秋のない年

あきぽ

文字の大きさ
1 / 1

秋のない年

しおりを挟む
吐いた息が丁度白くなる頃僕は振られた、理由は簡単だ「もう好きじゃない」
いつもは気の利いた事を言えているつもりの僕だが、言葉が出てこなかった
沈黙が続く、この沈黙の長さが2人の思い出の多さを物語っていた
何故、何で、今?、いつから?色んな思いが、言葉が頭の中でごっちゃになった
不思議と涙は出てこない、まだ実感がない
1番初めに来た思いはこれからどうすればいいのだろうという不安
彼女が言う「嫌いになった訳じゃない」そんな事はどうでもいい
全く別れとはいつも自分本位な物だ、勝手に来て、勝手去っていく
彼女は泣いている、自分で振っておいて泣いている、狡い
彼女の家まで荷物を取りに行き合鍵を返すが、握った手に自然と力が入る、そんな自分が情けない、男なら男らしくしろ、そう自分に言い聞かせる
家に着くと荷物がまとめてあった、徐ろに煙草に火をつけるが、少しでも長く居座ろうとする自分にまた情けなくなる、すると彼女はお香を焚き始める、薄く立ち上る煙が、天井付近でふっと消える
まるで出会ってから今日までの2人のように、最後は精一杯の作り笑顔で部屋を後にする、その足で友人宅へ駆け込むように行った、それまでの経緯を話すと真剣な眼差しで頷いてくれる友人、なんだか心がスッと軽くなる
朝まで他愛もない話をして気を紛らわし
家路に着く、車に乗ると助手席のついたままのシートヒーター彼女の温もりがまだそこにあるようだった
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

愛のバランス

凛子
恋愛
愛情は注ぎっぱなしだと無くなっちゃうんだよ。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

処理中です...