【完結】聖人君子で有名な王子に脅されている件

綿貫 ぶろみ

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一章

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 ブラッドは俺が泣き止むまで抱きしめて背中を摩ってくれた。それが凄く嬉しかった。落ち着き、礼を言う。

「別にいいよ。お兄ちゃんだからな」

 胸を叩いてそんなことを言っていた。もう一度お礼を言おうとしたところでブラッドは他の人に呼ばれて足早に行ってしまった。

 トイレで顔を洗って赤くした顔を元に戻す。深く深呼吸をして落ち着かせる。

 そろそろだいぶ時間も経った頃だろうし、先に帰らせて頂こう。元々ここに居ても大したことはしていないんだし

 ローラ嬢に一声かけようと思い、会場へ足を運ぶ。すると、会場からローラ嬢が出てきた。

「あ、すみません。俺先に失礼します」

「ねぇ、今日のパーティーにはカイル様も参加しているの」

 ローラ嬢は俺に一瞥もくれず続けた。

「社交界ではカイル様に婚約者が居なくなったからと、我こそはと名乗りを上げて自分の娘を紹介しているのよ」

 一応俺の事を婚約者として紹介していたのに婚約者ご居なくなったと扱われているんだから、俺は居ないものとして扱われているのだろう

「ねぇ、どうして貴方なのかしら」

 それは俺にも分からない。けど、あの人が俺を好きだと言ってくれるのは心地よかった

「地位も容姿も学もない。おまけに子もなせないオメガの何処がいいのかしら」

 冷たい風が窓を鳴らす。生唾を飲み込んだ。

「もうすぐ国王が交代すると言われているのは知ってるわよね?そうなったら世継ぎが必要になる。婚約者とは別にオメガでも作ればいいのだけれど、恐らくカイル様はそうしない。そうなった時に貴方には何ができるのかしら?発情期がないから子もなせないし、番にもなれない・・・・カイル様を一人の男性としてではなく一国の王子として、貴方がどうするべきなのかを考えて行動してちょうだい」

 ローラ嬢は「今日は来てくれて感謝するわ」と吐き捨てると立ち去って行った。一人その場に残された俺だけ時間が止まっているみたいだった。

 一生一緒にはいられない。そんなことは最初から分かっていたはずだ。それなのに再確認させられた気になるのは王子との日々が楽しかったからだろう


 ローラ嬢の家の馬車で家まで送り届けてもらう。その間もずっと考えていた。

 俺とカイル様は番になるべきじゃない。心底そう思う

 ローラ嬢に揺さぶられた事は事実だが、ずっと前から気づいていたことなんじゃないか?それを楽しい日常にだけ目を向けて現実からは逃げていただけじゃないのか?

 カイルは何事も無ければ国王になる。そうなったら世継ぎがいる。俺には発情期が来ない。そもそもフェロモンすらほとんど出ていない。そんな身体で良いのか?こんな俺でいいのか?
 
 やっぱり、学も地位も兼ね備えているローラ嬢の方が相応しいんじゃないか?俺である必要性なんかないんじゃないか?出来損ないのオメガへの同情心だったんじゃないのか?


 カイルが国王になった時に横にいる人が俺じゃなくてもいいのか?


 俺程度が足枷になるよりはよっぽどマシだ。
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