学生時代

Me-ya

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5.恋と、嘘と、現実と

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慌てて首を左右に振った僕を見て、治夫はクスリと笑う。

「俺はどっちでもいいんだけどな」

うわ~っ!うわ~っ!聞こえない!何にも聞こえないっ!!

僕は耳を手で押さえ、治夫の声が聞こえないようにする。

「な~に耳を塞いで聞こえないようにしてんだよ」

わ~っ!わ~っ!聞こえないっ!!ヤるとかヤられるとか聞こえないっ!!上とか下とか聞こえなかいっ!!

何にも聞こえないっ!!

必死で耳を塞いでいる僕の手を治夫は外そうとして、僕は外されまいとして二人ともに縺れ合い、倒れてしまう。

それを見たらしいクラスの女子達が「キャー♡」なんて黄色い悲鳴を上げている声が聞こえる。

何が「キャー♡」だ!!

そんな面白がってないで、見ているんなら誰か助けろよ!!

クラスの男子達も呆れたように僕達を見ているだけだ。

だからっ!!

見てないで、誰か助けろって!!

その時、昼休み終了のチャイムが鳴った。

…助かった~。

チャイムに救われた~。

チャイムが鳴った事で治夫は僕から離れ、僕達を見ていたクラスの皆もそれぞれ自分の席に着き始めた。

僕も耳を押さえていた手を放して立ち上がる。

気が弛んでしまっていた。

そこを治夫に狙われた。

チュッ♡

……………………………………………………えっ………?

………なんという事だ……治夫のヤツ、どさくさに紛れて僕の頬にキスをしやがった…。

慌てて周りを見回す。

幸い、クラスの皆には見られていないみたいだ。

治夫は僕にウインクをすると素早くクラスを出ていった。

治夫を叩く隙も、睨む間もなかった。

なんという素早さ。

オマケに、ウインクが綺麗に決まっていた事がムカつく。

…僕はウインクをすると両目を瞑ってしまうのだ…。

…なんか一気に脱力してしまい、ノロノロと椅子に座る。

僕が椅子に座ったちょうどその時、教師が扉を開けて教室に入ってきた。

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