学生時代

Me-ya

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6.瞳の中、君に

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「隼人、食堂に行くの?一緒に行こう」

「………治夫」

俺の声に振り向いた隼人は、俺を見て複雑な表情をする。

何ていうのか…笑っているのに、泣きそうな…嬉しいのか、哀しいのか分からない…そんな顔。

どうしてそんな顔をするのか、聞きたいのに聞けない。

何だか、聞いてはいけないような気がして…。

そんな顔をさせているのはもしかして俺…?

俺を見た隼人の口が開かれた。

その時。

「治夫」

俺の名を呼ぶ声がした。

「一緒にお昼、食べよう」

振り返ると、寧音がニコニコ笑顔で立っている。

その姿を見て、俺は心の中で溜め息を吐く。

怪我が治り、学校に復学する前日、お昼は一緒に食べようねと嬉しそうに話す寧音に、昼は隼人と一緒に食べるからと言ってあったのに。

それなのに寧音は毎日、昼休みに俺を誘いに来る。

「…あ、悪い。昼は隼人と一緒に学食に行くから」

何回も言った言葉を、俺はまた繰り返す。

「…え~…」

上目使いで俺を見て、唇を尖らせる寧音。

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