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第5章 勇者現る?
05 新しい勇者
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リリィが魔族となり勇者で無くなって数日後、人間界では新たな勇者が誕生していた。
「勇者ユーキよ。」
「はいっ!」
「勇者ユーキに命ずる。お主は世界を回り仲間を集めよ。そして、魔界に行き悪の元凶たる魔王を駆逐するのだ。頼んだぞ、勇者よ。」
「はい!元国家騎士見習いとして、民の為に身を粉にして働きます!」
「うむ、立派な心掛けだ。では旅に出よ勇者ユーキよ。良い知らせを待っておるぞ?」
「お任せ下さい、国王様!必ずや魔王を倒して参ります!」
ユーキは一礼し部屋を出た。
「あの見習いが勇者とはな…。誰か!」
「はい。」
「尾行しろ。使えないと判断したら殺れ。でないと次の勇者が現れないからな。しくじるなよ?」
「はっ。」
影は部屋から姿を消した。
「ふぅ…。これで良い。真面目すぎる勇者など不要だ。どうにも奴は使い辛い。これもあの男を駒に出来なかったせいか。残念だ。」
ユーキは城を出て街を歩いていた。
「私が勇者…か。仲間を集めろだって…。無理だよ。私みたいな心の弱い人の仲間になんて…誰もなってくれないよ。マナトさんだって…。そうだ…探して謝ろう。ガラテアのギルドで捕まったって事は、少なくとも知り合いは居る筈…。行き先も知っているかも…。うん、先ずはガラテアに行こう!勇者として働くのはマナトさんに謝ってからだ!」
ユーキはガラテアの冒険者ギルドへと向かった。
「あの、すいません。」
「はい、登録ですか?」
「いえ、人を探していて…。あの、何方かマナト・シーナと言う方をご存知無いでしょうか?」
受付の男はピクッと反応した。
「何の御用でしょうか?我々からマナト様を奪った国の騎士様?」
「びくっ!」
「我々ギルドの者は誰も国の関係者には情報は与えませんよ。誰が来ても言う事は1つ。この街から出ていけ。だけで御座います。お引き取り下さい。」
「ま、待って!私はマナトさんに謝りたいんだ!私は…マナトさんの事を信じてあげられなかった…!命まで助けて貰ったのに…!国には逆らえなかったんだ…。でも、私は勇者になった。マナトさんに会って謝らなくちゃ先に進めないんだ!お願いしますっ!何でもいいので…情報を下さいっ!!」
ユーキは受付の男に土下座しながら懇願した。
「あなたがユーキですか。マナト様が国外追放され、人間不信に陥った元凶。ならば尚更教える事は何もありません。帰りなさい。そして、2度とこの街に足を踏み入れない方が良い。うちのギルマスが戻ったら殺されますよ?」
ギルマスが戻ったら?今ギルマスは居ない?もしかして、マナトさんの居場所を知ってる?
「貴方…マナトさんの居場所を知っていますね?マナトさんは今何処にいるんですか!?」
「知った所で貴女ではどうする事も出来ませんよ。【ゲート】も使えない新米勇者ではね。これだけ言えば分かるでしょう?マナト様はもうこの世界には居ません。あなた達国の人間がマナト様を堕としたのです。我々人類の希望足り得たマナト様を、欲をかいた貴方がた国の人間が!!恥を知りなさい!」
そう言い残し、男はカウンターから消えた。
ゲートを使わなければ行けない場所……魔界?
