RLR(作:門弟 廃村) ― 5分間ミステリバックナンバーVol. 6―

筑波大学ミステリー研究会

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問題編

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「十一月六日、深夜に福岡―新宿行きの高速バスが四人組の犯人グループにジャックされる事件が発生した。彼らの要求は強盗殺人容疑で逮捕され現在は無期懲役で服役中の伊達直紀の解放であった。しかし警察はその要求を呑まず、犯人側との交渉に徹した。だが激昂した犯人のうち一人が運転手を射殺。その後事件は最悪の結末を迎える。バスの運転経験を持たない犯人らがハンドルを切りそこない、高速道路の防護壁に衝突、さらに壁を突き破って高架下に落下した。犯人グループ四人全員及び人質四十人中三十五人の死亡が確認された。生存者五人も全員予断を許さない状態である」と上沢先輩が週刊誌の切り抜きを読み上げる。ついこないだ起こった大惨事で、世間知らずの僕でもテレビのニュースで何度も取り上げられていたので知っている。

「だがな、こないだ中沢君が面白いことを言っていたんだよ」中沢と言うのは僕の先輩で上沢先輩の後輩にあたる。警察にコネがあるらしく、よく警察の内部情報や捜査情報を教えてくれる便利な存在だ。

「どうやら、死亡した人質のうち一人の死体の頭部に銃痕があったらしいんだ」

「え? 」

「しかも、どうやらその銃痕の上に重なるようにして衝突の傷があった。つまりだな、事故の前に撃ち殺されていたというんだ」

「犯人が別の銃を所持していた可能性は? 」

「実は、生存者五人に当時の状況を聞いたらしい。どうやらバスの乗客席と運転席のあいだにカーテンが張られて、運転席側で何が起こっているのかわからないまま事故が起こったらしい。カーテンは窓にも張られて乗客は完全に外のことが分からなかった。さらに乗客は全員手足を拘束されていたらしく、犯人たちは手足を縛った後はもう乗客側に来ることは無かったらしい」

「じゃあ、バスの乗客全員縛られていたなら、だれが被害者を撃ち殺せたんですか? 」

「な、不思議な事件だろ。しかも、五人が皆銃声を聞いていた。突然大きな音がして、誰かの悲鳴。そのあとしばらくしてから事故が起こったらしい」

「外から撃たれた可能性は、ないんですか? 例えば警察が狙撃したとか」

「うん、そこなんだよ。微妙な点は。実は、馬鹿な警官の一人が、バスジャックされたバスを追跡中に一発撃ち込んじゃったらしいんだ。それが車内に入ったかどうかは、要領を得ないんで分からないらしいんだが。しかも衝突の衝撃で窓ガラスは全部割れていてその時警官が撃った弾が被害者を殺したのかどうかは、分からないらしい」

「えっ! じゃあ、もしかしたら警察が市民を殺したかもしれないってことじゃないですか! 」

「いや、でも実はそうじゃないんだ。乗客席は右側と左側にそれぞれ二十席の計四十席だ。そしてパトカーが走っていたのはバスの右側だ。そして被害者はバスの右側の列に座っていたようだが、銃弾は左の側頭部から撃ち込まれていた。これはヘンだろ。外から撃ち込まれたなら、右に銃痕が付いているはずだからな。通路側もしくは左に座っている乗客に撃たれたとしか考えられないな。かといってバスの左側から銃弾が侵入したはずがない。そうしたら被害者に到達する前にバスの左側に座っている乗客にあたるはずだからな。つまり、バス外部から撃たれたという可能性もない」

「という事は、内部の者にも犯行は不可能、外からの説も否定され、勿論走っているバスに侵入することもできない。つまり……」

「密室だ。」上沢先輩が宣告する。

 ジャックされ、夜中の高速道路を走る密室。僕はふとRLRという言葉が浮かんだ。

 つまり、Running Locked Room

 

 その後僕たちは密室について話し合った。どうすれば、この密室は解けるのか?そもそも、本来密室とは閉じた部屋の中に死体のみしか存在しない状況をさす。だが、今回の場合は内部に多数の人質がいて、しかも外にも最有力容疑者である馬鹿な警官がいる。そんなゆるゆるの密室、聞いたこともない。しかし、解けない。

「そもそも、関係者のほとんどが死亡した事件の謎について考えることに、何の意味があるんですか? 」

「だから、下沢君。私は何度も言っているだろう。大事なのは、真実ではない。真相の妥当性など、どうでもいいのだ。つまらない真相は突飛な虚構に劣る。そうは思わないか? そもそも僕らは警察でもなければ探偵でもない。だから、重要なのは妥当な真実ではなくて、より面白い回答なんだよ」

「ということは、実は人質の拘束が甘くて乗客の一人が撃ったとかいうのも面白くないですね」

「そのとおり。そして、私は今おそらくは最も現実的かつ最も魅力的な解決を持っている」

 上沢先輩は自信満々だ。

「本当ですか。楽しみですね。早く聞きたいです。でもその前に、これを今読んでる読者の皆さんの回答が聞きたいですね。



Q「走る密室」は如何にして作られたか?

 では、健闘を祈ります」
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