喋る玉を拾った僕の不思議な物語~拾った玉は何でも願いを叶えてくれる不思議な玉でした~

夜夢

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第10話 残りの依頼を片付けよう

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 翌朝、ライルは残る依頼を片付けるために依頼者の所へと向かった。まずは壊れた農具をこれまた修繕し、次に野菜の収穫を手伝いに行った。これは村でもやっていた事なので大して苦にもならなかった。

「ありがとうなぁ~。年をとると収穫も重労働でなぁ~」
「結構腰にきますもんね。ではお身体に気をつけて!」
「ああ、待ってくれ。ほら、手伝ってくれた礼だ。家のトマトはみずみずしくて甘いのが売りでなぁ。そのまま食べてごらんよ」
「え、あ……はいっ! ありがとうございますっ!」

 ライルはトマトをもらい食べながら最後の依頼先に向かう。

「うわ、美味いなぁ~。僕の家のやつより美味いや。これはちょっと悔しいな~」

 そうして向かった先は水路だ。この先には生活排水がたまる池がある。そこに水を送るための水路に泥や様々な物がつもりにつもり、流れが悪くなっていた。

「う~ん……、どうしようかな。……よし、泥だけ【無限収納】に入れてみよう!」 

 普通はスコップなどで泥を掻き出さなければならないが、ライルは石のブロックが積まれた水路の底に溜まっている泥だけを無限収納に入れた。

「よし、次は枯れ葉やゴミを入れて行こう!」

 そうして働く事半日、今水路には綺麗な水が流れていた。

「これで十件達成~! ランクアップだ!」

 全ての依頼を片付けたライルは冒険者ギルドへと向かった。

「あれ? 何かあったのかな? 騒がしいような……」

 冒険者ギルドに入ると先日解体でモメていた冒険者達が何やら受付で叫んでいた。

「何で依頼失敗になるんだよっ!」
「ですから、達成期限を過ぎていると何度も説明しているじゃないですか」
「たった一日過ぎただけじゃないか! それだってゴブリンの群れが出たからで!」
「失敗は失敗です。ゴブリンの群れが出たのは理由にはなりません。しかも群れって言っても記録を見ると五体だけじゃないですか。虚偽の報告は謹んでください。ライセンス停止処分対象になりますよ?」

 三人組はキレていた。

「もういいっ! こんなギルド誰が使うかっ! 行こう、他の町にもギルドはある」
「「はい」」

 三人組のリーダーは肩をいからせながらギルドを出ていった。

「戻りました」
「ああ、ライルくん。全部終わったの?」
「はいっ! あ、水路だけは確認してもらえますか? 後、これ完了札です」
「……確かに。水路の方は後程確認して参りますね。明日の朝またギルドに来て下さい。水路の方に問題がなければランクアップ申請いたしますので」
「はいっ!」

 ライルは報酬をもらい安宿へと戻る。するとまた何やら騒ぎが。 

「ちょっとあんた達! 宿代払えないってどう言う事よ!」
「報酬が入ったら払えたはずなんだよ! なのにギルドはたった一日期限が過ぎたからって報酬を支払わなかったんだよ!」

 宿の女将はあきれていた。

「あのねぇ……、それは当たり前の話でしょ? 約束事は守るためにあるんだよ。ウチだってお客さんと契約して部屋を一日いくらで貸し出してんだ。払えないなら出るとこ出るよ?」
「……うるせぇぇぇぇっ!」
「「「っ!?」」」 

 男が急に叫びだした。

「お前らがのうのうと暮らせているのは俺達冒険者が魔物を狩ってやってるからじゃないか!! それを何だっ! 今は払えないって言ってるだけだろっ! 何が出るとこ出るだっ! ふざけるのもいい加減にしろっ!!」
「ひっ……」

 男が剣を抜いた。 

「や、やめなって! 悪いのは代金が払えない私達なんだからっ!」
「うるっせぇぇぇぇぇっ!」
「きゃっ!?」

 男の足刀蹴りが仲間の腹に入る。

「なっ! 仲間に何して……あぐっ!?」

 もう一人の女の腹には回し蹴りが入る。

「……仲間? 何が仲間だっ! お前らが使えないから期日内に依頼を達成できなかったんじゃないかっ! お前らなんかいらねぇんだよっ!!」
「ふ……ふざけないでよっ! あんたが無茶な依頼ばっかり受けようとするからでしょっ! 私達の魔法をあてにしてね! その剣だってただの飾りじゃないっ!」

