異世界きたのに、冒険者試験で詰みました。

アセチルサリチルさん

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第7話 先輩からは何も学べませんでした

 パーティを組んでから、しばらくの時が流れた。

 俺たちは相変わらず養成所で授業を受けて、夜はバイトして、たまにスライム狩りに行って——という生活を続けてた。

 そんなある日のこと。


  ◇ ◇ ◇


「お前らいつまで素手でやってんだ?」

 実技訓練の最中、ガロンが呆れた顔で言った。

「いや武器持ってませんし、俺たち金ないんで……」
「俺たちのせいじゃないっスけどね」

 俺とタクヤは同時に溜息をついた。借金2000万リーフを抱えてる身で武器なんて買えるがわけない。

「しゃあねえな……着いてこい。買ってやるよ」

 ガロンがぶっきらぼうに言い放った。

「「……え?」」

 俺たちは顔を見合わせた。

「聞こえなかったか? 武器を買ってやると言ったんだ」
「……」
「……」

「「パ、パパァ……/////」」

 両目をウルウルさせながら叫んだ。

「煽ってんのかお前ら……」

 ガロンの額に青筋が浮かぶ。もう、ツンデレ屋さんなんだからっ!


  ◇ ◇ ◇


 街の武器屋。

 店内には様々な剣や槍、弓矢が並んでる。どれもこれもファンタジー感満載で、俺のテンションは自然と上がった。

「好きなの選べ」
「「マジっスか!」」

 俺は剣のコーナーに向かった。やっぱ剣だよな、剣。異世界の冒険者といえば剣!

 棚を見ると、奥の方にひときわ輝く剣があった。見事な装飾が施された柄、青く光る刀身。明らかに高級品だ。

「おお……これだ。これしかねぇ」

 俺は迷わずそれを手に取った。

「ユウヤ、見ろよこれ」

 タクヤも弓のコーナーで、金細工が施された豪華な弓を構えてた。

「魔力増幅機能付きだってよ。最高じゃね?」
「おお、かっけぇ! 俺のもなんか光ってるし、絶対強いだろ!」

「「これください!」」

 俺たちは同時に店員に向かって叫んだ。

「調子乗んな」

 ゴリラの拳が横から飛んできた。

「お前らヒヨッコは安物で十分だ! なに一流装備に手ぇ出してんだ!」
「ええ? 教官が好きなの選べって言ったんじゃないっスか!」
「身の丈に合った武器を選べって意味だ! お前らの身の丈は地面すれすれだからな!」

 結局、俺たちは初心者向けの安い剣と弓を買ってもらった。とはいえ素手より全然マシなので素直に感謝だ。

「なんだかんだ面倒見いいよな、このゴリラ……」
「ああ……でも、どつかれた所がまだ痛いぜ……」


  ◇ ◇ ◇


 翌日。養成所にて。

「今日は課外授業だ」

 ガロンが養成所の生徒全員に向けて告げた。

「各パーティごとにこのギルド所属のBランク冒険者がつく。先輩と一緒に実戦形式の訓練をしてこい」

 おお、ついに実戦か。俺は思わず身を乗り出した。

「ユウヤ、お前らのパーティはゴブリンの巣の殲滅だ」
「ゴブリンの巣!?」

 タクヤの目が輝いた。

「ついに来たか……ゴブリン退治。ファンタジーの王道中の王道だ」
「テンション上がってんな」
「当然だろ! これぞ異世界冒険者の醍醐味だ! あとは囚われた姫君さえいれば完璧なんだがな」

 そんな面倒臭そうなことは避けたいが、確かにスライムの次にゴブリンってのは定番だな。これは楽しみだ。

「では先輩パーティを紹介する。入れ」

 ガロンが手を振ると、訓練場の扉が開いた。

 ——そこから現れたのは、想像の斜め上をいく光景だった。

「おう、よろしくな新人ども!」

 筋肉。

「ガハハ、楽しみだな!」

 筋肉。

「今日は派手にやろうぜ!」

 筋肉。

 ドカドカと出てきた男三人、全員がゴリゴリのマッチョだった。ガロンに負けず劣らずの筋肉ダルマ。申し訳程度の鎧は着ているが、もはや筋肉の方が鎧。

「……なにあれ」
「筋肉しか見えないんだが」

 俺とタクヤは唖然とした。

 その後ろから、一人の女性が顔を出した。

「ごめんねー、うるさくて。私はミラ、このパーティのヒーラーよ。よろしくね」

 柔らかい笑顔の女性だ。唯一まともそうな人だ。とてもかわいい。

「俺はバルガス。こいつらはゴードとロックだ。今日はよろしくな」

 一番デカいマッチョ——もとい、バルガスが他のマッチョどもの紹介をした。

 なんだこのパーティ……むさ苦しくて敵わんぞ。



  ◇ ◇ ◇


 ゴブリンの巣は、街から半日ほど歩いた森の奥にあった。

 洞窟の入り口には、腐った肉の匂いが漂ってる。明らかにヤバそうな雰囲気だ。

 アニメやゲームでは簡略化されてるが、現実だとなかなか酷いモンだな。


「よし、行くぞ」

 バルガスが剣を抜いた。ゴードとロックも続く。

「お前ら新人は後ろで見てろ。手本を見せてやる」

 おお、さすが先輩。ここから華麗な連携プレイが——

「「「うおおおおおおお!!!」」」

 三人が突撃した。

 洞窟の中から飛び出してきたゴブリンたち。小柄な緑色の魔物が十匹以上。

 バルガスの剣が振り下ろされる。ゴブリン一匹が吹っ飛んだ。ゴードの拳がゴブリンを殴り飛ばす。ロックの蹴りがゴブリンを踏み潰す。

 なんだこれ……連携もクソもない。ただひたすら、物理で轢き殺していく。

「ガハハハ! 雑魚が!」
「もっと来いや!」
「鋼の肉体の前にゴブリンなど塵芥よ!」

 ものの数分で、洞窟の入り口付近のゴブリンは全滅した。

「「「「…………」」」」

 俺たち四人は、呆然と立ち尽くしてた。

「おい、なんなん。アレ」

 俺は声を絞り出した。

「バーサーカーがゴブリン轢き殺してるだけなんスけど……何も学ぶとこないんですけど!!」

 タクヤが叫ぶ。

「あれが、Bランク冒険者……?」

 リーシャも信じられないって顔だ。

「……力こそパワー」

 おいオルファ、お前語彙力どうした。


「ごめんねー、うちのパーティいつもこうなの……」

 ミラが申し訳なさそうに笑った。

 その後も、洞窟の奥に進むたびに同じ光景が繰り返された。ゴブリンが出てくる→マッチョ三人が突撃→力で殲滅。連携? 戦術? そんなものは存在しない。

「よし、巣の奥まで来たな。焼き払うぞ」

 バルガスが松明を投げ込んだ。巣全体が炎に包まれる。

「殲滅完了だ!」
「「おおおお!!」」

 マッチョ三人がハイタッチしてる。酷い絵面だ。

「……何も……学べなかったな」
「これが課外授業か……?」
「ゴリ押しにも程があるでしょ……」
「……力こそパワー」

 俺たちは虚無の表情で、燃え盛るゴブリンの巣を眺めていた。


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