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一章
真相
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昔、ブラッドから親が喧嘩しているという話を聞かされ驚いたことがある。ブラッド様の親は俺の知る限り温厚で喧嘩している姿なんか想像出来なかったからだ。
何処か寂しそうに話すブラッドの気を紛らわせようと試行錯誤した記憶がある。一体どうしたブラッドはあの家から出ていったのだろうか。
川に着き、良さげな石に腰を下ろした。裸足になり足を水につける。この時期ではまだ寒いくらいだった。
「・・・俺だけさ、あの家で親が違ったんだ。育ててくれた両親とは血の繋がりがなかった」
ジャック様が言っていたからなんとなく分かっていた。しかし、それがなぜ家を出る理由だったのかわからない。
「俺はエバンス家の現当主と不倫相手の間に出来た子供なんだ。育ててくれた親はエバンス家からお金を貰ってた。それが分かったのは俺が15になった誕生日だった。アルファとわかるやいなや引き取りに来たって訳」
「そうだったんだ・・・・」
嫌われたからとかではなかったことに酷く安心する。せめて、手紙の一通でもくれればよかったのに・・・
「多感な時期だったこともあって、両親と血が繋がってないことがショックだった俺はそのままエバンス家の人についていくことにした。しばらくは貴族として生きるためのお勉強やら、トレーニングやらで外に出して貰えなかった。エバンス家の当主と番との間にできた子供じゃなくて不倫相手の間にできた子供だから、今でも肩身が狭かったりするんだけどな」
ははっ、と笑いながらブラッドは水を蹴りあげた。
「はい!俺は話したから次ダンだぞ!」
「え!順番があるなんて聞いてないよ!」
「自分だけ聞いといてそれはないんじゃないですかねぇ?」
ずる賢いところも変わっていないのだなと思う。
「な?俺がいない間何してたんだよ」
「俺は・・・」
それから俺は自分がオメガと分かってからの生活を話し始めた。ゆっくり引きこもって生活していたこと、カイル王子が現れて番になる約束をしたこと、ピーター様と友達になったこと。ひとしきり話し終えたあと、お兄ちゃんは口を開いた。
「・・・・結局、ダンは王子のことが好きなのかよ?」
「えっ・・・うーん」
好きかと聞かれたらそうではないけど、ずっと同じような日々をを繰り返していた俺にとってはカイル王子との出会いは新鮮だった。
「好きではない・・・かな」
「じゃぁ、なんで番になる約束断らねぇんだよ」
俺が断ったらカイル王子は全てを捨ててしまう気がするから。なんて言えるわけもなかった。
「・・・・なんでだろうね」
「・・・俺が言うのもあれかもしれねぇけど、王子は素晴らしい方だ。優しくて機転が利くし、剣もできる。王子には王子を必要とする人がいるんだ」
「それはわかってる」
「なら、王子を必要とする人に譲ろうとは思わないのか?」
ブラッドは俺を責め立てるように言った。小さい頃も何度も怒られていた気がする。
「それは・・・・その・・・」
「あー・・・・悪ぃ見栄張った」
口ごもる俺の方に身体を向けた。
「王子じゃなくていいなら、俺じゃダメか?」
そう言うとブラッドは俺の手を取った。驚くほど熱い体温が少しづつ俺に移る。虫の声が嫌なほど大きく聞こえた。
何処か寂しそうに話すブラッドの気を紛らわせようと試行錯誤した記憶がある。一体どうしたブラッドはあの家から出ていったのだろうか。
川に着き、良さげな石に腰を下ろした。裸足になり足を水につける。この時期ではまだ寒いくらいだった。
「・・・俺だけさ、あの家で親が違ったんだ。育ててくれた両親とは血の繋がりがなかった」
ジャック様が言っていたからなんとなく分かっていた。しかし、それがなぜ家を出る理由だったのかわからない。
「俺はエバンス家の現当主と不倫相手の間に出来た子供なんだ。育ててくれた親はエバンス家からお金を貰ってた。それが分かったのは俺が15になった誕生日だった。アルファとわかるやいなや引き取りに来たって訳」
「そうだったんだ・・・・」
嫌われたからとかではなかったことに酷く安心する。せめて、手紙の一通でもくれればよかったのに・・・
「多感な時期だったこともあって、両親と血が繋がってないことがショックだった俺はそのままエバンス家の人についていくことにした。しばらくは貴族として生きるためのお勉強やら、トレーニングやらで外に出して貰えなかった。エバンス家の当主と番との間にできた子供じゃなくて不倫相手の間にできた子供だから、今でも肩身が狭かったりするんだけどな」
ははっ、と笑いながらブラッドは水を蹴りあげた。
「はい!俺は話したから次ダンだぞ!」
「え!順番があるなんて聞いてないよ!」
「自分だけ聞いといてそれはないんじゃないですかねぇ?」
ずる賢いところも変わっていないのだなと思う。
「な?俺がいない間何してたんだよ」
「俺は・・・」
それから俺は自分がオメガと分かってからの生活を話し始めた。ゆっくり引きこもって生活していたこと、カイル王子が現れて番になる約束をしたこと、ピーター様と友達になったこと。ひとしきり話し終えたあと、お兄ちゃんは口を開いた。
「・・・・結局、ダンは王子のことが好きなのかよ?」
「えっ・・・うーん」
好きかと聞かれたらそうではないけど、ずっと同じような日々をを繰り返していた俺にとってはカイル王子との出会いは新鮮だった。
「好きではない・・・かな」
「じゃぁ、なんで番になる約束断らねぇんだよ」
俺が断ったらカイル王子は全てを捨ててしまう気がするから。なんて言えるわけもなかった。
「・・・・なんでだろうね」
「・・・俺が言うのもあれかもしれねぇけど、王子は素晴らしい方だ。優しくて機転が利くし、剣もできる。王子には王子を必要とする人がいるんだ」
「それはわかってる」
「なら、王子を必要とする人に譲ろうとは思わないのか?」
ブラッドは俺を責め立てるように言った。小さい頃も何度も怒られていた気がする。
「それは・・・・その・・・」
「あー・・・・悪ぃ見栄張った」
口ごもる俺の方に身体を向けた。
「王子じゃなくていいなら、俺じゃダメか?」
そう言うとブラッドは俺の手を取った。驚くほど熱い体温が少しづつ俺に移る。虫の声が嫌なほど大きく聞こえた。
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