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聞こえない声
優しい仲間
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両手で顔を覆ったまま小声を出す。
「警察に行った方がいいですよね……」
「行っておいた方がいいのは間違いないです。しかし、殺すなどと直接脅された訳でもありませんし、刃物も突きつけられたわけではない。勿論刃物を持ってること自体問題なのですが、もしかしたら警察も積極的には動けないかもしれませんね」
「そんな……」
確かに殺すってナイフを振り回されたわけじゃないけど。刃物もしまってあったのがたまたま落ちただけだけど。こんなのすごい脅しなのに。
「マスクしてて帽子もかぶってて、顔もよく見えなかったんですよね。どうしよう」
腕をさすりながら悩む。伊藤さんが素早くノートパソコンを持ってきて何か操作し出した。その隣で九条さんがどこか力強い言葉を発した。
「予定変更です」
「……へ?」
「Y.Sについての捜索はしばし休止します。まずは全く着手してませんでしたが菊池さんのストーカーについて調べ上げます」
「はーいもうやってます」
かちゃかちゃと伊藤さんはキーボードを叩きながら答える。私は慌てて言う。
「で、でもそうしたら首無しは」
「菊池さんにも説明すれば納得するでしょう。少なくとも首無しは菊池さんに危害を及ぼうとしたことは一度もありませんし、そう緊急を要することではありません。それより生身の人間であるストーカーをなんとかしましょう。
光さんはこれからしばらく、一人で行動は禁止です。」
「え、ええ!?」
「当然だよ光ちゃん。今度は刺されるかもしれないよ」
「は、はい……」
「どこかへ出かけるのも帰宅も必ず誰かの付き添いを。決して一人にはならないことです」
「はーいそうと決まれば、僕ちょっと菊池さんに電話してみますね。仕事中かなあ、ストーカーについて色々聞かないと。今回は特に全力で行きます」
あれよあれよと決まってしまう。ああ、大ごとに。結局首無しについては全然進展しないのが申し訳ないが、確かにこのままストーカー女を放置と言うわけもいかない。
伊藤さんはテキパキと情報収集のため動き出し、九条さんも立ち上がった。
「まずは警察に相談に行きましょう。光さん行きますよ」
「あ、はい……!」
私も慌てて九条さんに続く。彼の後を追いながら、小声で謝った。
「すみません、なんか大ごとに」
「あなたが謝る必要はありませんよ、何も悪くないでしょう」
「……はい」
すごく怖かった時、無我夢中で九条さんに電話をかけた。何も話せない私をすぐに察して駆けつけてくれた。
彼の顔を見た途端、すごい安心したんだよなあ。
失恋したばっかりだというのに。
「九条さん」
「はい」
「私九条さんのポッキー全部半分に折るのやめますね」
「とんでもない嫌がらせをしようとしてたんですねあなた」
少しだけ笑った九条さんは、私を安心させるためか、普段より近い距離で隣を歩いて行った。
その後警察に相談し事務所に帰宅すると、早速伊藤さんが色々と調べ物をしてくれていた。
菊池さんには連絡がついたらしく、首無しについて調査が後回しになることはすぐに承知してくれたらしかった。
彼が言うにストーカーにはまるで心辺りなし。ショートカットの小柄な女性というくらいで、よくマスクをしているので顔はあまりわからないということだった。
「……んで。僕さっき光ちゃんが襲われた場所の周辺を調べてみたんです。監視カメラとかあれば犯人映ってるかもって思って」
もうお昼近くになっていた中、片手にパンを握って食べながら伊藤さんが言った。
私はあまり食欲がなく、とりあえず冷蔵庫の中にあったジュースを飲みながら伊藤さんを二度見した。
「え。そんなことまでもう調べてくださったんですか!?」
「うん、でも残念ながらねえ、監視カメラないみたいで。映ってれば少しは手がかりが掴めたのかもしれないのにねー」
悔しそうにいう伊藤さんに、私はただただ感心した。ちょっと席を外していた時間で情報収集からこんなことまで。相変わらずえげつない伊藤さん。
ポッキーを齧りながら九条さんがいう。
「あまりに手がかりが少ないですね」
「はい、それで次に攻めてみようと思ってるのが菊池さんの最寄り駅の監視カメラですね。ここ最近いつ女につけられてたか菊池さんから思い出せる日を聞いたので、映ってないかなあと」
(探偵なの?)
