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第二章
第61話 王子と聖女の婚約パーティー
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私は今、フェリクス王子の新しい婚約者のお披露目の為の夜会にヴィルドレット様と共に参列している。
フェリクス王子の新しい婚約者といえば今巷を賑わせている聖女アリス。
そして、元婚約者はあの悲劇の侯爵令嬢シンシア様……。
その非道な顛末を初めて聞いた時、シンシア様とは面識の無い赤の他人の私でさえひどく憤りを感じた。そして今やシンシア様は私にとって親戚に当たる御方。面識無しには変わりないけれど、他人事では無くなり、前にも増して怒りが込み上げてくる。
フェリクス王子と聖女アリス……一体どんなクソ野郎共なのだろうか。
下級貴族だった私は、王家主催の夜会に出るのは今回が初めてだ。 というか、そもそも私が知らないだけで、もしかしたら下級貴族でも参加できる王家主催はあったのかもしれない。なにせ私はヴィルドレット様が出る夜会にしか興味が無かったからその辺の社交事情には昔から疎い。
ともあれ、まさか私がヴィルドレット様の隣りで、しかも妻としてこんな社交の場に参加できる日がくるなんて夢にも思わなかった。
「わぁ~。 それにしても煌びやかですねぇ」
王家主催の夜会ともなれば、もちろんそこは豪華絢爛な会場だ。
出入口から一直線に赤い絨毯が敷かれ、白を基調とした内装の中に金色の細工が所々に施されている。
パーティー形式は立食で、豪華な料理が赤い絨毯の両脇に沿って並んでいる。
参列者達も一目で高位の貴族だとわかるような気品を漂わせ、さすがは王家主催と感嘆の念を持ちつつも私は辺りをキョロキョロと見回す。
「この場にいるほとんどは王家と直接関わりのある、いわば上級貴族ばかりだ。 そんな顔で落ち着き無くしてると、連中に舐められるぞ?」
ヴィルドレット様が笑顔混じりの困ったような表情で私に言う。
「そんな事言われましてもぉ~……」
ほんの数日前まで貧乏貴族だった私に急に高位貴族らしい佇まいを求められても困る。
心はまだまだ貧乏貴族の私が見回す中で一番気になるはやはり料理だ。
飛びつきたい衝動をなんとか抑え、並ぶ料理を視線で辿っていると、
――ぷりん、発見!!
掻き立てられた食欲はぷりんに集中――そして、爆発。
私はヴィルドレット様の傍から離れ、ふらふらと吸い寄せられるようにぷりんのもとへ歩み寄る……
「おい! バカ!まだ主役も登場していないのに料理に飛びつくな!乾杯まで待て」
ぷりんへ手を伸ばそうとしたら、着ているドレスの背中ところをやや強めに引っ張られた。
「ぐぬぬ……」
クソ野郎共め……早く出て来て、さっさと乾杯しろ!!と、そんな事を思っていると、
「「「――――!!」」」
参列者達の視線が同じ方向を向いた。
フェリクス王子の新しい婚約者といえば今巷を賑わせている聖女アリス。
そして、元婚約者はあの悲劇の侯爵令嬢シンシア様……。
その非道な顛末を初めて聞いた時、シンシア様とは面識の無い赤の他人の私でさえひどく憤りを感じた。そして今やシンシア様は私にとって親戚に当たる御方。面識無しには変わりないけれど、他人事では無くなり、前にも増して怒りが込み上げてくる。
フェリクス王子と聖女アリス……一体どんなクソ野郎共なのだろうか。
下級貴族だった私は、王家主催の夜会に出るのは今回が初めてだ。 というか、そもそも私が知らないだけで、もしかしたら下級貴族でも参加できる王家主催はあったのかもしれない。なにせ私はヴィルドレット様が出る夜会にしか興味が無かったからその辺の社交事情には昔から疎い。
ともあれ、まさか私がヴィルドレット様の隣りで、しかも妻としてこんな社交の場に参加できる日がくるなんて夢にも思わなかった。
「わぁ~。 それにしても煌びやかですねぇ」
王家主催の夜会ともなれば、もちろんそこは豪華絢爛な会場だ。
出入口から一直線に赤い絨毯が敷かれ、白を基調とした内装の中に金色の細工が所々に施されている。
パーティー形式は立食で、豪華な料理が赤い絨毯の両脇に沿って並んでいる。
参列者達も一目で高位の貴族だとわかるような気品を漂わせ、さすがは王家主催と感嘆の念を持ちつつも私は辺りをキョロキョロと見回す。
「この場にいるほとんどは王家と直接関わりのある、いわば上級貴族ばかりだ。 そんな顔で落ち着き無くしてると、連中に舐められるぞ?」
ヴィルドレット様が笑顔混じりの困ったような表情で私に言う。
「そんな事言われましてもぉ~……」
ほんの数日前まで貧乏貴族だった私に急に高位貴族らしい佇まいを求められても困る。
心はまだまだ貧乏貴族の私が見回す中で一番気になるはやはり料理だ。
飛びつきたい衝動をなんとか抑え、並ぶ料理を視線で辿っていると、
――ぷりん、発見!!
掻き立てられた食欲はぷりんに集中――そして、爆発。
私はヴィルドレット様の傍から離れ、ふらふらと吸い寄せられるようにぷりんのもとへ歩み寄る……
「おい! バカ!まだ主役も登場していないのに料理に飛びつくな!乾杯まで待て」
ぷりんへ手を伸ばそうとしたら、着ているドレスの背中ところをやや強めに引っ張られた。
「ぐぬぬ……」
クソ野郎共め……早く出て来て、さっさと乾杯しろ!!と、そんな事を思っていると、
「「「――――!!」」」
参列者達の視線が同じ方向を向いた。
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