改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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161 慣れないなら慣れさせたらいいじゃない

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※誤植を訂正 2月9日 7:00
  

 う~~~む……。ケーンは、腕組みしながら考えた。コンテストに出品する、至高かつ究極のメニュー。

 ケーンの…いや、夜の女王の顔色をうかがうリゾット王は、コンテストの審査員を、王族・貴族・一般庶民の幅広い階層から募ると決めた。
 それというのも、ケーンがポーション卸の関係で、リゾットの有力貴族をつぶした事実があったからだ。

 その際、恐怖の宙船という、夜の女王からの無言の圧力があった。

 あの宙船の火力は、ドラゴンのブレスどころではない。二つの王宮が一瞬で灰燼に帰した歴史的事実は、為政者たちの貴重な教訓として、魂レベルにまで刻み込まれている。

 参考書(メシテロ系チート小説)によれば、マヨネーズ、みそ、しょうゆ、米などがスタンダード。カレーも気になるが、あの見た目的にどうかと思う。

 だけど、幅広い階層に、それら和食系の食べなれない食材が、受け入れられるものだろうか?

 日本人が書いた小説だから、和テイストが基本となるのはわかる。そして、現代では「和食ブーム」が、地球で一般的になっていることも事実のようだ。

 だが、発酵食品や生魚を食する慣習が、欧米人に受け入れられるまで、かなりの時間がかかったらしい。

 ミソとクソ、字づらだけではなく……。まあ、慣れたらうまいんだけどね!

 う~~~む……。

 そうだ! 慣れないなら、慣れさせたらいいじゃない!

 ケーンの具体的な方針は固まった。幸いなことに、日本のほとんどの食材は、地球からお取り寄せしなくても、ケンイチとミレーユの努力によって、夜空城で一般化している。


 夜空城厨房。夜の女王を始め、彼女の眷属は本来食事を必要としない。もちろん、魂気をかわしたケンイチと彼の嫁たちも。  

ところが、ケンイチが夜空城に来てから、食事に付き合い始め、食を楽しむ慣習が定着した。
なにせみんな暇だけはたっぷりある。そこで、夜空城食糧庫には、ありとあらゆる食材が蓄えられている。

「ケーン様、何をお作りになられているのでしょう?」
 夜空城総シェフを務めるキャサリンが聞いた。ケーンは寸胴鍋に、オークの骨やウハウハ鳥の骨、野菜くずをぶち込んで煮込んでいる。

「もちろんラーメンスープ!
ミソとしょう油のラーメンを、ライラックで売り出す」
 ケーンは満面の笑みで答える。

「ラーメンで商売をなさりたいと?」
 キャサリンが不思議そうな顔で聞く。お金なんていくらでもあるのに……。

「まあ、そうなんだけどね。
本当の目的は、ミソとしょう油の味に、慣れさせることだよ」

「ほほ~~~!
料理コンテストの秘策ですか!
なるほど、さすがケーン様です!
味見の方はお任せください!」
 魔法の舌を持つと言われるキャサリン。ケーンに頼もしい味方がついた。


 豚骨・鳥ガラベースの原型はできた。日本のラーメン激戦区でも、十分行列をつくれるほどのコクと深み。

「このスープ、おいしいですね!
だけど……」
 キャサリンの舌は妥協を知らない。数口飲むだけなら最高レベルだろうが、少しくどさを感じたのだ。

「俺もそう思う。
そこで!」
 ケーンは、別の寸胴鍋で取ったスープを加える。昆布とカツオ節に酷似したものを使った。いわゆる和風だしの基本だ。

「うん!
ずっとさっぱりして、より複雑なうまみが!
いいですね~~~!」
 魔法の舌が絶賛。

「ミソとしょう油だねを溶かして……。
どうだ!」
 ケーンは二つのどんぶりに、ラーメンスープを作った。

 キャサリンが味見をしたところ。

「ケーン様、これ、絶対売れます!」
 キャサリンの太鼓判が、ドカンと押された。

 ケーンはさらに試行を重ねる。麺はもちろんだが、トッピングも重要。
 ケーンは、高級食材を使うつもりはない。一杯銅貨五枚(五百円程度)を見込んでいるので、採算を割るような食材では意味がない。
 モヤシ、ネギ、メンマは、夜空城野菜工場産を使用するしかないが、オーク肉のチャーシューを作るつもりでいる。
 以前書いたが、オークは筋肉質であり、固くて食べられたものではない。

 ところが……。

「これ、本当にオーク肉なんですか?
柔らかくてジューシー!」
 キャサリンが驚く。

「無菌スライムの溶解液を、聖水で五百倍希釈。
その中で一晩寝かせて、臭み消しのハーブ、和風だしにしょう油、みりん、日本酒を加えて煮る。
オーブンでちょっぴり焦げ目をつけた」

「ミソでもしょう油でも合いますよ!
脱帽です!」
 魔法の舌の、二個目の太鼓判が、どかんと押された。


 ライラック冒険者ギルド。ギルド長室。

ケーンがラーメン広報のため、まず目を付けたのが、ギルドのお食事処だった。

 中級以上の冒険者は、「宵越しの金は持たない」タイプが結構多い。したがって、夜の街への広報役として格好の標的だ。
それに、当然冒険心も旺盛。見慣れない食べ物でも、いれ食い的に食いついてくるだろう。

 ず、ず、ずずず……。

 ごくごく……。

「うまい!」

「おいしいです!」

 試食したギルド長と、最古参受付嬢が絶賛。ギルド長はオーク骨しょう油味、受付嬢はミソ味。

「トッピングの肉、本当にオークなのですか?」
 ギルド長は、身を乗り出して聞く。オークの肉がギルドに持ち込まれても二束三文。
 それが活用できたら、貧乏冒険者も、多少うるおう。

「ほろほろでジューシー。
口の中でとろけてしまう。
どうやってあの固い肉を?」
 受付嬢が不思議そうに聞く。

「製造法、秘匿する気はないけど、今のところは企業秘密で。
コンテストが終わったら公開します」

 スライムの溶解液で柔らかくする。そんなこと聞いたら、きっとドン引き。
オークチャーシューが、問答無用で一般化されるまで黙っているのが吉。

「よろしいでしょう。
ギルド側、全面協力します!
ところで、ポーションの入荷量、もう少し……」
 ギルド長は、なかなかのタヌキジジイだった。

「わかりました。全部倍ということで」
 ポーションを倍卸しても全然問題なし。ケーンは交渉に応じた。
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