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第一話
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「女の子って気持ちよさそうじゃね?」
「は?」
いきなりそんなことを言うのは海斗。
デスクを挟んで俺の向かいに座っていて、最近かけたゆるふわパーマをいじりながら男性雑誌をペラリとめくっている。
「いや、俺だって気持ちいいよ? けど、なんていうか、男ってイッたらスッキリ~って感じじゃん、けど女の子ってしばらくヒクヒクしてて、長く浸ってるっていうか」
片肘つくと、俺に同意を求めるような顔をした。
ここは大学の自習室。
俺はラップトップの前で卒論制作と向き合っている。あまりに海斗の言っていることが現実とかけ離れすぎていて、俺が顔をあげるとその愛くるしい瞳が俺を見ていた。
海斗は飛び抜けて美人だし、そもそも存在が現世とかけ離れているんだっけ。
大学入ってから仲良くなってもう4年。
こいつのことは掴めてない。
ふわふわの綿菓子みたいなやつだ。
俺はずれた黒縁メガネを指先で押し上げるようにかけ直すと、無表情に放った。
「へぇ、大した自慢だな」
「自慢?」
その可愛らしい顔が不思議そうに顔を傾ける。
その仕草が、たくさんの女の子を惑わしてきた。
こんな顔でお願いされたら正座で待機だろう。
「海斗が女の子をオーガズムに達するところまで持っていってるってことだろ?」
「オー……?」
「男の力量が大きく比例する」
「ふうん、俺、テクニシャンなのかぁ」
頬杖をついてあっけらかんと笑う海斗。
女の子よりかわいい顔をして、
したくなったら適当にいい感じな女の子をナンパする。
コトが終われば関係も終わりで、
連絡先すら教えない。
過去にストーカー被害に遭って後腐れない関係がいいんだと。
なのに、女の子をちゃんとイかせている。
自分本位のセックスをしてないってことだろ、
どんだけ良い男なんだ。
それはストーカーに遭うのも合点がいく。
「俺も経験してみたい」
「は?」
「気持ちいいことは経験したいじゃん」
「女に生まれ変わる以外無理だな」
そうじゃなきゃ、男のアレを受け入れるってことだろ?
「それか相手に開発してもらうかだな」
「おもちゃでやってみたことは、ある」
おいおい……、どこまで研究熱心なんだ。
性欲に従順なところは悪くないけど、
俺は冷や汗が出てきた。
しかし、次の言葉に耳を疑った。
「薫、俺としてみない?」
可愛らしい顔で安易なことを発する海斗に俺は固まった。なにを血迷ったことを言っているんだと窘めなくては。
俺は再びずれてしまった黒縁メガネを直すと海斗に向き直る。
しかし海斗はさらに驚くことを聞いてきた。
「薫、男と付き合ってるって噂を聞いたんだけど本当?」
「……」
「違うのか、残念」
…………。
…………。
………………違わない。
なぜなら、俺はいわゆるバイセクだ。
しかし、これは俺が必死に隠していることだ。
どこから漏れた?誰から聞いたんだ?
俺は男と遊ぶときは慎重に相手を選んできた。社会にカムアウトしたくないという人間に限定して遊んでる、秘密が漏れることのない慎重な相手としか関係を持たないことでこれまでバレなかった。
そして、そういう男はだいたい無垢で、そういうかわいい男と寝るのが好きなだけなんだけど。それはいいか。
……しかし、なんということだ。
海斗が残念がっている。
俺がノンケで残念がっているではないか。
いきなり俺がバイセクであることが幸運である世界線に移動した。
「薫ならカッコイイし、優しくしてくれそうだし、ちょっと変態っぽいから気持ちよくしてくれそうだなって思ったんだけど。また、ほかの人とヤるよ」
おいおい。
今日はどれだけ俺を驚かせれば気が済むんだ。
「実はマッチングアプリで会ったんだけど、なんていうの、その人も挿れてほしかったみたいで」
あぁ……なるほど、ネコだったわけだ。
海斗の貞操はまだ守られているんだな。
しかし、海斗の興味本位にそのまま突き進むこの性格がどうにも危なっかしい。
女の子に夢中で、ただただエロいことが大好きな単純明快なザ・大学生のままでいてほしかったのに。
ふぅ……
小さく息をついて落ち着かせる。
このままではいつかタチと出会ってしまう。
そうしたらこんな愛らしい海斗を必ず抱き倒すに決まっている。嫌がる海斗を無理やりする男かもしれない。涙に濡れて痛がる海斗、そんなの、俺が許さない。
どうする、薫。
バイセクだと打ち明けて、
4年友達関係を保った海斗に手を出すか。
それとも友情を取るか。
そもそも持ちかけたのは海斗だ。
俺の噂を聞いてこんなことを話し始めたんだろう?
