20 / 52
一章
妥協案
しおりを挟む
アルファが支配者、オメガはほぼ奴隷。その他がベータ。そんな印象だった。だから、支配者と奴隷が並ぶことはない。もし、貴族からオメガが出たら自分より高い身分に保護させ、コネを作るか縁を切るかの二択。オメガとはそのような存在である。
しかしながら、王子は俺と対等になりたいと言った。せめて、一般貴族なら変な人だと忌避されて終わりだったかも知れないが、カイル様は王族なのでそう簡単にはいかないだろう。そんなことを公の場で言ったら、王様やら王妃やらローラ嬢の両親が黙っていないと思う。
カイル王子が珍しく真面目に「結婚したい」等と言い出すので俺は恥ずかしさと、誰かに聞かれていないかという心配で心臓が爆発しそうだった。
「王子の考えはよくわかりました。ひとまず、手を離してください」
王子は「すみません」と大人しく手を離した。
「カイル様は王族です。・・・それなのに、オメガと対等がいいなんて言っちゃだめですよ」
自分で言っていて虚しくなる。本当は嬉しかったくせに、素直に「ありがとう」の一言を言えない自分が嫌になる。
「僕は・・・ダンがいてくれたらそれでいいんです。ダンが僕のことを好きにならなくても、僕のことを嫌いでも、僕はダンに近くにいて欲しいんです。僕にできることだったら何でもします。僕にあげられるものだったら全部あげます。だから・・・だから、そばにいて下さい」
カイル王子は懇願するように言った。十分魅力的だと言ってくれたけれど、俺には俺の何がいいのかわからない。それに、全部をもらっても何も返せるものが無い。俺は俺自身に価値を見いだしてないから、そばに居ることが対価になってるとは思えない。
「カイル王子が、俺のために何でもしてくれるのはわかりました。でも、俺のために何もかも捨てようとしないでください。カイル王子が王子でいる事で生かされる人も救われる人もいるんです」
カイル王子が鼻をすする音が聞こえる。頭をこてんと、肩に乗せられる。
「・・・・」
「あーもう!じゃぁ、カイル王子が誰かを助けるために俺はカイル王子を助けます」
「・・・・というと?」
「カイル王子が王子として生き続ける限りは結婚とかはさておき、そばに居ますよ」
「本当ですか!」
鼻声だったものの明らかに声のトーンが上がっていた。そんなに喜ぶことか・・・?
「約束ですよ!言質とりましたからね!あ!契約書!契約書も書きましょう!」
さっきまで落ち込んでいたのが嘘かのようにはしゃぎはじめた。あれ?もしかして本当に嘘だった?
「俺もお店のことがあるので、ずっと引っ付いてるとかは無理ですからね?精神的な意味ですからね?」
王子は一瞬すん、としてから「わかってますよ!」と笑った。絶対落胆しただろ。契約書、書かされるにしてもしっかり読まないと・・・
しかしながら、王子は俺と対等になりたいと言った。せめて、一般貴族なら変な人だと忌避されて終わりだったかも知れないが、カイル様は王族なのでそう簡単にはいかないだろう。そんなことを公の場で言ったら、王様やら王妃やらローラ嬢の両親が黙っていないと思う。
カイル王子が珍しく真面目に「結婚したい」等と言い出すので俺は恥ずかしさと、誰かに聞かれていないかという心配で心臓が爆発しそうだった。
「王子の考えはよくわかりました。ひとまず、手を離してください」
王子は「すみません」と大人しく手を離した。
「カイル様は王族です。・・・それなのに、オメガと対等がいいなんて言っちゃだめですよ」
自分で言っていて虚しくなる。本当は嬉しかったくせに、素直に「ありがとう」の一言を言えない自分が嫌になる。
「僕は・・・ダンがいてくれたらそれでいいんです。ダンが僕のことを好きにならなくても、僕のことを嫌いでも、僕はダンに近くにいて欲しいんです。僕にできることだったら何でもします。僕にあげられるものだったら全部あげます。だから・・・だから、そばにいて下さい」
カイル王子は懇願するように言った。十分魅力的だと言ってくれたけれど、俺には俺の何がいいのかわからない。それに、全部をもらっても何も返せるものが無い。俺は俺自身に価値を見いだしてないから、そばに居ることが対価になってるとは思えない。
「カイル王子が、俺のために何でもしてくれるのはわかりました。でも、俺のために何もかも捨てようとしないでください。カイル王子が王子でいる事で生かされる人も救われる人もいるんです」
カイル王子が鼻をすする音が聞こえる。頭をこてんと、肩に乗せられる。
「・・・・」
「あーもう!じゃぁ、カイル王子が誰かを助けるために俺はカイル王子を助けます」
「・・・・というと?」
「カイル王子が王子として生き続ける限りは結婚とかはさておき、そばに居ますよ」
「本当ですか!」
鼻声だったものの明らかに声のトーンが上がっていた。そんなに喜ぶことか・・・?
「約束ですよ!言質とりましたからね!あ!契約書!契約書も書きましょう!」
さっきまで落ち込んでいたのが嘘かのようにはしゃぎはじめた。あれ?もしかして本当に嘘だった?
「俺もお店のことがあるので、ずっと引っ付いてるとかは無理ですからね?精神的な意味ですからね?」
王子は一瞬すん、としてから「わかってますよ!」と笑った。絶対落胆しただろ。契約書、書かされるにしてもしっかり読まないと・・・
5
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。
行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。
異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?
オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に
水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。
誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。
しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。
学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。
反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。
それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。
「お前は俺の所有物だ」
傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。
強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。
孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。
これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
氷の騎士と浄化のオメガ~「出来損ない」と追放された僕ですが、最強の騎士団長様に拾われて、運命の番としてとろとろに溺愛されています~
水凪しおん
BL
「お前のような出来損ないは、我が家の恥だ!」
公爵家の不義の子として生まれ、フェロモンも弱く「出来損ないのオメガ」と虐げられてきたユキ。
18歳の誕生日に濡れ衣を着せられ、真冬の夜、着の身着のままで実家を追放されてしまう。
行き倒れかけたユキを救ったのは、隣国の英雄であり、冷徹無比と恐れられる『氷の騎士団長』レオンハルトだった。
「行く当てがないなら、俺のところへ来い。お前を保護する」
最強の騎士様に拾われたユキだったが、彼を待っていたのは冷遇……ではなく、とろとろに甘やかされる溺愛生活!?
しかも、ただの「出来損ない」だと思っていたユキには、国を救い、レオンハルトの「呪い」を解く『聖なる浄化の力』が秘められていて……?
【不器用で一途な最強騎士団長(α) × 健気で料理上手な追放令息(Ω)】
どん底から始まる、運命の救済シンデレラ・オメガバース。
もふもふ聖獣も一緒です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる