18 / 18
平癒
おまけ
しおりを挟む
「う……ん、おも……」
太い腕が乗っている。有馬の腕だ。土曜の夜に僕の家に有馬がカレーを持ってやってきて、そのまま泊まっていった。ソファで散々キスしまくって、ベッドに移ってから有馬に抱きしめられたらそのまま寝落ちしていた。だって気持良すぎたんだ、六個も年下の男に抱き枕にされて。
兄貴の代わりでもいいなんて言ってたけれど、似ているようで正反対の兄弟。どうやっても似てないし、代わりになんて思ってないし、有馬は有馬だろう。
うつ伏せに片腕は僕を保持したまんま寝入っている。
「なんでこんなに下睫毛長い?」
「さとしさん……?」
「はよ、よく寝てたね。二日酔いしてない?」
「飲んでたの智さんだけッスよ」
俺はシラフッす、とスッキリした顔で起き上がった。あまりの寝起きの良いすっきり顔に僕は慌てて身なりを確認した。
「まさか昨日ヤッ……」
「……ってはないです、絶対」
寝てませんでしたけど、みたいな顔を寝起きで出来る人なんだと感心しつつ声も昼間のような声で、僕はあっけらかんとしてしまった。
「薬飲まないで熟睡したの久しぶりなんで、頭痛がないだけです」
キリッとした有馬。
「スッキリなお目覚めなんだ?」
「……はい」と真面目に答える有馬がさっきまで僕に抱き着いて寝ていた男と同一人物だとはお燃えなくて、そのギャップに笑みが溢れた。
──やっば、かわいい。
「智さん」
「んー? 腹減った? 飯にすっか。その前にトイレ──……」
その時ベッドから抜け出そうとする僕の手が掴まれた。
「俺はもう、智さんへの気持ち隠さないんで」
朝からそんな熱い視線を寄越されてドキリとする。見ればツンと寝癖が立っていた。僕はそれを指で感触を確かめるように撫でると有馬に抱き寄せられた。
「あぁ、受け止めるよ。どんとこい」
「智さん、……あの」
「なぁに」
「俺、誰とも付き合ったことないって言いましたよね」
「あぁ……そうだった、かも」
「俺の初めては全部智さんがいいです」
「はぁ!?」
「俺の全部、貰ってください」
「お前……っ、朝から何言って──」
「デートしてください」
「ちょっと照れるからさぁ……。………………おん?」
「飯食いにとか、映画とか……ですかね」
「あぁ!! デートね!! はい! デートぉ!! うん! 行こう!」
「智さん、めっちゃ声でかいっす」
「はは……、とりあえずトイレ……」
有馬の腕が解放されてトイレに駆け込んだ。扉に背中を付けて「はぁーーーーっ!!」と大きなため息をつく。あの流れ的にアレだと想像してしまった自分が恥ずかしい。
「それ、春に永平寺に行ったときのお土産だよ」
黄色い小さなお守りだ。合格祈願のお守りらしいが、学生たちにお土産で買ったものだった。遅めの昼食をとったあとリビングの片隅にある書斎コーナーの棚のビスに引っ掛けてあるのを有馬が見つけてマジマジと見つめている。
「ダルマの顔をしていますね」
「うん。だるまプリンてのもあったよ、かわいいよね」
「かわいいです」
「ゼミの学生たちも喜んでたよ、特に女子から喜ばれた」
「俺にも、ください」
「これ? 有馬も欲しいの?」
「……はい。でも、これじゃなくていいです。今度また研修に行くことがあったらで」
「うん。わかったよ。有馬のために買ってくるからね」
「はい」
あまり表情には出さないでお守りをそっと戻した。
「今日、デート、どうする? 映画? カラオケとか?」
「智さんカラオケとか行くんですか? 誘ったら行ってくれますか?」
「もちろん。……あまり得意ではないけど。あ、有馬の歌声は聞きたいかも」
「俺はあんま……」
視線を泳がせ首の後ろあたりを擦っている。有馬も得意ではなさそう。それにノリノリになってる有馬を想像出来ない。僕もデートの定番みたいなのを想い浮かんだ順に羅列していっただけで、実際デートなんか僕だって久しぶりすぎてよく分からない。
「じゃあ、映画にする?何か面白そうなのあるかな」
スマホで上映スケジュールを検索していると有馬が画面を覗き込んできた。画面を見つめる有馬横顔が近い。やっぱり下まつげ長い。
どこに行こうかなんて話してる間が楽しい。行く場所なんて正直どこでもいいのかもしれない。有馬が何が好きで何が苦手なのか、答え合わせしているのが楽しいのかも。
「智さん?」
至近距離で見つめ合って、ドキンと胸が高鳴った。
贅肉のない頬にちゅっと唇を押し付けると、有馬が少し目を見開いてからふっと笑った。
太い腕が乗っている。有馬の腕だ。土曜の夜に僕の家に有馬がカレーを持ってやってきて、そのまま泊まっていった。ソファで散々キスしまくって、ベッドに移ってから有馬に抱きしめられたらそのまま寝落ちしていた。だって気持良すぎたんだ、六個も年下の男に抱き枕にされて。
兄貴の代わりでもいいなんて言ってたけれど、似ているようで正反対の兄弟。どうやっても似てないし、代わりになんて思ってないし、有馬は有馬だろう。
うつ伏せに片腕は僕を保持したまんま寝入っている。
「なんでこんなに下睫毛長い?」
「さとしさん……?」
「はよ、よく寝てたね。二日酔いしてない?」
「飲んでたの智さんだけッスよ」
俺はシラフッす、とスッキリした顔で起き上がった。あまりの寝起きの良いすっきり顔に僕は慌てて身なりを確認した。
「まさか昨日ヤッ……」
「……ってはないです、絶対」
寝てませんでしたけど、みたいな顔を寝起きで出来る人なんだと感心しつつ声も昼間のような声で、僕はあっけらかんとしてしまった。
