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第5話 呪われたあの子は極厨二病でした
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「なんだ!?」
俺たちは慌てて外に飛び出した。すると——街のあちこちで、地面から白い何かが這い出てきてるのが見えた。
スケルトン。骨だけで構築された魔物が、次から次へと湧いて出てきている。
「街が襲撃されてる!? やっべぇゾ!」
「なにやってんだ、早く逃げるぞ!」
危うくパニックになるところだったが——よく見ると周りの反応が、なにやらおかしい。
「うおおおお!! 祭りだぁぁぁ!!」
「よっしゃあ、いくぞお前らァ! レベリングタイムだー!!」
「経験値はカスみてえなもんだが、塵も積もればなんとやらァ!」
新米冒険者たちが、嬉々としてスケルトンに突っ込んでいく。
「なんなん、これ?」
俺とタクヤが呆然としていると、リーシャが思い出したように口を開いた。
「あー、今月もこの時期が来たのね。理由はわからないけど、定期的にあるイベントみたいなの。スケルトンは弱いから、新人のレベル上げに丁度いいんだって」
なんだよ、驚かせやがって。この街も終わりかと思ったぜ。
確かに、よく見るとスケルトンの骨野郎はあり得ないくらい弱かった。剣で斬れば一撃で崩れるし、初級魔法ですら簡単に倒せる。
獲得経験値が微々たるせいか、中級以上の冒険者たちに至っては酒場のテラスで酒を飲みながらヤジを飛ばすという完全なる見物モードをかましている。
とはいえ、この街の見習い代表を仰せつかる俺たちにとっちゃ、
「ボーナスタイムじゃん。ジャンジャン稼ごうぜ!」
「おう!」
都合のいいカモそのものだった。
◇ ◇ ◇
骨をバキバキと砕き散らかしながら、俺たちはそれはもう調子に乗っていた。
「オラァ! 雑魚どもが!」
「いくら湧いても無駄だぜ!」
ハイテンションで暴れまくるイケてる俺たち。お決まりの呆れ顔をこっちに向けるリーシャのことなどもちろん気にも止めない。 我々は今、お楽しみ中なのだ!
そんな時だった。
「——待て」
タクヤが急に動きを止めた。
「どうした?」
「なんか……変な声が聞こえる」
言語理解スキルか。タクヤの顔が珍しく真剣になっている。
「スケルトンの声でも拾ったのか?」
「いや、違う。この骸は『コロス……コロス……』みたいな戯言しか言っていない。もっと別の……なんつーか、人格を疑うような貴賤じみた声だな。お前らも聞いてみてくれ」
言語理解のスキルが俺たちにも共有される。すると——
《ケケケ……今日こそあのアホ女を……》
……おや?
《骨畜生ども……あの女を始末しろ……そして、この俺様を今夜こそ自由にするんだ!》
なにやら物騒なことを宣っている輩の声が、直接脳に響いてきた。それにしても、ドブみたいな声色だな。
「うわぁ、なにこれ……」
さすがのリーシャさんもコレにはご不快の様子。
声に導かれて音が大きくなる方向へ渋々移動すると、辿り着いたのは見覚えのある場所だった。
「ここ……留置所じゃん」
「俺たちがこの間捕まってたところだな」
下卑た声はさらに奥から聞こえる。進んでいくと——あの牢の前に出た。
銀髪赤目の女。呪われた貴族の娘。
彼女は静かに座っていた。前に会った時には見えていなかったが、その首には——骸骨の形をした怪しげな首飾りがかかっていた。
◇ ◇ ◇
「あの首飾りだ」
タクヤが小声で言った。
「あれが喋ってる。例のスライムにも劣らない気色の悪い声色だ」
俺は眉をひそめた。首飾りが喋る? んなアホな……
《あのアホ女め……早くくたばれ……くたばって俺様を解放しろ……》
《骨畜生ども! 早くやっちまえ! 今夜こそだ!》
本当だった。聞こえてくる内容は実に穏やかではないが……
「おい、なんだこれ! 殺意がとどまることを知らねぇぞ!」
「てか、このスケルトン騒動、持ち主の始末が目的なのかよ!」
珍しく察しのいいリーシャも眉をひそめた。
「あの子、危ないんじゃない?」
「……だな」
俺は牢に近づいて、声をかけた。
「おい、お前」
銀髪の女——オルファが、ゆっくりとこちらを見た。
「……なに」
冷たい……というより、無感情な声。他人に興味がないって感じのの反応だ。
「その首飾り、お前のか?」
「……ええ」
見間違いか? オルファの目が、微かに輝いたように見えた。
「かっこいいでしょ」
……ん?
