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2024.11.11
2025.11.11
しおりを挟む私がこの心霊調査事務所で働くと決めた直後、かなり貧乏だった。
元々裕福な方ではなかったし、一度死ぬと決めた時に全て捨ててしまったので、新生活を始めるのにかなりお金がかかった。敷金から始まり、家具や家電どころか、服や下着、化粧品まで全部揃える必要があり、貯金が吹っ飛んだのだ。
次の給料日まで生きて行けるだろうか……と心配になるほどの、超ド貧乏。ただ、それを何となく察していたのか、九条さんはやたら私にポッキーを食べさせたし、伊藤さんは『事務所の裏にあるレトルトや冷食は食べていいよ』と言ったり、『九条さんのおごりでラーメンに行こう!』と誘ってくれた。本当に感謝している。
でもこの事務所は小さくて依頼がないこともあるというのに、お給料は結構よかった。なので、少し経てば徐々に私の生活は潤い、余裕のある生活を送れるようになっていった。
そんな頃、私は鏡の前で一人首をかしげていた。なんだか、顔が丸くなった気がしたからだ。
お金に余裕も出てきたので、体重計を購入してみた。
「ひ、ひええええ!!」
私の情けない声が狭いアパートに響き渡る。
なんということだ。3キロも増えているじゃないか!! 測ってなかった期間なんて、そんなに長くない。この短期間で一気に3キロも!?
「な、なんで? お昼は質素なお弁当だし、依頼は結構体を張ることもあるから疲れるのに、一体どうし……」
そこまで言って、はたと気が付いた。
確かにお昼はお弁当だけど、おやつには九条さんがポッキーを勧めて来る。伊藤さんは未だに外食に誘ってくれるし、調査中はコンビニ飯を食べたり、終わった開放感で美味しい物を一気に食べたりしてる。
……思ったより余計なカロリーを取ってるんだ……
青ざめて体重計の数字を見た。
このままじゃだめだ。せめて元の体重に戻さないと!!
「光さん、どうぞ。今日は極細ですから折れないように気を付けてください」
普段気遣いというものなんて出来ない九条さんは、こんな時だけよくわからない心配をしてくれる。確かにこのポッキーは細いから折れやすいけれども。
差し出した彼は銀色の袋を持っていた。私に一本どうぞ、というわけだ。
正直、これもよくないと思う。毎日のように貰うので、私はちょっと飽きてきている。でも九条さんが勧めてくれるので、少しくらい……と食べてきた。これがカロリーに繋がっている。
「ありがとうございます。でもお腹いっぱいなので」
私が断ると、九条さんは不思議そうに首を傾げた。
「いつもよりお弁当少ないですよね? だから足りないかと思ったのですが」
なぜこの男はそういうことには気が付くのだ。
私ががくりと項垂れると、離れたところでパソコンを見ていた伊藤さんがひょこっと顔を出した。
「体調悪いわけじゃない? 大丈夫?」
「あ、はい。全然元気なんです!」
「ではなぜそんなに食べないんですか? 調査が無い時ぐらいしっかり食べておかないと倒れますよ」
九条さんは私に差し出したポッキーをあむあむと食べながら言った。私は答えづらくて、口籠る。
3キロ増えたのでダイエット中です、なんて言えないよ……。
「きょ、今日はちょっと食欲がないだけです」
「では体調が悪いのでは? 帰って大丈夫ですよ」
「いえいえ! 体調は悪くなくて、元気です!」
「でも食欲ないんですよね?」
「な、ないというか」
「病院に行って検査してもらった方がいいかもしれませんよ。ポッキーが食べられないなんて精神的にも辛すぎるでしょう」
「九条さんとは違うので大丈夫です」
なぜか九条さんはなかなか引かない。そんなに私に極細ポッキーを食べさせたいのだろうか?
