【完結】聖人君子で有名な王子に脅されている件

綿貫 ぶろみ

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一章

妥協案

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 アルファが支配者、オメガはほぼ奴隷。その他がベータ。そんな印象だった。だから、支配者と奴隷が並ぶことはない。もし、貴族からオメガが出たら自分より高い身分に保護させ、コネを作るか縁を切るかの二択。オメガとはそのような存在である。

 しかしながら、王子は俺と対等になりたいと言った。せめて、一般貴族なら変な人だと忌避されて終わりだったかも知れないが、カイル様は王族なのでそう簡単にはいかないだろう。そんなことを公の場で言ったら、王様やら王妃やらローラ嬢の両親が黙っていないと思う。


 カイル王子が珍しく真面目に「結婚したい」等と言い出すので俺は恥ずかしさと、誰かに聞かれていないかという心配で心臓が爆発しそうだった。

「王子の考えはよくわかりました。ひとまず、手を離してください」

 王子は「すみません」と大人しく手を離した。

「カイル様は王族です。・・・それなのに、オメガと対等がいいなんて言っちゃだめですよ」

 自分で言っていて虚しくなる。本当は嬉しかったくせに、素直に「ありがとう」の一言を言えない自分が嫌になる。

「僕は・・・ダンがいてくれたらそれでいいんです。ダンが僕のことを好きにならなくても、僕のことを嫌いでも、僕はダンに近くにいて欲しいんです。僕にできることだったら何でもします。僕にあげられるものだったら全部あげます。だから・・・だから、そばにいて下さい」

 カイル王子は懇願するように言った。十分魅力的だと言ってくれたけれど、俺には俺の何がいいのかわからない。それに、全部をもらっても何も返せるものが無い。俺は俺自身に価値を見いだしてないから、そばに居ることが対価になってるとは思えない。

「カイル王子が、俺のために何でもしてくれるのはわかりました。でも、俺のために何もかも捨てようとしないでください。カイル王子が王子でいる事で生かされる人も救われる人もいるんです」

 カイル王子が鼻をすする音が聞こえる。頭をこてんと、肩に乗せられる。

「・・・・」

「あーもう!じゃぁ、カイル王子が誰かを助けるために俺はカイル王子を助けます」

「・・・・というと?」

「カイル王子が王子として生き続ける限りは結婚とかはさておき、そばに居ますよ」
 
「本当ですか!」

 鼻声だったものの明らかに声のトーンが上がっていた。そんなに喜ぶことか・・・?

「約束ですよ!言質とりましたからね!あ!契約書!契約書も書きましょう!」

 さっきまで落ち込んでいたのが嘘かのようにはしゃぎはじめた。あれ?もしかして本当に嘘だった?

「俺もお店のことがあるので、ずっと引っ付いてるとかは無理ですからね?精神的な意味ですからね?」

 王子は一瞬すん、としてから「わかってますよ!」と笑った。絶対落胆しただろ。契約書、書かされるにしてもしっかり読まないと・・・
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