「この禍々しいフォルム……骸骨を模した漆黒の意匠……まさに『死を司る者の証』と呼ぶにふさわしい逸品」
急にめっちゃ喋り出した。
「この首飾りはね、私が幼い頃に手に入れた、唯一無二の『闘争の遺産』なの。……持つ者に呪いと祝福を与える、禁忌のアーティファクト……」
オルファの目がキラキラ輝いている。さっきまでの無表情はどこへやら、なにか変なスイッチでも入ってしまったようだ。
「……え、なにこの子」
リーシャですらドン引きしている。
「な、なななな……」
タ、タクヤ。お前はこんなところで急に人見知りを発揮するんじゃありません。
◇ ◇ ◇
さて、本当は触れたくもないのだが、仕方ない。本題に入るか。
「おい、その首飾りの話だけど」
「……なに。私の『死霊の首輪』に何か用?」
——まだそのテンションなのか。
「そいつ、お前のこと始末しようとしてるぞ」
「……え?」
タクヤが説明を加える。
「俺のスキルの『言語理解』で聞こえたんだ。『あのアホ女をやっちまえ、そして俺様を解放しろ』って」
オルファが目を見開いた。——が、次の瞬間。
「……そんなわけない」
即答だった。
「……この子は私の半身……私の孤独をうめてくれる存在なの」
オルファが首飾りを愛おしそうに撫でている。
「いや、マジなんだって——」
「ありえないわ」
先端の骸骨を愛でながら、うっとりした顔でオルファは断言する。
「だって、この死霊の首輪は私を選んでくれたの。私だけを。呪いに愛された『呪われた貴族の娘』であるこの私が……自分の呪いに狙われるなんて、そんなことあり得るわけないでしょう?」
……どこから来るんだその自信は。
「てかお前、『呪われた貴族の娘』って呼ばれてるの知ってたのか?」
「ええ、もちろん」
オルファが誇らしげに言った。
「私が広めたもの」
「……は?」
「だって、かっこいいでしょ? 『呪われた貴族の娘』……闇に愛された者の証……」
俺は絶句した。まさか自分で吹聴していたとは。
「それが原因で周りから避けられて、孤独になったんじゃないのか?」
「……」
タクヤの問いにオルファが黙った。
「……それは、その……」
目が泳いでいる。図星か。
「「自業自得じゃねぇか!!」」
俺とタクヤは同時にツッコんだ。
◇ ◇ ◇
こいつはやべぇ。
俺は心の中で確信した。呪いに始末されかけてるのに気づかない。自分で変な噂を広めて勝手に孤独。極めつけに厨二病全開で周りをドン引きさせる。問題児オブ問題児だ。
「…………」
リーシャのアホが、なにやら感動した顔で物言いたそうにしている。ものすごく嫌な予感がする。
「すごいわ、この子。なんて屈強な精神なの!?」
やっぱりか……
「だって、周りから避けられてでも、自分の信念を貫いてるのよ? 呪いに愛されてるって信じて疑わない。その揺るぎない強靭な心意気……私、感動しましたっ!」
——単に鈍感なだけの厨二病に見えるんだがなぁ。
「ねぇ、あなた! 私たちのパーティに入らない?」
ほぉらきた。俺、絶対そうくると思ってたもんね! 暴走魔法少女のくせにプライドだけは一丁前に高いリーシャさんだ。同じような志(笑)を持つものには確実に惹かれる。マジで勘弁してほしい。
「リーシャ、勝手なメンバーの勧誘はよせ」
「だって、この子一人じゃ可哀想でしょ? 私たちが仲間になれば、もう孤独じゃないわ!」
俺はオルファに視線を移す。こいつは紛うことなき問題児だ。パーティに入れたら絶対に面倒なことになる。これは予想ではない、約束された未来なのだ。
「俺は反対だな。見るからにヤバそうだし」
「何言ってんのよ! 私たちだって問題児でしょ!」
「バカいえ。"仮にも"そうだとして、これ以上増やして何になる?」
一時の気の高ぶりでパーティメンバーを決めるなどまさに愚行! 浅慮の生きた見本である。いかなる時でも冷静な俺は、そんな愚かな選択などしない。
俺とリーシャが言い争ってると、タクヤが俺の肩を叩いた。
「おいユウヤ、借金の頭数、増えるぞ?」
「うん、採用!」
俺たちは慌てて外に飛び出した。すると——街のあちこちで、地面から白い何かが這い出てきてるのが見えた。