すると何かを察したのか、伊藤さんが苦笑いして言う。
「まあまあ九条さん。光ちゃん自身が大丈夫って言ってるならいいですよ。まあ、食べなさすぎは気を付けてほしいけどね」
ううっ。多分伊藤さんは勘づいてる。この人に隠し事は出来ない……。
だが、九条さんはそれでも引かなかった。
「光さんは元々、調査に入ると食が細くなる傾向にあるので心配なんです。せめて調査が入ってない今ぐらいはしっかり食べておかないと、いつか本格的に体調を崩すかもしれません」
真摯なその言葉に、私は言葉に詰まった。
……本当に心配してくれてるんだ……ポッキーばかり食べてる九条さんに食について心配されるというおかしな点は置いといて、素直にありがたいし申し訳ない……。
胸の奥が少し鳴ったのを隠すように、私は頭を下げた。
「ご、ごめんなさい九条さん。ご心配おかけして……その、最近久しぶりに体重計に乗ったら増えてたから、ダイエットしようとしたんです」
「だいえっと?」
九条さんが目を真ん丸にする。私は恥ずかしくて一つ頷いた。
「はい。だから……」
「あなたそんなもの必要あると思ってるんですか。元々大食いでもないですし、十分細いじゃないですか」
「えっ」
戸惑う私に、伊藤さんまでもが同意した。
「僕もそれは同感だけどね~。光ちゃん十分細いし。増えたっていうけど、最後に測ったのいつなの?」
「それは、ここに来る少し前で……」
「その頃って、特に一番痩せてたんじゃない?」
あっと思い出す。確かにそうだ。お母さんが亡くなって、恋人にもフラれて、どん底だった頃だ。かなり痩せてた頃だった。
その前、普通に生活してた頃は……今とそう大差ないかもしれない。
九条さんは呆れたように言う。
「あなたが体重を減らす必要はまるでありません。もししたいのなら、食事を減らすより運動量を増やすべきです」
さらに伊藤さんも続ける。
「今回ばかりは九条さんが正しいね。光ちゃんはそのままで十分綺麗で細いし、食事を減らすのはよくないと思うよ。ま、おやつのポッキーを減らすぐらいはいいかもだけど」
伊藤さんの言葉に、九条さんがぐんっと首を回した。
「これを食べなければ一体いつセロトニンが出てくると言うのですか」
「九条さん、ポッキーでセロトニンが出るんです!? 光ちゃんは他でちゃんと幸福感を味わってるので大丈夫だと思いますよ」
「ですが甘味は必要なはずです」
「九条さんとは違いますから……」
二人がやんや言い出したことで、私はプッと小さく吹き出してしまった。くだらないことで心配かけてしまった。でも二人の気持ちがとても嬉しい。
「ごめんなさい。確かに極端に食事量を減らすのはよくないですね。ダイエット、やめます。今ぐらいの体重をキープするようにします。九条さん、一本下さい」
私が言うと、どこか嬉しそうにした九条さんは袋を差し出す。一本頂いて食べる。
もうしょっちゅう食べてる味だけど、やっぱり美味しい。
伊藤さんはニコニコして言う。
「そうそう。むしろもっと太ってもいいくらいだよ。本当に食事管理をしなきゃいけないのは九条さんなんだから」
「それもそうですね……なんで九条さん太らないんですか……?」
「体質です」
和やかな事務所で、私は笑いながら残りのお菓子を頬張った。余計な心配を二人にはもう掛けない、と心に誓って。
ありがとうございました!
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本が苦手な私でも続きが気になってどんどん読んでしまうほど面白いくてただのホラーじゃなくて温かみのあるお話がとても素敵です☺️🌷
伊藤さんが好きすぎて現実にそんな人がいればなぁとおもいます😢私が光ちゃんだったら伊藤さん一筋です笑
すみれさん、九条を読んでくださりありがとうございました!
いまだに感想をいただけるなんて幸せです…!
伊藤さん人気は根強いみたいですね笑 私自身お気に入りですし、付き合うなら絶対伊藤さんやろ、と思っています😛
ポッキーの日のお約束!
知り合いに本を貸したら、引っ越しのどさくさで行方不明💧って言われて また買うか。 と思っている今日の私。
春山さん!!いつもありがとうございます…!
この日はやっぱり九条を書かないと…と思ってしまいます笑
わあ!他の方に勧めてくださりありがとうございます😭
もう一冊…よければおそばに…笑
お久しぶりのポッキー星人
本、買いましたよ!(本を読みそうな)知り合いたちに勧めています 笑
楽しみです
春山さん…!お久しぶりです!!
時間が空いてしまいましたが、読んでいただき嬉しいです。
そして、買ってくださりありがとうございます😭オススメまで…ずっと追ってくださり、感謝してもしきれません…🙇♀️