスも汚れを知らぬ純白で、余計な飾りを意識して排除しているようであった。
肌の露出が一切ない長袖のドレスに、指先までを隠す薄手の手袋。真珠の首飾りが控えめながらも輝きを放ち彼女の首元を彩っている。
緊張を悟られぬように小さく息を吐き出して、レオナルドは彼女の隣へと足を進めた。今回の式を取り仕切る司祭と目が合い、思わずレオナルドは彼を睨み返していた。
豊かな白髪を蓄えたその男は、つい先程までアカネースの王女へと侮蔑の籠った眼差しを向けていたのだ。
つい先日まで戦争を繰り広げていた相手国だ。恨むのも、怒るのも、構わないとレオナルドは思う。
しかし、これからは平和のためにと身一つで嫁ぐ相手を、軽んじていい理由は一つもない。
彼女の隣に立ち、レオナルドは体を正面に向けたまま横目で相手を盗み見た。しかし、盗み見ようにも彼女の方が僅かに背が高くベールから覗く薄紅色の口元しか窺うことが出来なかった。
緩く弧を描いた口元。瞳にも同じ笑みが浮かんでいればいいのだけれど、とレオナルドは思う。
司祭が述べる祝福の言葉も、多くがレオナルドの耳を右から左へと通り抜けていく。司祭の声よりも自分自身の心臓の音の方が煩いくらいだ。
ようやく、二人は向かい合う。薄いベールの奥で、彼女は伏せ目がちにレオナルドの手でベールが持ち上げられる時を待っていた。
緊張に震える指先で、レオナルドは彼女のベールの端に触れた。僅かに踵が浮かび、レオナルドの耳元には静かな嘲笑が届いた。
恐らく、レオナルドに向けられているものではない。
花婿よりも背の高い、成長期の少年の前に立つ成長しきった娘に対しての、行き遅れを嘲笑う声だ。
嗜めるように低い咳払いが広々とした空間に響く。レオナルドは確認することはしなかったが、咳払いの主は国王だろう。
レオナルドは手を止めた。
アカネース国の者はこの場にはいない。両国で開催する式は後日盛大に行われる予定となっており、今日はあくまでもレイノアール国が形式的に行っているだけに過ぎない。
このまま彼女を嗤う者達がいる中で、唯一彼女を外界から守っているこの薄い布を外してしまっても良いものか。
迷っているレオナルドに気付いたのか、彼女は困ったように頬を緩めるとベールに触れたレオナルドの手に自身の手を重ねた。
「ベールが邪魔をして、貴方のお顔がよく見えないのです。どうぞ、外してくださいませ」
彼女の手は太陽のように温かく、そしてレオナルドと同じように微かに震えていた。彼女もまた恐怖がないわけではない。それがわかってしまったから、胸に秘めた覚悟の深さが見えたような気がした。
レオナルドは頷いて、花嫁を隠すベールを上げる。
周囲からの視線が二人に集中する。そして、レオナルドはそこに微笑む花嫁をただじっと見上げていた。
特別美しいわけでもなければ、醜いわけでもない。街にいたら少しばかりは目を引かれそうだが、社交界ではより華やかな女性は多いだろう。ただ、楚々とした微笑みはレオナルドの好みでもあった。
彼女が誰の目にも明らかな美人であれば、これ以上周囲の人間が騒ぐことはなかっただろう。圧倒的な美貌の前では、人々は言葉を失う。
しかし彼女はそうではない。レオナルドにとっては好ましい微笑みも、彼女を疎ましく思う者にとっては脆弱で愚かしい。
「お会いできる日を待ち望んでおりました。わたくしの名はリーゼロッテ・アカネリア。本日より貴方様の妻となるため、南の地より参上致しました」
レオナルドと司祭だけに聞こえる声で、リーゼロッテは自らの名を告げた。
控えめだがはっきりと聞こえる笑い声の中でも、悠然とした動作で膝を折りリーゼロッテはレオナルドへと頭を垂れた。
耳に届く声を遮断するようにリーゼロッテは頭を下げる。それは彼女の身を守るためには仕方のないことで、しかし自分ですらその視界から外されてしまうというのはレオナルドにしてみれば不満以外の何物でもない。
少なくとも、レオナルドは彼女に危害を加えるつもりなどない。
「お待ちしておりました、リーゼロッテ様」
リーゼロッテの瞳に自分の姿を映すため、レオナルドは未だに顔を上げない彼女の膝後ろに両腕を回すと、そのままリーゼロッテの体を持ち上げた。
短い悲鳴と共に、リーゼロッテは慌ててレオナルドの肩に両手を付いた。驚きに丸くなった瞳は切り取った空のように淀みがなく、レオナルドは悪戯が成功した子供のように口角を持ち上げた。
「レイノアール王国第三王子、レオナルド・インフォードの妻として貴方を心から歓迎いたします」
ふわりと宙に持ち上げられた花嫁。ドレスの裾は名残惜しそうに床から離れ、太陽の光を散らしながら舞い上がる。
女性とはいえ自分より背が高く、重いドレスに身を包んでいる相手を長時間抱き上げ続ける力はレオナルドにはなかった。レオナルドは持ち上げた勢いを利用してその場で一度だけ回って見せると、ゆっくりとリーゼロッテの両足を下へと下ろした。
まるで幸せな婚姻そのものな光景に、人々は余計な口を挟む隙を失った。
代わりに、割れるような拍手が広間を包み込む。
「おめでとう、レオン」
アレクシスの祝福に弾む声がレオナルドの耳に届いた。辺りを見渡せば、珍しく穏やかな瞳のヴァインスも手を叩いている。
リーゼロッテへと、不穏な眼差しを向けている者も少なくはなかった。それでも、信頼できる者達は必ずいる。それがわかっているだけで、レオナルドの心は軽くなった。
琥珀の髪と健康的な肌色をしたリーゼロッテの太陽に似た眼差しは、雪の色を纏うレオナルドを溶かすことなく見つめていた。隠しきれない驚きの滲んだリーゼロッテを見上げ、レオナルドは苦笑を浮かべてみせる。
「貴方が僕と同じように両国の平和を望むのであれば、僕は貴方を妻としてちゃんと扱うつもりですよ」
言い方はやや刺々しいものであったが、これはレオナルドの紛れもない本心である。
政略結婚の二人の間には恋心など存在はしないし、無理に相手を好きになる必要もない。ただ、お互いに自分の立場を理解し、両国の和平を願うというのならば、レオナルドはそこに情を生み出すことが出来ると信じている。
同じ目的と理想を持つもの同士であれば、恋などなくとも愛は生まれるのだと。
「えぇ。私はそのために、貴方の妻となるのです」
リーゼロッテは両手を胸に当て、はっきりと頷いた。
彼女がアカネース国にとっては密偵の役割を担っている可能性は決してゼロではない。この言葉が嘘であっても、何もおかしなことはない。
しかし、レオナルドは彼女の微笑みに嘘はないと信じたい。イヴァンの調査でもアカネース国に怪しい点はなかったのだから、リーゼロッテは本心から平和を望んでいるはずだろう。
彼女と共に二国間の平和を維持する。
それがレオナルドの第三王子としての義務であり、夫になる者としての決意であった。
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