「っ!急いで城に行かないと!グレゴール様ならゲートを使えた筈…!魔導書を探さないと…!」
ユーキは再び城へと引き返した。
「王よ、私にはまだ力が足りません!どうかグレゴール様の部屋に入る許可を!」
「今から魔法を覚えるつもりか?ふむ、外に持ち出さないと約束するなら立ち入る事を許可しよう。鍵だ、受け取れ。」
「ありがとうございます!」
それからユーキはグレゴールの私室に籠った。寝食も忘れ、ひたすらゲートの魔法を探した。膨大な量の資料の中から探すのは大変な作業だった。
「無い…違う………これも……マナトさん…マナト…さん!」
数日後、ユーキは気付いた。
「ゲートなんて魔法…そこらに放置している訳無い…。何処かに隠してある?何処に?」
ユーキは壁際に資料を纏めてどかし、床板を剥いだ。
「…本?タイトルは…ゲートについて?やった!見つけたっ!!」
ユーキは本を開いて中を見た。
《ゲートとは私達の住む世界とは違う世界へと転移する魔法である。私はどうにかして此方から魔界へ行き、魔王を倒しに行けないかと研究した。結果、テレポートと言う魔法を改良し、ゲートを作る事に成功した。しかし、問題があった。私が作った魔法は1度しか作動しない。行けば帰って来れなくなるだろう。そもそも魔界に行き無事帰れるかどうかも不明だ。なので、この本に魔法を封印する事にした。願わくば強き者が魔王を倒してくれると信じ、この本を残す。 グレゴール》
「一度きり…。人間界には帰れない?帰る気なんて無い!マナトさんに謝って…魔王を倒す!それが勇者たる私の使命!マナトさん…今…行きます!!」
突然部屋に1人の男が現れた。
「貴女は勇者失格ですね。仲間も集めず自分の欲の為に魔界へ行こう等とは。」
「誰っ!?」
「国王から使えない様なら処分を命じられていましてね。私の判断で貴女は使えないと判断致しました。よって…貴女を処分致します。」
男は両手にナイフを構えた。
「さて…ただ殺してもつまらないので…精々楽しませて貰うとしましょうか。いい声で鳴いて下さいよ?勇者様?くひっ、くひひひひっ♪」
「さ、最低…!!貴方も!王も!こんな奴等の為にマナトさんが犠牲に…!許せない…!」
「許せない?はっ、お前の力量じゃ俺には勝てんよ?」
「今は勝てません…が!」
ユーキは本に魔力を流し始めた。
「貴様っ!それを止めろっ!!」
「もう遅いです。いつか罪を償って貰います。【ゲート】!」
「くぅっ!眩し………!!」
ユーキは光に包まれ、人間界から姿を消したのであった。
「勇者ユーキよ。」
「はいっ!」
「勇者ユーキに命ずる。お主は世界を回り仲間を集めよ。そして、魔界に行き悪の元凶たる魔王を駆逐するのだ。頼んだぞ、勇者よ。」
「はい!元国家騎士見習いとして、民の為に身を粉にして働きます!」
「うむ、立派な心掛けだ。では旅に出よ勇者ユーキよ。良い知らせを待っておるぞ?」
「お任せ下さい、国王様!必ずや魔王を倒して参ります!」
ユーキは一礼し部屋を出た。
「あの見習いが勇者とはな…。誰か!」
「はい。」
「尾行しろ。使えないと判断したら殺れ。でないと次の勇者が現れないからな。しくじるなよ?」
「はっ。」
影は部屋から姿を消した。
「ふぅ…。これで良い。真面目すぎる勇者など不要だ。どうにも奴は使い辛い。これもあの男を駒に出来なかったせいか。残念だ。」
ユーキは城を出て街を歩いていた。
「私が勇者…か。仲間を集めろだって…。無理だよ。私みたいな心の弱い人の仲間になんて…誰もなってくれないよ。マナトさんだって…。そうだ…探して謝ろう。ガラテアのギルドで捕まったって事は、少なくとも知り合いは居る筈…。行き先も知っているかも…。うん、先ずはガラテアに行こう!勇者として働くのはマナトさんに謝ってからだ!」
ユーキはガラテアの冒険者ギルドへと向かった。
「あの、すいません。」
「はい、登録ですか?」
「いえ、人を探していて…。あの、何方かマナト・シーナと言う方をご存知無いでしょうか?」
受付の男はピクッと反応した。
「何の御用でしょうか?我々からマナト様を奪った国の騎士様?」
「びくっ!」
「我々ギルドの者は誰も国の関係者には情報は与えませんよ。誰が来ても言う事は1つ。この街から出ていけ。だけで御座います。お引き取り下さい。」
「ま、待って!私はマナトさんに謝りたいんだ!私は…マナトさんの事を信じてあげられなかった…!命まで助けて貰ったのに…!国には逆らえなかったんだ…。でも、私は勇者になった。マナトさんに会って謝らなくちゃ先に進めないんだ!お願いしますっ!何でもいいので…情報を下さいっ!!」
ユーキは受付の男に土下座しながら懇願した。
「あなたがユーキですか。マナト様が国外追放され、人間不信に陥った元凶。ならば尚更教える事は何もありません。帰りなさい。そして、2度とこの街に足を踏み入れない方が良い。うちのギルマスが戻ったら殺されますよ?」
ギルマスが戻ったら?今ギルマスは居ない?もしかして、マナトさんの居場所を知ってる?