「俺が男ともやるやつだったら、どうなんだ?」
「もしそうなら俺にもして?ってお願いしたい」
なんて可愛いお願いなんだよ……
今ソファに居たら間違いなくクッションをボスボス叩いてぶん投げてたぞ。
……冷静にならなくては。
「それは男とセックスするってことだぞ?分かってんの?」
「……うん」
頬を赤らめて頷く海斗に、俺はデスクに身を乗り出しふわふわな金髪に指を差し込み、やんわりと掴む
「今夜なら、相手してやるよ」
「薫……」
「その気になったら来い」
俺は荷物をカバンに詰めて自習室を出た。
「は?」
いきなりそんなことを言うのは海斗。
デスクを挟んで俺の向かいに座っていて、最近かけたゆるふわパーマをいじりながら男性雑誌をペラリとめくっている。
「いや、俺だって気持ちいいよ? けど、なんていうか、男ってイッたらスッキリ~って感じじゃん、けど女の子ってしばらくヒクヒクしてて、長く浸ってるっていうか」
片肘つくと、俺に同意を求めるような顔をした。
ここは大学の自習室。
俺はラップトップの前で卒論制作と向き合っている。あまりに海斗の言っていることが現実とかけ離れすぎていて、俺が顔をあげるとその愛くるしい瞳が俺を見ていた。
海斗は飛び抜けて美人だし、そもそも存在が現世とかけ離れているんだっけ。
大学入ってから仲良くなってもう4年。
こいつのことは掴めてない。
ふわふわの綿菓子みたいなやつだ。
俺はずれた黒縁メガネを指先で押し上げるようにかけ直すと、無表情に放った。
「へぇ、大した自慢だな」
「自慢?」
その可愛らしい顔が不思議そうに顔を傾ける。
その仕草が、たくさんの女の子を惑わしてきた。
こんな顔でお願いされたら正座で待機だろう。
「海斗が女の子をオーガズムに達するところまで持っていってるってことだろ?」
「オー……?」
「男の力量が大きく比例する」
「ふうん、俺、テクニシャンなのかぁ」
頬杖をついてあっけらかんと笑う海斗。
女の子よりかわいい顔をして、
したくなったら適当にいい感じな女の子をナンパする。
コトが終われば関係も終わりで、
連絡先すら教えない。
過去にストーカー被害に遭って後腐れない関係がいいんだと。
なのに、女の子をちゃんとイかせている。
自分本位のセックスをしてないってことだろ、
どんだけ良い男なんだ。
それはストーカーに遭うのも合点がいく。
「俺も経験してみたい」
「は?」
「気持ちいいことは経験したいじゃん」
「女に生まれ変わる以外無理だな」
そうじゃなきゃ、男のアレを受け入れるってことだろ?
「それか相手に開発してもらうかだな」
「おもちゃでやってみたことは、ある」
おいおい……、どこまで研究熱心なんだ。
性欲に従順なところは悪くないけど、
俺は冷や汗が出てきた。
しかし、次の言葉に耳を疑った。
「薫、俺としてみない?」
可愛らしい顔で安易なことを発する海斗に俺は固まった。なにを血迷ったことを言っているんだと窘めなくては。
俺は再びずれてしまった黒縁メガネを直すと海斗に向き直る。
しかし海斗はさらに驚くことを聞いてきた。
「薫、男と付き合ってるって噂を聞いたんだけど本当?」
「……」
「違うのか、残念」
…………。
…………。
………………違わない。
なぜなら、俺はいわゆるバイセクだ。
しかし、これは俺が必死に隠していることだ。
どこから漏れた?誰から聞いたんだ?
俺は男と遊ぶときは慎重に相手を選んできた。社会にカムアウトしたくないという人間に限定して遊んでる、秘密が漏れることのない慎重な相手としか関係を持たないことでこれまでバレなかった。
そして、そういう男はだいたい無垢で、そういうかわいい男と寝るのが好きなだけなんだけど。それはいいか。
……しかし、なんということだ。
海斗が残念がっている。
俺がノンケで残念がっているではないか。
いきなり俺がバイセクであることが幸運である世界線に移動した。
「薫ならカッコイイし、優しくしてくれそうだし、ちょっと変態っぽいから気持ちよくしてくれそうだなって思ったんだけど。また、ほかの人とヤるよ」
おいおい。
今日はどれだけ俺を驚かせれば気が済むんだ。
「実はマッチングアプリで会ったんだけど、なんていうの、その人も挿れてほしかったみたいで」
あぁ……なるほど、ネコだったわけだ。
海斗の貞操はまだ守られているんだな。
しかし、海斗の興味本位にそのまま突き進むこの性格がどうにも危なっかしい。
女の子に夢中で、ただただエロいことが大好きな単純明快なザ・大学生のままでいてほしかったのに。
ふぅ……
小さく息をついて落ち着かせる。
このままではいつかタチと出会ってしまう。
そうしたらこんな愛らしい海斗を必ず抱き倒すに決まっている。嫌がる海斗を無理やりする男かもしれない。涙に濡れて痛がる海斗、そんなの、俺が許さない。
どうする、薫。
バイセクだと打ち明けて、
4年友達関係を保った海斗に手を出すか。
それとも友情を取るか。
そもそも持ちかけたのは海斗だ。
俺の噂を聞いてこんなことを話し始めたんだろう?
「俺が男ともやるやつだったら、どうなんだ?」
「もしそうなら俺にもして?ってお願いしたい」
なんて可愛いお願いなんだよ……
今ソファに居たら間違いなくクッションをボスボス叩いてぶん投げてたぞ。
……冷静にならなくては。
「それは男とセックスするってことだぞ?分かってんの?」
「……うん」
頬を赤らめて頷く海斗に、俺はデスクに身を乗り出しふわふわな金髪に指を差し込み、やんわりと掴む
「今夜なら、相手してやるよ」
「薫……」
「その気になったら来い」
俺は荷物をカバンに詰めて自習室を出た。
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