視えるのに祓えない~九条尚久の心霊調査ファイル~

橘しづき

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 ずっと聞いていた九条さんが口を開く。

「つまり明穂さんと飛鳥さんは全く無関係の二人の霊。それぞれ違う思いがあって残っているんですね」

「すみませんでした、調べが甘かったです。駄菓子屋の人の話だけ聞いて鵜呑みにしてしまったし、二人の特徴だけを聞いて事故の当事者だと思い込んでいて」

「いいえ、状況的に私たちもそう考えてしまいましたから。飛鳥さんとまことさんの年齢が近かったことや外傷があったことは、そう結論づけるには十分すぎる偶然でした。私こそまことさんですか、と一言本人に聞けば答えてくれたかもしれなかった、すみません」

 二人の反省を聞いて私も項垂れる。

「それを言うなら私は二人の姿が見えるのに、季節感が違うことに気づかなくて……すみません」

 それぞれの確認不足が重なって起こってしまった勘違い。根本的に大きな違いがあっては、解決できるものもできなくなってしまう。ようやく私たちはスタートラインに立てたといえる。

 九条さんはふうと息を吐いて頭を掻いた。

「さて、そうなれば浄霊の方向性を見直しましょう。それぞれの気持ちに応えなければ。まず明穂さんですが、望みは明確です、『まことさんに会いたい』」

 私たちは頷いた。今現在生きているという本物のまことさん、明穂さんは会いたいんだろう。死ぬ直前目の前で娘が車に轢かれたとなればそりゃ安らかに眠ることもできない。

 九条さんが伊藤さんに尋ねる。

「今現在のまことさんの所在を調べることはできそうですか」

「多分、行けると思います。今回まことさんの生死を正確に確認したのは、小学校に聞いて回ったんです。ここの駄菓子屋に通うならきっと学校も近いはずだと思って。
 当時の担任だったという先生が今教頭先生でした。話を聞くに、入院生活が長引いて元の生活に戻るのに苦労したまことちゃんのフォローを、必死にしてくれてたみたいです。今は結婚までしてるって言ってましたよ、連絡取ってるんじゃないでしょうか」

「なるほど。まことさんと連絡が取れたとして一番の問題は……どうやってこんなところまで連れてくるか、ですね」

 私たちは腕を組んで考えた。まことちゃんと会いたいなら呼んでくるしかない。だがしかし、『あなたの亡くなったお母さんが会いたがってます』なんて普通の人ならドン引きな発言、してもいいのだろうか。

 聡美が眉を顰めて話に割って入った。

「逆に明穂さんって人を連れて行くのは無理なの?」

 ううん、と私たちは唸る。九条さんが答えた。

「絶対に不可能、とは言えませんが、十三年も同じ場所にとどまっている相手を説得してそこから引き剥がすのは安易ではないかと」

「ふーん、でも普通は何の詐欺かと思っちゃうよね、そんな話されても」

「まあ同感です。これは伊藤さんに賭けましょう、こういった交渉が得意なのは彼だけです」

 みんなの視線が伊藤さんに集まる。責任重大、とばかりに彼はため息をついた。でも確かに、コミュニケーションお化けの伊藤さんに頼むのが一番だと思う。私や九条さんじゃ怪しまれて終わるだけだ。

「もちろんやってみますけどね、さすがに怪しまれるだろうとは思いますよ。なんとか接触して話してみます」

 そう言ってパソコンを閉じた伊藤さんは早速立ち上がろうとする。そこに声を掛けたのは、まさかの信也だった。

「あの、俺も行っていいですか」

「え」

 みんなが驚きの顔で信也をみる。彼は自信なさげに、でもしっかりした声で言う。

「実際住んでるのは俺なんだし、依頼したのも俺だし。ここに本当に住んでるっていう身分証見せるだけでも、多少信頼できる要素になればいいかなと思って」



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