スケルトン。骨だけで構築された魔物が、次から次へと湧いて出てきている。
「街が襲撃されてる!? やっべぇゾ!」
「なにやってんだ、早く逃げるぞ!」
危うくパニックになるところだったが——よく見ると周りの反応が、なにやらおかしい。
「うおおおお!! 祭りだぁぁぁ!!」
「よっしゃあ、いくぞお前らァ! レベリングタイムだー!!」
「経験値はカスみてえなもんだが、塵も積もればなんとやらァ!」
新米冒険者たちが、嬉々としてスケルトンに突っ込んでいく。
「なんなん、これ?」
俺とタクヤが呆然としていると、リーシャが思い出したように口を開いた。
「あー、今月もこの時期が来たのね。理由はわからないけど、定期的にあるイベントみたいなの。スケルトンは弱いから、新人のレベル上げに丁度いいんだって」
なんだよ、驚かせやがって。この街も終わりかと思ったぜ。
確かに、よく見るとスケルトンの骨野郎はあり得ないくらい弱かった。剣で斬れば一撃で崩れるし、初級魔法ですら簡単に倒せる。
獲得経験値が微々たるせいか、中級以上の冒険者たちに至っては酒場のテラスで酒を飲みながらヤジを飛ばすという完全なる見物モードをかましている。
とはいえ、この街の見習い代表を仰せつかる俺たちにとっちゃ、
「ボーナスタイムじゃん。ジャンジャン稼ごうぜ!」
「おう!」
都合のいいカモそのものだった。
◇ ◇ ◇
骨をバキバキと砕き散らかしながら、俺たちはそれはもう調子に乗っていた。
「オラァ! 雑魚どもが!」
「いくら湧いても無駄だぜ!」
ハイテンションで暴れまくるイケてる俺たち。お決まりの呆れ顔をこっちに向けるリーシャのことなどもちろん気にも止めない。 我々は今、お楽しみ中なのだ!
そんな時だった。
「——待て」
タクヤが急に動きを止めた。
「どうした?」
「なんか……変な声が聞こえる」
言語理解スキルか。タクヤの顔が珍しく真剣になっている。
「スケルトンの声でも拾ったのか?」
「いや、違う。この骸は『コロス……コロス……』みたいな戯言しか言っていない。もっと別の……なんつーか、人格を疑うような貴賤じみた声だな。お前らも聞いてみてくれ」
言語理解のスキルが俺たちにも共有される。すると——
《ケケケ……今日こそあのアホ女を……》
……おや?
《骨畜生ども……あの女を始末しろ……そして、この俺様を今夜こそ自由にするんだ!》
なにやら物騒なことを宣っている輩の声が、直接脳に響いてきた。それにしても、ドブみたいな声色だな。
「うわぁ、なにこれ……」
さすがのリーシャさんもコレにはご不快の様子。
声に導かれて音が大きくなる方向へ渋々移動すると、辿り着いたのは見覚えのある場所だった。
「ここ……留置所じゃん」
「俺たちがこの間捕まってたところだな」
下卑た声はさらに奥から聞こえる。進んでいくと——あの牢の前に出た。
銀髪赤目の女。呪われた貴族の娘。
彼女は静かに座っていた。前に会った時には見えていなかったが、その首には——骸骨の形をした怪しげな首飾りがかかっていた。
◇ ◇ ◇
「あの首飾りだ」
タクヤが小声で言った。
「あれが喋ってる。例のスライムにも劣らない気色の悪い声色だ」
俺は眉をひそめた。首飾りが喋る? んなアホな……
《あのアホ女め……早くくたばれ……くたばって俺様を解放しろ……》
《骨畜生ども! 早くやっちまえ! 今夜こそだ!》
本当だった。聞こえてくる内容は実に穏やかではないが……
「おい、なんだこれ! 殺意がとどまることを知らねぇぞ!」
「てか、このスケルトン騒動、持ち主の始末が目的なのかよ!」
珍しく察しのいいリーシャも眉をひそめた。
「あの子、危ないんじゃない?」
「……だな」
俺は牢に近づいて、声をかけた。
「おい、お前」
銀髪の女——オルファが、ゆっくりとこちらを見た。
「……なに」
冷たい……というより、無感情な声。他人に興味がないって感じのの反応だ。
「その首飾り、お前のか?」
「……ええ」
見間違いか? オルファの目が、微かに輝いたように見えた。
「かっこいいでしょ」
……ん?
