寡黙な剣道部の幼馴染

Gemini

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平癒

おまけ

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「う……ん、おも……」

 太い腕が乗っている。有馬の腕だ。土曜の夜に僕の家に有馬がカレーを持ってやってきて、そのまま泊まっていった。ソファで散々キスしまくって、ベッドに移ってから有馬に抱きしめられたらそのまま寝落ちしていた。だって気持良すぎたんだ、六個も年下の男に抱き枕にされて。

 兄貴の代わりでもいいなんて言ってたけれど、似ているようで正反対の兄弟。どうやっても似てないし、代わりになんて思ってないし、有馬は有馬だろう。

 うつ伏せに片腕は僕を保持したまんま寝入っている。

「なんでこんなに下睫毛長い?」
「さとしさん……?」
「はよ、よく寝てたね。二日酔いしてない?」
「飲んでたの智さんだけッスよ」

 俺はシラフッす、とスッキリした顔で起き上がった。あまりの寝起きの良いすっきり顔に僕は慌てて身なりを確認した。

「まさか昨日ヤッ……」
「……ってはないです、絶対」

 寝てませんでしたけど、みたいな顔を寝起きで出来る人なんだと感心しつつ声も昼間のような声で、僕はあっけらかんとしてしまった。

「薬飲まないで熟睡したの久しぶりなんで、頭痛がないだけです」

 キリッとした有馬。

「スッキリなお目覚めなんだ?」
「……はい」と真面目に答える有馬がさっきまで僕に抱き着いて寝ていた男と同一人物だとはお燃えなくて、そのギャップに笑みが溢れた。

 ──やっば、かわいい。

「智さん」
「んー? 腹減った? 飯にすっか。その前にトイレ──……」

 その時ベッドから抜け出そうとする僕の手が掴まれた。

「俺はもう、智さんへの気持ち隠さないんで」

 朝からそんな熱い視線を寄越されてドキリとする。見ればツンと寝癖が立っていた。僕はそれを指で感触を確かめるように撫でると有馬に抱き寄せられた。

「あぁ、受け止めるよ。どんとこい」
「智さん、……あの」
「なぁに」
「俺、誰とも付き合ったことないって言いましたよね」
「あぁ……そうだった、かも」
「俺の初めては全部智さんがいいです」
「はぁ!?」
「俺の全部、貰ってください」
「お前……っ、朝から何言って──」
「デートしてください」
「ちょっと照れるからさぁ……。………………おん?」
「飯食いにとか、映画とか……ですかね」
「あぁ!! デートね!! はい! デートぉ!! うん!  行こう!」
「智さん、めっちゃ声でかいっす」
「はは……、とりあえずトイレ……」

 有馬の腕が解放されてトイレに駆け込んだ。扉に背中を付けて「はぁーーーーっ!!」と大きなため息をつく。あの流れ的にアレだと想像してしまった自分が恥ずかしい。






「それ、春に永平寺に行ったときのお土産だよ」

 黄色い小さなお守りだ。合格祈願のお守りらしいが、学生たちにお土産で買ったものだった。遅めの昼食をとったあとリビングの片隅にある書斎コーナーの棚のビスに引っ掛けてあるのを有馬が見つけてマジマジと見つめている。

「ダルマの顔をしていますね」
「うん。だるまプリンてのもあったよ、かわいいよね」
「かわいいです」
「ゼミの学生たちも喜んでたよ、特に女子から喜ばれた」
「俺にも、ください」
「これ? 有馬も欲しいの?」
「……はい。でも、これじゃなくていいです。今度また研修に行くことがあったらで」
「うん。わかったよ。有馬のために買ってくるからね」
「はい」

 あまり表情には出さないでお守りをそっと戻した。

「今日、デート、どうする? 映画? カラオケとか?」
「智さんカラオケとか行くんですか? 誘ったら行ってくれますか?」
「もちろん。……あまり得意ではないけど。あ、有馬の歌声は聞きたいかも」
「俺はあんま……」

 視線を泳がせ首の後ろあたりを擦っている。有馬も得意ではなさそう。それにノリノリになってる有馬を想像出来ない。僕もデートの定番みたいなのを想い浮かんだ順に羅列していっただけで、実際デートなんか僕だって久しぶりすぎてよく分からない。

「じゃあ、映画にする?何か面白そうなのあるかな」

 スマホで上映スケジュールを検索していると有馬が画面を覗き込んできた。画面を見つめる有馬横顔が近い。やっぱり下まつげ長い。

 どこに行こうかなんて話してる間が楽しい。行く場所なんて正直どこでもいいのかもしれない。有馬が何が好きで何が苦手なのか、答え合わせしているのが楽しいのかも。

「智さん?」

 至近距離で見つめ合って、ドキンと胸が高鳴った。

 贅肉のない頬にちゅっと唇を押し付けると、有馬が少し目を見開いてからふっと笑った。




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