夢追い人~異世界に飛ばされた残念な男は気ままに暮らす~

夜夢

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第7章 戦争?いや蹂躙だ!

08 王女オークション

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    愛斗は娘2人に王女が通っていたアカデミーの場所を聞き、王女を連れてそこに向かった。

「何をするつもりですか?」

「お前も知らない奴に買われるよりは知ってる奴に買われたいだろ?俺なりの優しさだ。」

    王女は真っ青になった。

「ま、まさか…!」

「アカデミーでお前の買い手を探そうと思ってな?値段なんかはした金で十分。さ~て、誰が買ってくれるのかなぁ?」

「や、止めろ!止めてくれっ!!頼むっ!」

「何で?彼氏に買われた方が幸せになれるだろ?それとも…嫌いな奴でも居るの?そいつが彼氏より金持ってたり?」

「ぐっ!!あ、悪魔めっ!!」

    王女は愛斗を罵るが、馬車は無情にもアカデミーへと到着した。

「ほら、降りろ。着いたぞ。」

「嫌だっ!帰るっ!城に帰るぅぅぅぅぅっ!!」

「はいはい、行きますよ~。」

    愛斗はアカデミーに乗り込んだ。

「だ、誰だ君は!?」

「グリモア国王で~す。今から大事なお知らせがありますので、生徒全員を講堂に集めて下さい。これは国王命令ね。逆らったら…。」

「た、只今っ!」

    流石国営アカデミー。尻尾を振るのが早い。愛斗は王女を引き摺りながらステージに向かった。

    暫く待つと、幕の向こうにある席に生徒達の声が響き始めた。

「さて、王女様には静かにしてて貰おうかな。【サイレント】。」

「……!?……!……………!!」

「し、失礼します!全員揃いました。」

「ありがとう。これからもここには変わらず金を出すとしよう。」

「はっ!ありがとうございます!」

「じゃ、幕を開いてくれるかな?」

「はっ!」

    ステージに掛かっていた幕が開かれた。

「あ~。忙しい中集まって頂き感謝する。俺はグリモア国王、マナト・シーナだ。今日は君達に買って欲しい人物が居る。紹介しよう。前国王の娘、【ティア・マイン】だ。」

    席から、嘘…!とかマジかよ!?とか聴こえてくる。

「一番高値をつけた奴がこいつの飼い主だ。じゃあ…オークションスター…」

「ティアーーー!!」

「……!……………!!」

    お、彼氏か?