「この禍々しいフォルム……骸骨を模した漆黒の意匠……まさに『死を司る者の証』と呼ぶにふさわしい逸品」
急にめっちゃ喋り出した。
「この首飾りはね、私が幼い頃に手に入れた、唯一無二の『闘争の遺産』なの。……持つ者に呪いと祝福を与える、禁忌のアーティファクト……」
オルファの目がキラキラ輝いている。さっきまでの無表情はどこへやら、なにか変なスイッチでも入ってしまったようだ。
「……え、なにこの子」
リーシャですらドン引きしている。
「な、なななな……」
タ、タクヤ。お前はこんなところで急に人見知りを発揮するんじゃありません。
◇ ◇ ◇
さて、本当は触れたくもないのだが、仕方ない。本題に入るか。
「おい、その首飾りの話だけど」
「……なに。私の『死霊の首輪』に何か用?」
——まだそのテンションなのか。
「そいつ、お前のこと始末しようとしてるぞ」
「……え?」
タクヤが説明を加える。
「俺のスキルの『言語理解』で聞こえたんだ。『あのアホ女をやっちまえ、そして俺様を解放しろ』って」
オルファが目を見開いた。——が、次の瞬間。
「……そんなわけない」
即答だった。
「……この子は私の半身……私の孤独をうめてくれる存在なの」
オルファが首飾りを愛おしそうに撫でている。
「いや、マジなんだって——」
「ありえないわ」
先端の骸骨を愛でながら、うっとりした顔でオルファは断言する。
「だって、この死霊の首輪は私を選んでくれたの。私だけを。呪いに愛された『呪われた貴族の娘』であるこの私が……自分の呪いに狙われるなんて、そんなことあり得るわけないでしょう?」
……どこから来るんだその自信は。
「てかお前、『呪われた貴族の娘』って呼ばれてるの知ってたのか?」
「ええ、もちろん」
オルファが誇らしげに言った。
「私が広めたもの」
「……は?」
「だって、かっこいいでしょ? 『呪われた貴族の娘』……闇に愛された者の証……」
俺は絶句した。まさか自分で吹聴していたとは。
「それが原因で周りから避けられて、孤独になったんじゃないのか?」
「……」
タクヤの問いにオルファが黙った。
「……それは、その……」
目が泳いでいる。図星か。
「「自業自得じゃねぇか!!」」
俺とタクヤは同時にツッコんだ。
◇ ◇ ◇
こいつはやべぇ。
俺は心の中で確信した。呪いに始末されかけてるのに気づかない。自分で変な噂を広めて勝手に孤独。極めつけに厨二病全開で周りをドン引きさせる。問題児オブ問題児だ。
「…………」
リーシャのアホが、なにやら感動した顔で物言いたそうにしている。ものすごく嫌な予感がする。
「すごいわ、この子。なんて屈強な精神なの!?」
やっぱりか……
「だって、周りから避けられてでも、自分の信念を貫いてるのよ? 呪いに愛されてるって信じて疑わない。その揺るぎない強靭な心意気……私、感動しましたっ!」
——単に鈍感なだけの厨二病に見えるんだがなぁ。
「ねぇ、あなた! 私たちのパーティに入らない?」
ほぉらきた。俺、絶対そうくると思ってたもんね! 暴走魔法少女のくせにプライドだけは一丁前に高いリーシャさんだ。同じような志(笑)を持つものには確実に惹かれる。マジで勘弁してほしい。
「リーシャ、勝手なメンバーの勧誘はよせ」
「だって、この子一人じゃ可哀想でしょ? 私たちが仲間になれば、もう孤独じゃないわ!」
俺はオルファに視線を移す。こいつは紛うことなき問題児だ。パーティに入れたら絶対に面倒なことになる。これは予想ではない、約束された未来なのだ。
「俺は反対だな。見るからにヤバそうだし」
「何言ってんのよ! 私たちだって問題児でしょ!」
「バカいえ。"仮にも"そうだとして、これ以上増やして何になる?」
一時の気の高ぶりでパーティメンバーを決めるなどまさに愚行! 浅慮の生きた見本である。いかなる時でも冷静な俺は、そんな愚かな選択などしない。
俺とリーシャが言い争ってると、タクヤが俺の肩を叩いた。
「おいユウヤ、借金の頭数、増えるぞ?」
「うん、採用!」
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