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聞こえない声
やたら犬に好かれる人間っているよね
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伊藤さんがこちらを見て言う。
「犬の霊って、あんまり聞かないよね?」
「はい、私はあまり見たことないですね。珍しいと思います」
思い返してみればそうだ、犬の霊とはかなり珍しい。首なしも珍しいし、今回は変わった霊の組み合わせだと思う。
少し離れたところにいる九条さんが口を開いた。
「動物は基本、人間のように妬み嫉みや恨みなどを持ちにくい生き物だからではないですか。恐らく霊となっている場合も、自分が死んだことに気づかずしばらく存在しているだけだと思います」
「なるほど」
「大福とやらが残っている理由は明確には分かりませんがね。菊池さんを守るために残っているのかも」
「だとしたら、素敵ですねえ……あんなちっちゃな体で番犬かあ」
私はつい笑う。伊藤さんがこちらを見上げて白い歯を見せた。
「光ちゃん動物好きなんだ?」
「はい、飼ったことはないですけど。伊藤さんも好きですか?」
「まあ、好きだねー」
(だと思った。というかそうであって欲しいと思った)
「でもほら、犬ってどんな子ももう遠慮なく飛びかかってきてめちゃくちゃ顔舐めてくるから、たまに困るよね~」
(どうしよう、私そんなに犬に求愛されたことない)
もしかして人間だけじゃなく、動物にさえも好かれるんだろうか伊藤さん……。動物すらこの無害オーラを感じるのだろうか? いや、動物だからこそ野生の本能でわかるかも!
私が驚愕の表情で伊藤さんを見ていると、彼はどうしたの、とばかりに私を見上げている。
なんとなく、ゆっくり背後を振り返ってみた。九条さんって、子供にはあまり懐かれないタイプだったけど、動物は……。
私は無言で九条さんをみたのだが、彼はふっと顔を上げた。そして私の心の声が聞こえたのかのように答えた。
「私、犬にはよく吠えられます」
「………………」
想像通りだった。
それは置いておいて、私は気を引き締める。
「ええっと、私もお手伝いします、何かできることありませんか。昨日スマホでニュースぐらいは見たんですけど……」
私の問いかけに、背後にいる九条さんが答えた。
「先ほど伊藤さんとも相談したのですが、菊池さんと電話した後私と光さんはその現場に足を伸ばしてみましょう。何か視えるかもしれないので」
「え、現場にですか? でも、首なしは菊池さんについてきてしまっているから、現場には残っていない可能性が高いと思いますが」
「体は、ですよね」
九条さんがそう言ったのを聞いて飛び上がってしまった。つまり、首の方の霊を探すの!?
「そう思うと体の方がずっといいです! 首だけの霊なんて見たくない!」
「でも首だけなら話せるかも」
「ひぇええ!」
「まあ、そんな運良く遭遇なんてしないと思いますよ。それと、夜は一度菊池さんのアパートにお邪魔しましょう。話せないかまたチャレンジしてみるのもありかと」
なかなかハードスケジュールでは……? 私はげんなりする。今回は泊まり込みじゃないって喜んでいたのがばかみたいだ。
不憫そうに私を見ながら伊藤さんがいう。
「と、いうわけだから、とりあえず光ちゃんと九条さんはゆっくりしててね。少しでも寝てて」
私は伊藤さんの親切心に、素直に頷くしかできなかった。
それからしばらく経った頃、伊藤さんが菊池さんに電話し、霊障が出始めたらへんの行動を細かく聞き出した。
菊池さんも昨日九条さんに言われていたので最近のことを一晩かけて思い出したらしく、結構細かく話してくれたそうだ。
足音が聞こえ始めたのは二週間ほど前。丁度好きな映画を見に行った後だったから明確に覚えているらしい。
その日は友人と午前中に映画を見、午後からは好きな映画の聖地巡礼としてある場所へドライブへ行ったとのこと。
楽しんで帰ってきて一息ついたところへ、あの足音が突然聞こえるようになった、と言うことだ。
「……へえ、思ったより具体的な話で安心しました。二週間も前のこと、よくおぼえてましたね菊池さん」
私はほっとして言った。てっきり、さまざまな場所をいくつも挙げられて手当たり次第訪問するのかと思っていた。でもこの話では、映画館とその聖地巡礼の場所が要になってくるのではないだろうか。
九条さんも頷いて言った。
「私ももっと情報が錯綜するかと思っていました」
「映画館か、その聖地巡礼した時に拾ったんでしょうか」
私が言うと、伊藤さんが答える。
「まあ話の流れではそうなるよねー。菊池さん意外にもインドア派だから、普段あんまり出かけないんだってさ。だから結構安易に思い出せたらしいよ」
「それで、その聖地巡礼ってどこなんですか?」
「うーんと、ここ」
目の前にあるノートパソコンをくるりと私の方に向けた伊藤さんは、画面を指さした。聖地巡礼、と聞いて思い浮かべるのは、ここ最近大ヒットしたあのアニメの爽やかなラストシーンとか、ちょっと田舎ののほほんとした場所だったり……。
そう想像しながら画面を覗き込んだ私は、顔を引き攣らせた。まるで思っても見ない場所だったからだ。
そこには暗くて不気味なトンネルが一つだけ映っていた。
「……え」
「菊池さんねえ~……ホラー映画見るのが趣味なんだって」
伊藤さんが憐れんだ目で見てきた。
私はふらりと眩暈を覚えた。どう見ても普通のトンネルではないオーラと出立ち。ていうか、ここを聖地呼ばわりするのもどうなの……!?