「薬飲まないで熟睡したの久しぶりなんで、頭痛がないだけです」
キリッとした有馬。
「スッキリなお目覚めなんだ?」
「……はい」と真面目に答える有馬がさっきまで僕に抱き着いて寝ていた男と同一人物だとはお燃えなくて、そのギャップに笑みが溢れた。
──やっば、かわいい。
「智さん」
「んー? 腹減った? 飯にすっか。その前にトイレ──……」
その時ベッドから抜け出そうとする僕の手が掴まれた。
「俺はもう、智さんへの気持ち隠さないんで」
朝からそんな熱い視線を寄越されてドキリとする。見ればツンと寝癖が立っていた。僕はそれを指で感触を確かめるように撫でると有馬に抱き寄せられた。
「あぁ、受け止めるよ。どんとこい」
「智さん、……あの」
「なぁに」
「俺、誰とも付き合ったことないって言いましたよね」
「あぁ……そうだった、かも」
「俺の初めては全部智さんがいいです」
「はぁ!?」
「俺の全部、貰ってください」
「お前……っ、朝から何言って──」
「デートしてください」
「ちょっと照れるからさぁ……。………………おん?」
「飯食いにとか、映画とか……ですかね」
「あぁ!! デートね!! はい! デートぉ!! うん! 行こう!」
「智さん、めっちゃ声でかいっす」
「はは……、とりあえずトイレ……」
有馬の腕が解放されてトイレに駆け込んだ。扉に背中を付けて「はぁーーーーっ!!」と大きなため息をつく。あの流れ的にアレだと想像してしまった自分が恥ずかしい。
「それ、春に永平寺に行ったときのお土産だよ」
黄色い小さなお守りだ。合格祈願のお守りらしいが、学生たちにお土産で買ったものだった。遅めの昼食をとったあとリビングの片隅にある書斎コーナーの棚のビスに引っ掛けてあるのを有馬が見つけてマジマジと見つめている。
「ダルマの顔をしていますね」
「うん。だるまプリンてのもあったよ、かわいいよね」
「かわいいです」
「ゼミの学生たちも喜んでたよ、特に女子から喜ばれた」
「俺にも、ください」
「これ? 有馬も欲しいの?」
「……はい。でも、これじゃなくていいです。今度また研修に行くことがあったらで」
「うん。わかったよ。有馬のために買ってくるからね」
「はい」
あまり表情には出さないでお守りをそっと戻した。
「今日、デート、どうする? 映画? カラオケとか?」
「智さんカラオケとか行くんですか? 誘ったら行ってくれますか?」
「もちろん。……あまり得意ではないけど。あ、有馬の歌声は聞きたいかも」
「俺はあんま……」
視線を泳がせ首の後ろあたりを擦っている。有馬も得意ではなさそう。それにノリノリになってる有馬を想像出来ない。僕もデートの定番みたいなのを想い浮かんだ順に羅列していっただけで、実際デートなんか僕だって久しぶりすぎてよく分からない。
「じゃあ、映画にする?何か面白そうなのあるかな」
スマホで上映スケジュールを検索していると有馬が画面を覗き込んできた。画面を見つめる有馬横顔が近い。やっぱり下まつげ長い。
どこに行こうかなんて話してる間が楽しい。行く場所なんて正直どこでもいいのかもしれない。有馬が何が好きで何が苦手なのか、答え合わせしているのが楽しいのかも。
「智さん?」
至近距離で見つめ合って、ドキンと胸が高鳴った。
贅肉のない頬にちゅっと唇を押し付けると、有馬が少し目を見開いてからふっと笑った。
33
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】今をときめく大型新人の専属マネージャーになることになったわけだが!【タレント×マネージャー】
彩華
BL
俺の名前は高橋夏希。
芸能事務所で、マネージャー業を行っている。毎日忙しく働いているわけだが、ある日突然。今話題の人気タレント・吹雪の専属マネージャーを任命されてしまい……!?
という感じで、緩くタレント×マネージャーBLです
今回は健全の予定ですが、場合によってはRを完結後に別にするかもしれません。
お気軽にコメント頂けると嬉しいです。宜しくお願い致します。
■表紙お借りしました。有難うございます
【完結】前世は犬と猫! 〜二度目の恋のやり直し〜
ivy
BL
一度目の人生、俺は人間だった。
それが気がつけば——金色の毛並みを持つ犬に転生していて、隣には黒猫になった幼なじみの春人がいた。
犬猫として過ごす日々は、笑いと温もりに満ちていて、片思いをしていた春人とは満月の夜に「離れない」と約束まで交わした。
……このままずっと幸せが続くと思っていた。
——はずだったのに。
次に目を覚ましたら、俺はまた生まれ変わって人間になっていた。
春人とも会えたし、順風満帆!と思っていたら、あいつが俺のこと覚えてないことが判明。
でも構わない。
また俺のことを好きになって貰えばいいんだ。
……だけどそううまくは行かなくて……。
笑って少し切ない、すれ違いラブコメ。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
王子様と一緒。
紫紺
BL
田中明夫は作家を目指して10年、全く目が出ない男だ。
ある日、書店の前で金髪青い目の青年が突然話しかけてきた。最初は胡散臭く思っていたのだが……。
南の国の第2王子アスラン、その護衛トーゴー、田中が住むアパートの大家や住人の奨励会員などなど。
様々な人間模様と恋模様が織りなすBL多めのラブコメ開幕です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる