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第二章

第67話 デートプラン

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 うん。 結局、一睡も出来なかった。

『今度ヴィルドレット様が休みの日に何処かへ2人で出掛けませんか?』

 そんな誘いをハンナから受け、今日は2人で領内の繁華街へ出掛ける事になっている。

 何と言うか、屋敷外で2人きりという事に、ものすごく緊張を覚えるが、それにしても……

「――へっくしょんっ!! ゔぅ~。さっきからくしゃみが止まらん」

 ティッシュで鼻をかみ、それを丸めて2メートル程離れた所にあるゴミ箱へ、ポイっと――

「よし!!」

 どうでもいい小さな達成感に小さくガッツポーズを決めると、ソファに腰掛け、目を閉じる。

「さて、と……」

 そして、頭の中で今日のハンナとのデートプランを巡らせる。

「……ダメだ。 やっぱり、全く分からない」

 何事にも計画は必須だ。 『街へ出掛ける』と、一言に言ってもそれで、どうする?
 一体何処へ連れて行けばいい? どのように導けば彼女は喜んでくれるだろうか?

 それを昨晩からずーっと考えているが、名案には至らず朝を迎えてしまった。 
 魔獣討伐の作戦案は幾らでも容易に思いつくのだが、それがデートプランとなると自慢の発案力も全く歯が立たない。

 そもそも、俺はまだハンナの事をよく知らない。まずはターゲットの事を知らなければ立つ案も立たない。
 そう考えに至った俺は部屋を出た。

 向かった先は、ハンナの専属侍女であるリズのもと。

「お嬢様が喜ぶ事ですか?」

「あぁ。 今日、ハンナと商店街の方まで出掛ける事になっていてだな……」

 リズはニヤっとハンナみたいな悪戯な笑みを浮かべる。

「デートですかぁ?」

「ま、まぁ、そんなところだ」

「それならば、お嬢様は食べる事が好きですので、昼食は街のレストランに行かれると良いでしょう。お嬢様はエドワード領の商店街へまだ行かれた事が無いと仰っておりましたので、お嬢様にとっても目新しくて良いと思いますよ?」

 確かに初顔合わせの時にも食べる事が好きだと言っていた事を思い出す。それと、この前の夜会でのハンナの食べっぷりも。
 確かにと、リズの提案に素直に納得する。

「そうか、わかった。ではハンナの好物については分かるか?」

 リズは自信あり気に人差し指を立てて言った。

「えぇ。 お嬢様の好物は無論、ぷりんです!」

 ……ハンナの好物はぷりんなのか。それは初耳だな。
 そういえば最近、ぷりん専門店が商店街に出来たと近衛騎士団の俺の部下エドウィンが言っていた。

 美味しいと評判で、恋人と一緒に行った時はすごく喜んでくれたとか。

 となると、レストランで食事した後にぷりん専門店の流れか……

 ぷりん専門店とレストランとでは距離的にも近いし俺としても都合が良い。
 何せ、平静を保ちつつ自然な流れでぷりん専門店へ入店したいからな。

「よし。 分かった。ありがとう」

 展望が見えて来たところで、リズのもとを後にして、部屋へと戻り、自らの支度を済ませる。

 俺にとっての初デート。ハンナは今日一日を楽しでくれるだろうか?

 そんな期待と不安を胸に、あとはハンナの淑女教育が終わるのを待つだけだ。
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