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一章
のびのびスローライフ
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時計の音で目を覚ます。深呼吸すると草木のいい匂いが鼻腔を刺激した。やっぱりこの土地は素晴らしいと改めて実感する。
俺が住んでいるのは村と村の山道の中腹辺りから、少し山奥に入ったところだった。ここでカフェを経営していて、旅人だったり近くの村の人が遊びに来るお店だ。繁盛しているわけではないけど、生活には困っていない。
朝は起きると、山に木の実や果物を取りに行って、昼はお客さんと雑談して、日が沈む頃に寝るというこれ程までストレスフリーな生活は無いのではないかと思う。街の大通りにお店を開くことが小さい頃の夢だったけれど、俺が悪いので仕方がない。
俺は保護対象のオメガだからだ。齢15になると病院でバース性の検査をしなければならない。俺は当然ベータだと思っていたが実際のところはオメガだった。本来病院側が政府に届け出を出し、役人が迎えに来る。
もとい、上級国民と番になり子供を産ませられる。もちろん、幸せになる人もいたがオメガへの差別や偏見からずさんな扱いをする人もいるらしい。俺はそんな生活にはなりたくなかった。
いつも通っている病院だったため、お医者さんが気づかって政府の目の届かないところに避難することを提案してくれた。俺にはそれに乗る以外の選択肢がなかった。
それから4年後俺は使っていた家の1階を改築し、カフェにした。憧れだった自分の店をもつ夢を叶えられてこの上ない幸せな生活を送っている。
「今日はこの後大雨が降るらしいから、気をつけるんだぞ」
隣町からわざわざ来てくれている常連のジルさんが窓の外を見ながらそんなことを言っていた。「そうなんですね。ありがとうございます」と言うと、ジルさんは重そうに腰を上げゆっくりと帰って行った。
それにしても、大雨かぁ、今日は早めに店じまいしておこう。もしかしたら、明日は森に材料を取りに行けないかもしれないな。
俺が就寝してから暫くして、一階のドアが叩かれていることに気がついた。辺りはすっかり暗くなっていた。眠い目を擦りながら下へと駆け下りる。ドアのガラスには人影が浮かんでいた。
「すみません!開けていただけませんか!」
「は、はい!」
慌てて鍵を開け、中に招き入れる。やけに身なりのいい男性が入ってきた。服が濡れているところを見ると、大雨に見舞われてしまい休憩できるところを探していたら行き着いたのだろう。
「大丈夫ですか?」
「夜分遅くにすみません」
イスに座らせ、タオルを渡すと頭をわしゃわしゃと拭き髪をかきあげる。銀色の髪の下からは鮮やかな紫色の瞳が覗いていた。
はぇぇ。すごいイケメンがいたもんだ。これは女性が放っておかないだろうな
「もしよかったら、泊まっていかれますか?」
「いいんですか!」
「ええ、あ、身分証の掲示はお願いしていますが」
偶に旅人さんが来るため、泊まれる客室があった。さすがに盗賊などを泊めるのは怖いので念の為に確認させてもらっている。
「あ!はい!」
カバンの中を漁り、出してもらった身分証に目を通す。目に飛び込んできたのは『ルシアテア王国 第一王子 カイル・ヒルストン』の文字だった。
え?王子様?え?
