学生時代

Me-ya

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6.瞳の中、君に

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「隼人!大丈夫か?」

「…何が?」

階段の途中で、振り向いて答えた隼人は、不思議そうな顔をして俺を見上げた。

「…いや…隼人のクラスに行ったら、隼人は松山と一緒に出ていったと聞いたからさ…」

―昨日。

手を繋いだまま、一緒に帰った。

そして、隼人の家の前に着くと、そのまま別れた。

その間、一言も喋らなかったが…別に喋らなくてもよかった。

そんな気持ちになったのは、初めてで。

そして今日―。

隼人と松山が揉めているらしいと話を聞いて、即座に隼人を探しに出たが…。

探しだした隼人は何も起こってないような、平気そうな顔をしている。

「…大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

そう言って笑った隼人は、何かを吹っ切ったような顔をしていて。

「…本当に?」

「うん…本当に、もう大丈夫だから」

「…そうか」

隼人の穏やかな顔を見て、俺は安心した。

それから黙って、二人、一緒に階段を下りる。

隼人は何か考え事をしているのか…上の空で階段を下りている。

…危ないな。

そう思った俺が、隼人に注意を促そうと口を開いた時。

視界の端に、黒い影が横切った。

考える間もなく、体が動いた。

「…隼人!危ないっ!!」

俺が隼人の体を抱き込むと同時に、ドンとした衝撃が襲い…俺と隼人は階段を転がり落ちた。

転がり落ちる間、俺は必死で隼人の頭を抱え込む。

足や腕、背中などが階段に当たるが…痛いなど感じる暇もなく…俺は隼人を守る事だけに必死だった。
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