 その言葉に切れたのか、男の剣が魔法使いの女に向けられた。

「飾り? 飾りかどうか……その身体で味わってみろっ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「やめろっ!!」
「なっ!?」

 さすがにもう見ていられなくなったライルはスキル【万物創造】で剣を創り出し男の剣を受け止めた。

「何だお前っ!! 邪魔する気かっ!! ふざけんなよっどいつもこいつもよぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ふざけているのはあんただろっ!」
「あ?」

 ライルは怒っていた。

「どうして仲間に剣を向けられるんだっ! これまで一緒に戦ってきた仲間だろっ! 仲間を何だと思ってるんだっ! 仲間はあんたの駒じゃないんだぞっ!」
「う……うるせぇぇぇぇっ!! 邪魔するならお前から殺してやるっ!! 表出ろっ!」
「……いいよ。相手してあげるよ。負けたら皆に謝れっ!」
「やれるもんならやってみろよFランクがっ!」

 ライル達は場所を宿の前に移し対峙する。

「これは決闘だからな。死んでも文句なしだ、良いな?」
「あんたなんかに負けてやるもんかっ!」
「野郎……っ! その首斬り落としてやるっ!!」

 周囲には男の仲間や宿の女将、そして何事かと町の人々が集まってきた。

「やっちゃえやっちゃえ! そいつは犯罪者よっ! 兵士さんにはあたしがちゃんとあんたは悪くないって証言してあげるからねっ!」
「気を付けてっ! そいつはEランクだけどもう少しでDランクに上がるの!」
「その人の剣術スキルのレベルは2ですっ!」

 男の仲間達が情報をペラペラと喋り始めた。

(……剣術スキル2か。なら【万物創造:スキル絶対回避】)

 ライルは新しくスキルを創造した。

「いくぞオラァァァァァァァァァァッ!!」
「こいっ!!」

 二人の戦いが始まった。男は剣を振り回しながら距離を詰めてくる。まるで素人だ。

「あ、当たらねぇっ!」
「え? これで本気なの?」
「あぁぁぁぁっ!? ぜってぇ殺すっ!!」

 男は剣術に体術を混ぜながら攻撃を繰り出すが、ライルには一撃も入らない。そればかりか怒りに任せての攻撃でどんどんスタミナを減らしていっていた。そして徐々に攻撃速度も落ち、今や男は肩で息をしている。

「くそがっ! はぁっはぁっ! ちょこまかちょこまかとっ! はぁっはぁっ! 俺がFランクなんかに負けるわけねぇぇぇぇぇっ!」
「あんたは冒険者なんかじゃないっ! Fランク以下の弱虫だっ! 仲間も大切に扱えない奴に冒険者を名乗る資格なんてないんだぁぁぁぁぁっ!」
「なっ!? がぁっ!?」

 ライルの剣が男の後頭部にヒットした。そして男はそのまま気絶し、地面に倒れ込んだ。

「おぉぉぉっ! あの坊やが勝ったぞ!」
「すげぇ~! 掠りもしなかったぜ!」
「おっし、あの野郎縛っちまえ!」

 この後、男は女将と仲間に対する殺人未遂の容疑で逮捕された。

「ありがとね、坊や」
「いえ、同じ冒険者として見ていられなかったので」
「ふふっ、きっとあんたは大物になるね。長年冒険者を見てきたあたしが言うんだから間違いないよ。そうだ、今日は無料にしてあげるからさ、泊まっていきな」
「え、悪いですよそんな……」
「良いの良いの。坊やがいなかったら私もお嬢さん達も今頃どうなってたかわからないからね。ほら、あんたらも休んで行きな。あの男に思いっきり蹴られてただろ?」

 女二人が首を横に振った。

「でも……、私達お金を持ってませんし……」
「これ以上迷惑かけるわけにも……」
「ならこの坊やの仲間になれば良いじゃないか。この先女二人じゃ何かと厳しいだろう? 冒険者の先輩として坊やに色々レクチャーしてやんなよ」
「「「え!?」」」 

 女将はなにかと仕切りたがる人物なのだった。
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