学生時代

Me-ya

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7.いつか、君の声が

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-そして、結局。

誰もいない…というか基本、生徒は立ち入り禁止の場所-屋上へ。

目の前の寧音は腕組みをして、勝ち誇ったような顔で僕を見詰めている。

「治夫もやっと目が覚めたみたいね…隼人にはもう会いたくないんですって」

「嘘だ」

「嘘じゃないわよ、その証拠に治夫が退院した時に治夫から連絡あった?なかったでしょう?」

寧音のその言葉に、僕は言い返す事ができず言葉に詰まる。

「オマケに今朝、治夫は隼人を迎えに行かなかったでしょう?…それが答えよ」

事実を言われて言葉に詰まり、何も言えないでいる僕に寧音は畳みかけるように話を続ける。

「分かったでしょう?…もう、治夫は正気に戻ったんだからこれ以上、構わないで」

勝ち誇ったような寧音の顔。

「もう、治夫に近付かないで」

-まるで僕の方から治夫に近付いたような口振り。

(…寧音って…こんな女性だったっけ………?)

…以前の寧音とは別人のような…その姿。

-恋が人を変えるのか…それとも元々、そうだったのか…ただ、僕が見抜けなかっただけなのか…。

彼女の姿を見ただけで胸が高鳴っていた日々が嘘みたいだ。

-だいたい…。

「…僕に会いたくないと治夫が本当に思っているのなら、治夫は直接、僕に言うはずだ」

「……………え」

僕の言葉に、寧音は不意を突かれたというような顔をした。

-その顔を見て、僕は確信する。

(治夫が僕の前に姿を見せない理由は分からないけど)寧音の言っている言葉は出鱈目だと。

「治夫は…そんな重大な事を僕に伝えるのに他人に伝言を頼むような、そんな卑怯な真似はしないはずだから…言うのなら直接、僕に会いに来るはずだから…寧音の言葉は信じない」

僕がそう言いきった直後。

ギリリ………ッ。

寧音が悔しそうに奥歯をかみしめて僕を睨みつけた。

-今まで見た寧音の表情の中で、その顔が1番、恐かった………。
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