「全財産払う!彼女を…ティアを俺に!」

「いくら?」

「い、今出せるのは金貨1000枚しか…!」

    愛斗は学生達に向かって言った。

「ふむ、じゃあ金貨1000枚からスタート!」

「なっ!」

「1200枚!」

「1500枚!!」

    どんどん値段が上がっていく。

「10000枚。」 

「なっ!?」

    肉を噛りながら、醜いオーク…いや、辛うじて人が現れた。

「…!!!……!!!……………!!」

    王女は泣きながら首を振って愛斗にすがった。流石にあのオークに売るのはなぁ…。

「一万じゃ不服ぶひ?なら二万でも三万でも払うぶひ。ぶひひひひひっ♪」

「お前っ!!ティアが僕の彼女だって知ってるんだろ!」

「ぶひひひひひっ♪それがどうしたぶひ?悔しいなら金を持ってくるぶひ。無いなら口を出すなぶひ。成績だけの貧乏人が!ぶひひひひひっ♪」

「ぐうっ!ティアをこんな豚に渡すなんてっ!!」

    愛斗は豚に聞いた。

「お前は最大でいくら彼女に出せる?」

「そうぶひねぇ~…。100万は出せるぶひ。」

「そうか。おい、そこの。」

    愛斗は王女の男に声を掛けた。

「なん…ですか?」

「金を貸してやろうか?」

「えっ?」

「……!?」

「だから、金を貸してやろうかと言っている。」

    男は悩んだ。が、ティアを渡す位ならと決心した。

「貸して…下さい!」

「ふむ、いくら必要だ?」

「確実にティアを買えるだけ!」

「ふむ…。じゃあ、300万貸してやろう。利息はトイチな。ほれ、最初の利息を引いた270万。契約書に判を押して貰おうか?」

「…!……!!」

    王女は男を止めようとしていた。

「大丈夫…!必ず君を救うから…!これでいいかな?」

    男は契約書にサインをし、血判を押した。

「お前、ちゃんと内容を読んだか?」

「何?」

「はぁ…。バカか。いいからちゃんと読めよ。あ、破ろうとしても無駄だからな?」

    男は契約書を良く読んだ。

1、支払いは10日ごとに最低30万。支払えない場合は王女をこじつけ主に抱かせる。

「なっ!?」

2、最初に支払えない場合は借金が330万になり、10日後の支払いは33万となる。

「なん…だと!?」

3、支払いが10回滞った場合は王女を貸付主に返す事とする。なお、借金は継続し、支払わなければならない。

「そ、そんな…!!」

4、ただし、一生貸付主に従い、貸付主の為に働くと誓うならば10日ごとの給料を30万とし、それを支払いに充てる。これは借金が無くなった後も死ぬまで継続する。

5、契約の反古は命を以て償う事とする。

「貴方の下で働けば…良いのですか?そしたらティアには手を出さず、支払いも無しに?」

「理解が早くて助かる。さて、どうするかな?その場合はアカデミーを辞めて貰う事になるが。」

    男はティアを見て笑った。

「私、【グラン・ハード】は生涯マナト国王に忠誠を誓い、この剣を捧げます。」

「認める。契約は成立だ。【サイレント】解除。」

    愛斗は王女に掛けていた魔法を解除した。

「このっ!鬼っ!悪魔っ!!」

「止めるんだティア!!」

「だって…!」

「違うんだよ、マナト様はティアが思っている程悪人ではない。」

「え?」

「僕がティアの傍に居られる様にしてくれたんだ。暫くはタダ働きになるけど。」

    愛斗はグランに言った。

「違うぞ?」

「え?」

「良く読め。給料は30万、それは利息分にしかならない。そのままだと一生借金は無くならない。無くしたいなら手柄を挙げてみせろって事だ。そしたら俺はお前らの邪魔はしないし、好きなだけイチャイチャすればいい。」 

「は、はい!な、ティア?マナト様は良い人なんだよ!君がアイツに買われるのを防ぎ、僕にチャンスをくれたんだ!国王の下で国の為に働く…これは僕の夢でもあったんだ!」

    王女は愛斗を見て言った。

「そこまで…考えていたの?」

「まぁな。好きなんだろう?奴が。」

「え、ええ。」

「グランが善い奴で良かったな。これは絆を確かめる試練でもあった。ま、グランは読まないで契約しちまったがな。それでも、最後には俺に従う道を選んだ。大事にしてやれ。ほら、帰るぞ?グランも来い。」

「「は、はいっ!」」

    愛斗は2人を連れ、ステージから降りようとした。

「待つぶひぃっ!!」

「なんだよ。折角綺麗に纏めたのにまだ何か用か?」

「500万!これだけ出すぶひっ!だからティアを僕に売るぶひぃっ!」

「はぁ?もうグランに売ったからティアが欲しかったらグランに言えば?」

「グラン!500万ぶひ!ティアを渡すぶひっ!」

「バカを言うな!例えいくら積まれ様がティアは売らん!!」

「こ、こうなったら…纏めて皆死ぬぶひぃっ!!」

    豚は呪文の詠唱を始めた。

「お前、国家反逆罪な。【ストーナ】。」

「ぶ、ぶひぃぃぃぃぃっ…………。」

    豚は石になった。

「せ、石化魔法!?」

「しかも…無詠唱で…?凄い…!」

    グランとティアは驚いていた。

「あ、一年もしたら解けるからどっか捨てといて。先生?」

「か、畏まりましたぁぁぁっ!!」

    教師は浮遊魔法を使い、豚を講堂から運び出していった。

「最後に!ここに居るお前達に告ぐ!俺は能力があれば身分は問わない!国の為に働きたい奴は必死に学び、己を鍛えろ!そしたら、俺が幸せな未来を用意してやる。誰にも遠慮するな、力を磨け!以上だ。」

「「「「「お、おぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」  

    今まで身分を傘に着て偉ぶっていた学生は顔を青くし、力があっても国の役職に着けない身分が低い学生は歓声を上げた。

「貴方って…実は凄い人?」

「はぁ?何言ってんだ。身分とか馬鹿らしいだろ。俺は向上心がある奴が好きなんだよ。お前も彼氏の為に働けよ?」

「わ、分かってるわ!グラン、これからはずっと一緒に居られるねっ!」

「あぁ、ティア!!」

    こうして、愛斗は新たな部下を手に入れたのであった。
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