雨のナイフ

Me-ya

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今度は引いてみる。

……あれ?

動かない。

もしかしてと思い、左右に動かしてみたが、開かない。

どうやっても、部屋のドアが開かない。

ドアの取っ手を掴み叩いていたら、開かなかったドアがいきなり開いて速水が入ってきた。

「…何、やってんだ?そんな芋虫みたいな格好して…ま、いいや。ベッドに座れ。薬を塗ってやるから」

シーツにくるまった俺を見て、呆れたように速水は言った。

「…あ…俺…俺の服は…?」

「だから、言ったろ。服なんかないって。ほら、座れ」

速水は俺のくるまっているシーツを掴み、ベッドまで引きずった。

「…な…ないって…それって…」

「お前は今日からこの部屋で暮らすんだから。服なんて必要ないだろ」

ベッドに座った俺の額に薬を塗りながら平然と言った速水に、俺は驚いた。

「…え?…ここで暮らすって…えっ?」
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