夢追い人~異世界に飛ばされた残念な男は気ままに暮らす~

夜夢

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第4章 魔界ってマジかぁ

02 魔界?これが?

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    さて、皆さん。魔界と言われればどんな景色を想像するでしょうか?暗く陽の光も無い真っ暗な世界?それとも枯れ木ばかりの不毛な大地?腐った水が流れる川?秩序の無い世界?

「こ、これが魔界??嘘…だろ?まんま人間界だし…地球そっくりじゃねぇか!?」

「あら、地球と言うのは分かりませんが、この景色に見覚えが?」

    愛斗はデモニアに言った。

「見覚えもなにも…何だ此処は。お前は俺を何処に連れてきた!?懐かし過ぎて…なんか泣けてきた…。」

「ここは先代の魔王、八神 枢様が作り上げた世界です。無秩序に暴れ回る魔族を全て統制し、一から作り直した魔界なのであります。先代の魔王様は魔界を平定された後違う世界へと旅立たれました。今、魔族を纏めているのが、全魔族を託された娘の【八神 真理】様なのです。」

「やがみ…まり…?も、もしかして…!その先代魔王って!日本人かっ!?」

「さぁ…。ですが、この景色は魔王様の居た世界を模したモノであると言い伝わってあります。」

    確定だ。まんま日本、しかも秋葉原。親近感が沸くなぁ…。

「想像していた魔界と違う……。寧ろ人間界より落ち着く…。」

「気に入って頂けましたか!デモニアも嬉しいです、マナト様!」

「魔王が八神 枢と名乗ったのなら…俺は椎名 愛斗と名乗ろう。これが本来の名だ。」

「椎名…愛斗様?」

「そうだ、さ、街を案内してくれ、デモニア。」

「はいっ!こちらです!」

    愛斗はデモニアに連れられ街を回った。扱っている商品は異世界のモノだが、何故か心が満たされる。

「どうかしました?」

「いや、懐かしくて…な。それより、これからどうする?まさか此処で暮らすって訳でもないんだろ?」

    実を言うと愛斗は街が気に入っていた。ずっと居たいと思わせる位に。

「…魔王城に向かいます。そこで他の魔王候補達を退け、最後に残った者が魔王となり真理様と結婚するのです。次の魔王次第ではここも違う世界になるかもしれません…。」

    な…んだと。

「此処が無くなるかもしれないのか!?」

「はい、全ては魔王様の意思次第ですので。私も此処は気に入っているので…。お帰りなさいませ、ご主人様♪っとか可愛いですよね?」

    可愛い…それは全力で同意する。これは…全力を出してでも魔王になるしか…!

「お前さ、どっかで俺の事見てた?」

「さぁ、どうでしょう♪ふふっ、さ、魔王城に行きましょうか、愛斗様♪」

    やれやれ、はぐらかされたか。もしかしたら…転移させた奴が魔王?か、関係者?まぁ良い。俺は全力で敵を排除するのみ…守ってやるぜ、この街をよ!! 

    愛斗はやる気に満ち溢れていた。人間界でのわだかまりは何処かへ消え、ただただこの街を守ると決めた瞬間である。

    デモニアに連れられ向かった先は…。

「何故に東京都庁!!?ば、バカか!?枢とやらはバカなのか!?」

「む…先代の悪口は感化出来ませんよ?」

「ちげぇ!これは俺の世界にあった建物だ!八神 枢とやら…遠慮なく異世界に地球の文化を持ち込むなんて…。ある意味尊敬するぜ…。」

「尊敬…、なら良いです。さ、参りましょうか♪」

    デモニアに続き中に入った。デモニアは中に入り受付に質問した。

「他の候補者達は集まってますか?」

「はい、既に皆様お越しになっておられますよ。デモニア様で最後です。」

「分かりました、ありがとう。」

    デモニアは受付に挨拶し、愛斗をエレベーター前に誘導した。

「これで地下に行って下さい。愛斗様、頑張って…!」

「地下に?ん、何か知らんが分かった。」

    愛斗はエレベーターに乗り地下へと向かった。エレベーターはかなりの時間をかけ下へと向かう。チーンという機械音と共に扉がゆっくりと開かれた。愛斗はエレベーターから降り辺りを見回す。地下には既にかなりの数の魔王候補者達が集まっていた。全員が一瞬降りてきた愛斗に注目したが、再び前の方に向き直った。

    愛斗は皆に混じり前を向く。壁には巨大なモニターが1つかかっていた。愛斗がモニターを見ると突然電源が入り、映像が写し出された。

「皆さん集まった様ですね。初めまして、私は魔王軍副官の【ゼロス】と言う者です。以後お見知り置きを。」

    魔王候補者達は画面を見てざわついていた。

「さて…皆様に集まって頂いたのは他でもありません。我等魔王軍は次期魔王となる方をあなた方の中から選ばせて頂きます。あなた方は現魔王軍の中でもトップクラスに強い筈です。そう言う候補者を部下に選ばせました。性格うんぬんは別としてね…?」

