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解答編

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 答えは十二人。その内訳は、第一章の私、一眼レフを持った女性、第二章の私、一組のカップル、小さな子供二人、老夫婦、カメラを持った老人、女子高生、管理者。

 まず、第一章で登場するのは、「私1」、「一眼レフの女性」の二人。これは特に問題ないだろう。

 次に第二章だが、この第二章の「私(私2)」は、「私1」とは別人である。第一章の冒頭で、「私1」はリボンやフリルのついたコート、つまりレディースのコートを着ているが、第二章において、「私2」は右側の女性のマスコットにコートのボタンを引っかけてしまったことから、メンズのコートを着ていることがわかる。なお、マスコットのシリアルナンバーから、第二章で一眼レフを持った女性と、第一章の「一眼レフの女性」は同一人物で、当然ながら「私1」とは別人である。ここで、第一章、第二章の時系列について確認しておきたい。まず、「ぼたん苑」、「苑」が全て同じ場所を指すという問題の条件と、第一章時点で公開初日だった『御簾』が第二章で公開されていることから、第二章は第一章の同日以降である。さらに、第二章において、「一眼レフの女性」が、『牡丹の実物を見るのは今日が初めて』だと発言していることから、第二章は第一章の同日以前だとわかる。このことから、第一章と第二章は同じ日であり、第一章で入場した「一眼レフの女性」が、苑の三分の二程まで進んでいることから、第一章よりも第二章の方が後の時刻ということになる。この第二章でさらに新しく登場する人物は、「一組のカップル」「二人の子供」「老夫婦」「カメラを持った老人」「女子高生」の八人。ここで注意すべきなのは、この八人の中に、「一人連れでマフラーもコートも着けていない女性」である「私1」が含まれていないこと。これと地の文、セリフには誤りがないこと、この時点で観覧者はこの八人と「一眼レフの女性」、「私2」しかいないと述べられていることから、「私1」は既に苑の中にはいない。ここまでで、この文章の登場人物は十一人。

 最後に第三章。ここでの新たな登場人物は「管理者」一人のみ。第一章、第二章には観覧者しか登場しないため、「管理者」がここまでの十一人に含まれることはない。このことから答えは十二人。ここでまず重要なのは時系列の確認である。ここでも『御簾』が今年初めて公開できたこと、ぼたん苑の公開初日であることに触れられているので、第一章、第二章、第三章は全て同日。さらに第三章では閉園間近であることから、時系列は第一章、第二章、第三章の順である。このことと、第一章で「最終入園時間は閉園三十分前」と書かれていたこと、第三章の記述から閉園時間が午後五時であるとわかる。さらに、第二章での最後、八人の描写がなされた時点で四時三十分を過ぎていたことから、第二章から第三章の間で、観覧者が増加することはないということが分かる。つまり、第三章の「私」は、第二章までの登場人物で、「私1」を除いた女性の内の誰か。この「私」については、条件に合致していれば誰でも良い。「私2」はメンズコートを着た女性だとして、第三章の「私」は「私2」と同一人物だとしても良いが、同一人物だと断定できる要素はないため、『第三章の「私」と「私2」は同一人物だから登場人物は十二人である』とするのは誤り。ちなみに、写真を確認しながら時刻を確認するためにわざわざ時計を確認している(写真をスマートフォンで見ているわけではない)ことと、一人連れであることから、筆者としては、第三章の「私」は「一眼レフを持った女性」を想定している。
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