「でも映ってたとしても外見の特徴が割れるくらいでえすからねー。というわけで、同時に実行もしちゃおうと思いまして」
「そうですか、気をつけてください」
「はい、頑張ります」
伊藤さんと九条さんの間で進む会話についていけてない私は、話を切って尋ねた。
「え、実行ってどういうことですか?」
「ああ、もう接触するんだよその女の人と。菊池さんを時々つけてるのはわかってるんだから、菊池さんのそばにいればそのうち会えるでしょ?」
「!!?」
私は口をぽかんと開けた。そしてすぐに慌てて伊藤さんにいう。
「き、危険じゃないんですか!?」
「大丈夫、接触って言っても無理したりはしないから。いざとなれば九条さん呼んだり警察呼んだりしてちゃんとするから」
「で、でも相手凶器持ってるから、伊藤さんに何かあったら」
「ありがと。でも大丈夫だよ、光ちゃんは自分の心配しておいて。絶対に一人で行動しないこと、僕か九条さんの付き添いで動くんだよ」
子供に言い聞かせるようにゆっくり諭される。私はゆっくり頷いた。なんかほんと、めちゃくちゃ大事になってる。なんだか申し訳ない……。
九条さんがポッキーを見つめながらいう。
「今回の依頼は手がかりがないことだらけです。
首なしについてはイニシャルのみ、ストーカーも犯人の目星なし。なんだかまるでゴールに近づいている感じがないですね」
「本当に……Y.Sについても調べてあげたいんですけどねえ。光ちゃんの無事確保の方がずっと重要ですからね」
「当然です」
二人が私の安全が最優先だと、サラリと言ってくれたことが嬉しかった。どこか恥ずかしい気持ちになりながら微笑む。やっぱり私、仕事仲間には最高に恵まれているんだなあ。
「警察に行った方がいいですよね……」
「行っておいた方がいいのは間違いないです。しかし、殺すなどと直接脅された訳でもありませんし、刃物も突きつけられたわけではない。勿論刃物を持ってること自体問題なのですが、もしかしたら警察も積極的には動けないかもしれませんね」
「そんな……」
確かに殺すってナイフを振り回されたわけじゃないけど。刃物もしまってあったのがたまたま落ちただけだけど。こんなのすごい脅しなのに。
「マスクしてて帽子もかぶってて、顔もよく見えなかったんですよね。どうしよう」
腕をさすりながら悩む。伊藤さんが素早くノートパソコンを持ってきて何か操作し出した。その隣で九条さんがどこか力強い言葉を発した。
「予定変更です」
「……へ?」
「Y.Sについての捜索はしばし休止します。まずは全く着手してませんでしたが菊池さんのストーカーについて調べ上げます」
「はーいもうやってます」
かちゃかちゃと伊藤さんはキーボードを叩きながら答える。私は慌てて言う。
「で、でもそうしたら首無しは」
「菊池さんにも説明すれば納得するでしょう。少なくとも首無しは菊池さんに危害を及ぼうとしたことは一度もありませんし、そう緊急を要することではありません。それより生身の人間であるストーカーをなんとかしましょう。
光さんはこれからしばらく、一人で行動は禁止です。」
「え、ええ!?」
「当然だよ光ちゃん。今度は刺されるかもしれないよ」
「は、はい……」
「どこかへ出かけるのも帰宅も必ず誰かの付き添いを。決して一人にはならないことです」
「はーいそうと決まれば、僕ちょっと菊池さんに電話してみますね。仕事中かなあ、ストーカーについて色々聞かないと。今回は特に全力で行きます」
あれよあれよと決まってしまう。ああ、大ごとに。結局首無しについては全然進展しないのが申し訳ないが、確かにこのままストーカー女を放置と言うわけもいかない。
伊藤さんはテキパキと情報収集のため動き出し、九条さんも立ち上がった。
「まずは警察に相談に行きましょう。光さん行きますよ」
「あ、はい……!」
私も慌てて九条さんに続く。彼の後を追いながら、小声で謝った。