「犬の霊って、あんまり聞かないよね?」
「はい、私はあまり見たことないですね。珍しいと思います」
思い返してみればそうだ、犬の霊とはかなり珍しい。首なしも珍しいし、今回は変わった霊の組み合わせだと思う。
少し離れたところにいる九条さんが口を開いた。
「動物は基本、人間のように妬み嫉みや恨みなどを持ちにくい生き物だからではないですか。恐らく霊となっている場合も、自分が死んだことに気づかずしばらく存在しているだけだと思います」
「なるほど」
「大福とやらが残っている理由は明確には分かりませんがね。菊池さんを守るために残っているのかも」
「だとしたら、素敵ですねえ……あんなちっちゃな体で番犬かあ」
私はつい笑う。伊藤さんがこちらを見上げて白い歯を見せた。
「光ちゃん動物好きなんだ?」
「はい、飼ったことはないですけど。伊藤さんも好きですか?」
「まあ、好きだねー」
(だと思った。というかそうであって欲しいと思った)
「でもほら、犬ってどんな子ももう遠慮なく飛びかかってきてめちゃくちゃ顔舐めてくるから、たまに困るよね~」
(どうしよう、私そんなに犬に求愛されたことない)
もしかして人間だけじゃなく、動物にさえも好かれるんだろうか伊藤さん……。動物すらこの無害オーラを感じるのだろうか? いや、動物だからこそ野生の本能でわかるかも!
私が驚愕の表情で伊藤さんを見ていると、彼はどうしたの、とばかりに私を見上げている。
なんとなく、ゆっくり背後を振り返ってみた。九条さんって、子供にはあまり懐かれないタイプだったけど、動物は……。
私は無言で九条さんをみたのだが、彼はふっと顔を上げた。そして私の心の声が聞こえたのかのように答えた。
「私、犬にはよく吠えられます」
「………………」
想像通りだった。
それは置いておいて、私は気を引き締める。
「ええっと、私もお手伝いします、何かできることありませんか。昨日スマホでニュースぐらいは見たんですけど……」
私の問いかけに、背後にいる九条さんが答えた。
「先ほど伊藤さんとも相談したのですが、菊池さんと電話した後私と光さんはその現場に足を伸ばしてみましょう。何か視えるかもしれないので」
「え、現場にですか? でも、首なしは菊池さんについてきてしまっているから、現場には残っていない可能性が高いと思いますが」
「体は、ですよね」
九条さんがそう言ったのを聞いて飛び上がってしまった。つまり、首の方の霊を探すの!?
「そう思うと体の方がずっといいです! 首だけの霊なんて見たくない!」
「でも首だけなら話せるかも」
「ひぇええ!」
「まあ、そんな運良く遭遇なんてしないと思いますよ。それと、夜は一度菊池さんのアパートにお邪魔しましょう。話せないかまたチャレンジしてみるのもありかと」
なかなかハードスケジュールでは……? 私はげんなりする。今回は泊まり込みじゃないって喜んでいたのがばかみたいだ。
不憫そうに私を見ながら伊藤さんがいう。
「と、いうわけだから、とりあえず光ちゃんと九条さんはゆっくりしててね。少しでも寝てて」
私は伊藤さんの親切心に、素直に頷くしかできなかった。
それからしばらく経った頃、伊藤さんが菊池さんに電話し、霊障が出始めたらへんの行動を細かく聞き出した。
菊池さんも昨日九条さんに言われていたので最近のことを一晩かけて思い出したらしく、結構細かく話してくれたそうだ。
足音が聞こえ始めたのは二週間ほど前。丁度好きな映画を見に行った後だったから明確に覚えているらしい。
その日は友人と午前中に映画を見、午後からは好きな映画の聖地巡礼としてある場所へドライブへ行ったとのこと。
楽しんで帰ってきて一息ついたところへ、あの足音が突然聞こえるようになった、と言うことだ。
「……へえ、思ったより具体的な話で安心しました。二週間も前のこと、よくおぼえてましたね菊池さん」
私はほっとして言った。てっきり、さまざまな場所をいくつも挙げられて手当たり次第訪問するのかと思っていた。でもこの話では、映画館とその聖地巡礼の場所が要になってくるのではないだろうか。
九条さんも頷いて言った。
「私ももっと情報が錯綜するかと思っていました」
「映画館か、その聖地巡礼した時に拾ったんでしょうか」
私が言うと、伊藤さんが答える。
「まあ話の流れではそうなるよねー。菊池さん意外にもインドア派だから、普段あんまり出かけないんだってさ。だから結構安易に思い出せたらしいよ」
「それで、その聖地巡礼ってどこなんですか?」
「うーんと、ここ」
目の前にあるノートパソコンをくるりと私の方に向けた伊藤さんは、画面を指さした。聖地巡礼、と聞いて思い浮かべるのは、ここ最近大ヒットしたあのアニメの爽やかなラストシーンとか、ちょっと田舎ののほほんとした場所だったり……。
そう想像しながら画面を覗き込んだ私は、顔を引き攣らせた。まるで思っても見ない場所だったからだ。
そこには暗くて不気味なトンネルが一つだけ映っていた。
「……え」
「菊池さんねえ~……ホラー映画見るのが趣味なんだって」
伊藤さんが憐れんだ目で見てきた。
私はふらりと眩暈を覚えた。どう見ても普通のトンネルではないオーラと出立ち。ていうか、ここを聖地呼ばわりするのもどうなの……!?
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