【完結】聖人君子で有名な王子に脅されている件

綿貫 ぶろみ

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一章

運命

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 『運命の番』誰もが一度は耳にしたことがあり、誰もが一度は憧れるものだろう。遺伝子レベルで相性が良く、遭遇したら時期に関係なく発情してしまう。ただ、遭遇する確率が極端に低く都市伝説のような扱いのものである。

 しかし、俺には発情期はもちろん王子と遭遇した所で急に発情、なんてことは一切ない。そのため、俺とカイル王子が運命の番だなんて考えもしなかったわけである。

 
 王子の爆弾発言によって時が止まったかのように静かになる。ノエル様がお菓子を咀嚼する音だけが部屋に響き渡る。

「・・・運命ってどういうことですか?」

 俺は恐る恐る口を開く。発情期さえ来なければほとんどベータとして生きられるんだ。今更発情期が来るのは嫌だ。獣みたいに我を忘れてアルファを求めるなんて絶対に嫌だ。

「え?違うんですか?」

「運命だったら発情しちゃうんじゃないのー?」

「そうじゃなくて、ベータとして登録してたけど、僕はダンがオメガだってわかった、そして偶然会った、運命と言うには十分だと思うんですけど・・・」

「なんだそういうことか!僕ビックリしちゃった!」

 おそらく、ここにいる誰よりも俺が一番驚いているし、俺が一番ほっとしているだろう。

「驚かすなよ、俺はてっきりお前達が運命の番とか言い出すのかとおもったじゃねぇかよ」

「そんなの伝説の類ですよ」

 カイル王子は紅茶を1口飲んだ。運命の番に出会った話は聞いたことがない。ロマンチスト的な考えかもしれないけれど、存在するからこそ噂になったんじゃないかと思う。

「てか、ベータとして登録してたけど、ってなんだよ。やっぱ俺に嘘ついたのかよ」

 ミラ王子は俺に鋭い視線を向けた。

「いや、嘘というかなんというか、冗談というかなんというか」

「まぁ、この際だから俺に嘘ついたのは多めに見てやるとして、兄貴のこと騙してるわけじゃねぇならいいけどさぁ・・・兄貴もいい加減王子としての自覚をもってアルファの婚約者作るべきじゃねぇの?」

 ミラ王子が意外とあっさり許してくれたことに胸を撫で下ろす。カイル王子はまた、むっとしていた。

「僕の婚約者も番もただ1人、ダンだけです」

「兄貴はそう思ってるかもしんねぇけどコイツはそうは思ってねぇかもしんねぇだろ」

「えっ!そうなんですか?」

 ミラ王子のセリフにカイル王子がこちらを向いた。カイル王子は期待の視線をこちら向けている。

「俺は・・・カイル王子にはアルファの方と結婚して欲しいです」

 そう答えるのがこの状況においても、この国の今後においても一番平和だと思った。

「・・・そう、だったんですね」

 カイル王子は死んだ魚のような目で言った。その様子を見てミラ王子も余計なことを言ってしまったと額に手を手を当てていた。

『コンコン』

「・・・はい」

 ノックの音に死んだ魚の目のままカイル王子は返事をした。

「ミラ様いらっしゃいますか?ベティ様との会食の時間です」

「あぁ、今行く」

 メイドさんが呼ぶ声にミラ王子は席を立った。ベティとは婚約者のことだろうか・・・

「えー!ミラきゅん帰るの!じゃあ僕も!」

 ミラ王子に合わせてノエル様も席を立った。このままでは気まずい空気が流れてしまうと、俺も腰をあげる。

「ダンは待ってください」

「は、はい」

 帰ろうとしていたのがバレていたことに絶望する。カイル王子は死んだ魚ではなくどちらかというと怒っているような口調だった。怒らせるようなことしたか・・・?

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