「すみません、なんか大ごとに」
「あなたが謝る必要はありませんよ、何も悪くないでしょう」
「……はい」
すごく怖かった時、無我夢中で九条さんに電話をかけた。何も話せない私をすぐに察して駆けつけてくれた。
彼の顔を見た途端、すごい安心したんだよなあ。
失恋したばっかりだというのに。
「九条さん」
「はい」
「私九条さんのポッキー全部半分に折るのやめますね」
「とんでもない嫌がらせをしようとしてたんですねあなた」
少しだけ笑った九条さんは、私を安心させるためか、普段より近い距離で隣を歩いて行った。
その後警察に相談し事務所に帰宅すると、早速伊藤さんが色々と調べ物をしてくれていた。
菊池さんには連絡がついたらしく、首無しについて調査が後回しになることはすぐに承知してくれたらしかった。
彼が言うにストーカーにはまるで心辺りなし。ショートカットの小柄な女性というくらいで、よくマスクをしているので顔はあまりわからないということだった。
「……んで。僕さっき光ちゃんが襲われた場所の周辺を調べてみたんです。監視カメラとかあれば犯人映ってるかもって思って」
もうお昼近くになっていた中、片手にパンを握って食べながら伊藤さんが言った。
私はあまり食欲がなく、とりあえず冷蔵庫の中にあったジュースを飲みながら伊藤さんを二度見した。
「え。そんなことまでもう調べてくださったんですか!?」
「うん、でも残念ながらねえ、監視カメラないみたいで。映ってれば少しは手がかりが掴めたのかもしれないのにねー」
悔しそうにいう伊藤さんに、私はただただ感心した。ちょっと席を外していた時間で情報収集からこんなことまで。相変わらずえげつない伊藤さん。
ポッキーを齧りながら九条さんがいう。
「あまりに手がかりが少ないですね」
「はい、それで次に攻めてみようと思ってるのが菊池さんの最寄り駅の監視カメラですね。ここ最近いつ女につけられてたか菊池さんから思い出せる日を聞いたので、映ってないかなあと」
(探偵なの?)
「でも映ってたとしても外見の特徴が割れるくらいでえすからねー。というわけで、同時に実行もしちゃおうと思いまして」
「そうですか、気をつけてください」
「はい、頑張ります」
伊藤さんと九条さんの間で進む会話についていけてない私は、話を切って尋ねた。
「え、実行ってどういうことですか?」
「ああ、もう接触するんだよその女の人と。菊池さんを時々つけてるのはわかってるんだから、菊池さんのそばにいればそのうち会えるでしょ?」
「!!?」
私は口をぽかんと開けた。そしてすぐに慌てて伊藤さんにいう。
「き、危険じゃないんですか!?」
「大丈夫、接触って言っても無理したりはしないから。いざとなれば九条さん呼んだり警察呼んだりしてちゃんとするから」
「で、でも相手凶器持ってるから、伊藤さんに何かあったら」
「ありがと。でも大丈夫だよ、光ちゃんは自分の心配しておいて。絶対に一人で行動しないこと、僕か九条さんの付き添いで動くんだよ」
子供に言い聞かせるようにゆっくり諭される。私はゆっくり頷いた。なんかほんと、めちゃくちゃ大事になってる。なんだか申し訳ない……。
九条さんがポッキーを見つめながらいう。
「今回の依頼は手がかりがないことだらけです。
首なしについてはイニシャルのみ、ストーカーも犯人の目星なし。なんだかまるでゴールに近づいている感じがないですね」
「本当に……Y.Sについても調べてあげたいんですけどねえ。光ちゃんの無事確保の方がずっと重要ですからね」
「当然です」
二人が私の安全が最優先だと、サラリと言ってくれたことが嬉しかった。どこか恥ずかしい気持ちになりながら微笑む。やっぱり私、仕事仲間には最高に恵まれているんだなあ。
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