「あの、つかぬ事をお聞きしますが王族の方でしょうか?」
「はい。一応そうです」
王族に一応とかあるのだろうか。王族なんてはじめてお目にかかった。ルシアテア王国では、王族の血を引くアルファが政治の中心となっていた。つまり、将来的に国王になる可能性がある人だということだ。
「なぜ、こんな遅くにこのような辺鄙な場所にいらっしゃったのでしょうか?」
「ちょっと遠出していて帰ろうと思ったら雨が降ってしまったんです」
「そうでしたか。どうぞ、上の部屋をお使いください」
「ありがとうございます!」
カイル王子を部屋に案内し、ドアを閉じると部屋から寝息が聞こえてきたため余程疲れていたのだろう。俺も明日は遅いわけじゃない。早く寝よう。
第一王子であるカイル王子は大変ご聡明な方で心が広いと有名だった。権力に胡座をかかず、市民との距離感も近いため支持も厚かった。
何気にこのお店を作ってからアルファのお客さんが来るのは初めてかもしれない。そんなことを思いながら眠りについた。
これが事の発端だった―
俺が住んでいるのは村と村の山道の中腹辺りから、少し山奥に入ったところだった。ここでカフェを経営していて、旅人だったり近くの村の人が遊びに来るお店だ。繁盛しているわけではないけど、生活には困っていない。
朝は起きると、山に木の実や果物を取りに行って、昼はお客さんと雑談して、日が沈む頃に寝るというこれ程までストレスフリーな生活は無いのではないかと思う。街の大通りにお店を開くことが小さい頃の夢だったけれど、俺が悪いので仕方がない。
俺は保護対象のオメガだからだ。齢15になると病院でバース性の検査をしなければならない。俺は当然ベータだと思っていたが実際のところはオメガだった。本来病院側が政府に届け出を出し、役人が迎えに来る。
もとい、上級国民と番になり子供を産ませられる。もちろん、幸せになる人もいたがオメガへの差別や偏見からずさんな扱いをする人もいるらしい。俺はそんな生活にはなりたくなかった。
いつも通っている病院だったため、お医者さんが気づかって政府の目の届かないところに避難することを提案してくれた。俺にはそれに乗る以外の選択肢がなかった。
それから4年後俺は使っていた家の1階を改築し、カフェにした。憧れだった自分の店をもつ夢を叶えられてこの上ない幸せな生活を送っている。
「今日はこの後大雨が降るらしいから、気をつけるんだぞ」
隣町からわざわざ来てくれている常連のジルさんが窓の外を見ながらそんなことを言っていた。「そうなんですね。ありがとうございます」と言うと、ジルさんは重そうに腰を上げゆっくりと帰って行った。
それにしても、大雨かぁ、今日は早めに店じまいしておこう。もしかしたら、明日は森に材料を取りに行けないかもしれないな。
俺が就寝してから暫くして、一階のドアが叩かれていることに気がついた。辺りはすっかり暗くなっていた。眠い目を擦りながら下へと駆け下りる。ドアのガラスには人影が浮かんでいた。
「すみません!開けていただけませんか!」
「は、はい!」
慌てて鍵を開け、中に招き入れる。やけに身なりのいい男性が入ってきた。服が濡れているところを見ると、大雨に見舞われてしまい休憩できるところを探していたら行き着いたのだろう。
「大丈夫ですか?」
「夜分遅くにすみません」
イスに座らせ、タオルを渡すと頭をわしゃわしゃと拭き髪をかきあげる。銀色の髪の下からは鮮やかな紫色の瞳が覗いていた。
はぇぇ。すごいイケメンがいたもんだ。これは女性が放っておかないだろうな
「もしよかったら、泊まっていかれますか?」
「いいんですか!」
「ええ、あ、身分証の掲示はお願いしていますが」
偶に旅人さんが来るため、泊まれる客室があった。さすがに盗賊などを泊めるのは怖いので念の為に確認させてもらっている。
「あ!はい!」
カバンの中を漁り、出してもらった身分証に目を通す。目に飛び込んできたのは『ルシアテア王国 第一王子 カイル・ヒルストン』の文字だった。
え?王子様?え?
「あの、つかぬ事をお聞きしますが王族の方でしょうか?」
「はい。一応そうです」
王族に一応とかあるのだろうか。王族なんてはじめてお目にかかった。ルシアテア王国では、王族の血を引くアルファが政治の中心となっていた。つまり、将来的に国王になる可能性がある人だということだ。
「なぜ、こんな遅くにこのような辺鄙な場所にいらっしゃったのでしょうか?」
「ちょっと遠出していて帰ろうと思ったら雨が降ってしまったんです」
「そうでしたか。どうぞ、上の部屋をお使いください」
「ありがとうございます!」
カイル王子を部屋に案内し、ドアを閉じると部屋から寝息が聞こえてきたため余程疲れていたのだろう。俺も明日は遅いわけじゃない。早く寝よう。
第一王子であるカイル王子は大変ご聡明な方で心が広いと有名だった。権力に胡座をかかず、市民との距離感も近いため支持も厚かった。
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これが事の発端だった―
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