「貴方…マナトさんの居場所を知っていますね?マナトさんは今何処にいるんですか!?」
「知った所で貴女ではどうする事も出来ませんよ。【ゲート】も使えない新米勇者ではね。これだけ言えば分かるでしょう?マナト様はもうこの世界には居ません。あなた達国の人間がマナト様を堕としたのです。我々人類の希望足り得たマナト様を、欲をかいた貴方がた国の人間が!!恥を知りなさい!」
そう言い残し、男はカウンターから消えた。
ゲートを使わなければ行けない場所……魔界?
「っ!急いで城に行かないと!グレゴール様ならゲートを使えた筈…!魔導書を探さないと…!」
ユーキは再び城へと引き返した。
「王よ、私にはまだ力が足りません!どうかグレゴール様の部屋に入る許可を!」
「今から魔法を覚えるつもりか?ふむ、外に持ち出さないと約束するなら立ち入る事を許可しよう。鍵だ、受け取れ。」
「ありがとうございます!」
それからユーキはグレゴールの私室に籠った。寝食も忘れ、ひたすらゲートの魔法を探した。膨大な量の資料の中から探すのは大変な作業だった。
「無い…違う………これも……マナトさん…マナト…さん!」
数日後、ユーキは気付いた。
「ゲートなんて魔法…そこらに放置している訳無い…。何処かに隠してある?何処に?」
ユーキは壁際に資料を纏めてどかし、床板を剥いだ。
「…本?タイトルは…ゲートについて?やった!見つけたっ!!」
ユーキは本を開いて中を見た。
《ゲートとは私達の住む世界とは違う世界へと転移する魔法である。私はどうにかして此方から魔界へ行き、魔王を倒しに行けないかと研究した。結果、テレポートと言う魔法を改良し、ゲートを作る事に成功した。しかし、問題があった。私が作った魔法は1度しか作動しない。行けば帰って来れなくなるだろう。そもそも魔界に行き無事帰れるかどうかも不明だ。なので、この本に魔法を封印する事にした。願わくば強き者が魔王を倒してくれると信じ、この本を残す。 グレゴール》
「一度きり…。人間界には帰れない?帰る気なんて無い!マナトさんに謝って…魔王を倒す!それが勇者たる私の使命!マナトさん…今…行きます!!」
突然部屋に1人の男が現れた。
「貴女は勇者失格ですね。仲間も集めず自分の欲の為に魔界へ行こう等とは。」
「誰っ!?」
「国王から使えない様なら処分を命じられていましてね。私の判断で貴女は使えないと判断致しました。よって…貴女を処分致します。」
男は両手にナイフを構えた。
「さて…ただ殺してもつまらないので…精々楽しませて貰うとしましょうか。いい声で鳴いて下さいよ?勇者様?くひっ、くひひひひっ♪」
「さ、最低…!!貴方も!王も!こんな奴等の為にマナトさんが犠牲に…!許せない…!」
「許せない?はっ、お前の力量じゃ俺には勝てんよ?」
「今は勝てません…が!」
ユーキは本に魔力を流し始めた。
「貴様っ!それを止めろっ!!」
「もう遅いです。いつか罪を償って貰います。【ゲート】!」
「くぅっ!眩し………!!」
ユーキは光に包まれ、人間界から姿を消したのであった。
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