「あ~?次期魔王は俺で決まりだろうが。んな有象無象なんか帰しても良いぜ!なんなら…俺が全員殺ってやるか?ひゃははははっ!」

    バカが混じっている様だな。

「ふむ…、ならばそれを実行して頂きましょうか。その部屋から出られるのは1人だけ。最後まで生き残った方がのみがエレベーターに乗り上がる事を許可します。それでは…上で待っていますよ。」

    モニターがプツンと切れた。

「オラァッ!掛かって来いや雑魚共がっ!!」

    ほぼ全員がそいつに向かい飛び掛かった。愛斗は壁際に下がり様子を伺う。

「バカだなぁ…。」

「全くです。」

「うむ、同意する。」

「あんたらは行かねぇの?」

「そう言う貴方こそ行かないのですか?」

    愛斗の両隣にはいつの間にか1人の少女と侍風の男が立っていた。

「あんな乱戦で何が分かるってんだよ。実力も出せないまま終わるのが関の山だ。ま、あんたみたいに魔法を使うのなら別だけどな。」

「何故?」

「魔力が駄々漏れだからな。それと侍、一瞬で刀を握る位置に手を置きながら殺気を放つな。」

「む。やるな…。」

「バレバレだ。」

「どうやら…私達の中から決まりそうね。」

    愛斗は思った。

「なぁ、お前さ…勝ったら先代の魔王の娘と結婚しなきゃ魔王になれないらしいんだけど…。どうすんの?」

「「は??」」

「え?なに?お前ら、知らなかったの?」

「始めて聞いたぞ!そんなの…!私は女だぞ!?」

「それを言ったら…某にも愛を誓い合った妻が…!」

「ふむ…お~い、副官さ~ん、見てるんだろ?ちっと良いか?」

    エレベーター脇にあった小さなモニターがついた。

「…何でしょう?リタイアですか?」

「いや、この2人がさ、魔王になる方法を聞いてなかったみたいで。」

「…少々お待ち下さい。」

   モニターの映像が切れた。以降音声のみでお送り致します。

「あの2人の担当は誰だ!今すぐ呼べっ!」

「確か…ゴドンとザーラムでさぁ。」

「あの2人か…。呼んでこい、1分以内だ!」

「ゴドンでさ。」

「ザーラムだ。何か?」

「何かじゃねぇ!!貴様ら、候補者にルール説明はしたのか!あぁっ!?」

「「あ。」」

「あ。じゃねぇよ、バカヤロウ。そもそも先代の娘と結婚させるって言ってんだろうが!それを何で女連れてきたんだ、あぁっ!?」

「あ。」

「だから…あ。じゃねぇぇぇっ!!まずお前がルール分かってねぇじゃねぇか!このバカが!!他にもいるんじゃねぇだろうなぁぁぁっ!?」

「……………………。」

「失礼、そちらのお二方。リタイアって事で宜しいでしょうか?」

「私は魔王になれるからって聞いたから来たのに話が違う。賠償を要求する。」

「某もだ。結婚など聞いてなかった故。しっかりと誠意を示して貰いたい。」

「くぅぅぅっ、わ、分かりました。魔王には出来ませんが、今リタイアしたら私と同じ副官の地位を!それで手を打ちませんか!?」

「魔王じゃないの?なれます詐欺じゃん。」

「確かに。魔王の地位以外には興味ござらん。」

    見かねた愛斗が副官に助け舟を出した。 

「安心しな、今代表決めッから。」

    愛斗は後方で戦っていた集団に魔法を放った。

「消え去れ、【大破壊オーバードライブ】。」

    魔王候補者1人1人の足元に魔方陣が現れ、候補者達が異変に気付いた瞬間…光にのまれ消えた。

「さて、残りはお前ら2人だな。戦う?リタイアする?今なら死なない上に副官の地位が待ってるぜ?」

「「…降参しま~す。」」

「ふむ、副官サマ。決まった様だ。扉を開けてくれ。」

「は、はいぃっ!あ、し、勝者椎名 愛斗!」

    副官は愛斗の勝利を宣言した。

「ありがとう、じゃ…行こうか、我が副官。なんつって。」

「従うわ。あんな魔法使ってケロッとしてるんだもの。勝てそうに無いわ。」

「某も…魔法耐性はほぼ無い故…。」

「あ、俺剣術もイケるからさ。後で立ち合う?」

「な、お主も刀を!?おぉ……!是非とも!」

「おぅ!」

    愛斗はにかッと笑いエレベーターに乗り込むのであった。

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